DX事例

【富士通Japan株式会社】DXの架け橋となって地域を救え!地域移住型DX変革プログラムの挑戦

日本DX大賞は、日本のDX推進を加速するために、事例を発掘し共有するためのコンテストです。自治体や民間企業などが取り組んだDX推進プロジェクトを表彰し、それぞれの部門で大賞を決定します。

2022年6月24日に行われた「官民連携部門」より、富士通Japanによる各自治体に対する地域DX人材派遣の取り組みについて、実施の背景や成果をご紹介します。

富士通Japan株式会社の概要

■法人名:富士通Japan株式会社
■事業内容:自治体、医療・教育機関、および民需分野のソリューション・SI、パッケージの開発から運用までの一貫したサービス提供。AIやクラウドサービス、ローカル5Gなどを活用したDXビジネスの推進。
■設立:2020年10月1日
■公式Webサイト:https://www.fujitsu.com/jp/fjj/

日本は「課題先進国」である

私たちの暮らす日本は「課題先進国」とも言われ、人口減少や少子高齢化といった世界でも類を見ない課題に直面しております。働き方やデジタル化の遅れといった課題もあります。

私たちは、日本に特化し、日本のために何ができるかを考え、日本を強くするため、2021年4月に本格始動した会社です。日本の隅々に幸せを届けるために地域の内側から課題を解決する取り組みを紹介します。

昨今日本では自治体DXに向け様々な施策が実施されています。例えば「骨太の方針2020」では国・地方を通じたデジタル基盤の統一標準化を早急に推進する方針が示されておりますし、「デジタルガバメント実行計画」では自治体のオンライン化の推進などが示されております。また「自治体DX推進計画」ではすべての地域がデジタル化によるメリットを享受できるよう推進すると示されております。

総務省がDXを進めるにあたっての課題に関する市町村を対象に実施したアンケート結果では、一番の課題が「人材が見つけられない」でした。

こういった状況から内閣官房では、地方創生人材支援制度といった市町村の人材派遣を支援する取り組みを実施しておりますし、総務省でも地域活性化企業人という取り組みで自治体が民間企業の社員を受け入れることを促進しています。

そのため、民間企業からの地域DX人材派遣が自治体のデジタル化の一つの解決策であると
考え、当社は地方創生人材支援制度に登録、地域DX人材派遣を通じた地域の課題解決に乗り出しました。

地域DX人材派遣の取り組み

当社の取り組みである地域DX人材派遣について説明します。

自治体はデジタル化を推進する人材に来て欲しいというニーズがあり、当社側には地域課題をDX推進で解決するにあたり、現場の課題を直接感じる機会が欲しいというニーズがあります。

双方のニーズにマッチングした方針を最初に合意し、円滑に進めるため内閣官房の制度や
総務省の制度なども活用します。合意を受けて当社社員へ全社公募を実施します。選考基準としてはDXのスキルセット・マインドセットであるプロジェクトマネジメントスキル、新規事業企画力、現場突破力などに加え、地域への適応能力など総合的に考え選定します。

選考された地域DX人材には、派遣前教育を行います。デジタル庁の動向を含めた国の最新動向や、自治体の予算組みサイクルなど自治体業務の基礎知識、スマートシティやスーパーシティなどDX事例を当社の各専門の担当者から詳しく派遣前に教育を行います。

DX人材は地域へ派遣後、職員として働く傍ら、住民と触れ合いながら生活をします。
住民・職員そしてDX企業の三者三様のニーズを、DX人材がマッチングを行い、地域課題の早期解決を目指します。例えば、住民の課題やニーズを住民の立場で吸い上げ、職員として事業化し、必要であればDX企業と協力して地域課題を解決していきます。

当社は、地域 DX人材が汲み上げた現地の課題を解決できるようバックアップ、業種業態にとらわれず、多様な観点からオンラインと現地でサポートいたします。例えば「学校が少ないのでオンライン授業が必要」「病院が少ない地域で遠隔医療が必要」「キャッシュレスを促進したい」といったニーズにも迅速にバックアップができます。 

日本各地に派遣されている地域DX人材の課題や、その解決手段の検討・共有を目的として
横断的な情報共有の場を設けました。他地域のDX人材との広がりを作ることで、地域DX人材のモチベーションが向上しますし、地域の課題解決に向けて複数の地域 DX人材で解決策の検討ができます。加えて先行地域の課題共有により、自地域での早期解決につながる効果もあります。そうした横断的な課題共有の場も作り、地域DXの人材同士のつながりを深める 活動もしています。

北海道神恵内村での成果

北海道神恵内村での成果です。

神恵内村は北海道西側に位置する人口800人程度、北海道で2番目に人口が少ない村です。
神恵内村の地域課題解決のため、現地で奮闘するDX人材がいます。

現地ではデジタル現況調査のため全ての家に訪問を行い、スマートフォン所有率、インターネットの使用状況などの基礎情報から、住民の情報源や家族・友人との連絡手段も明らかにし、住民にとって何が課題なのかを現場で調査しました。

ワーケーションを活用して当社社員が現地に行き、地域を肌で感じました。机上に現れない村の良さ・課題を発見できると考えたためです。そしてワーケーション期間中に発見したことをワークショップで当社社員が自分ごととして村の課題を整理しました。加えて当社の
ワークショップノウハウを生かし、自治体職員向けにワークショップを開催、職員が付帯する10年後の自治体の未来像を考えました。村の職員が村のいいところ・課題についてブレインストーミングを 行い、共通項をグループ化し、神恵内村の将来について役場職員視点で考えました。

下図は10年後の神恵内村の未来像です。現地の全戸訪問やアンケート、ワーケーションでの成果、職員向けのワークショップなどを総合して、このように神恵内村を俯瞰で見てどんな要素が必要かをビジュアル化しました。

「コミュニティ」では地域の身近な出来事を高齢者にも速やかに伝えることや、村民同士で見守る仕組みが大事、といった結論になりました。

「教育」では「村に戻ってくる教育」と「村から羽ばたく教育」の実現が大事であるという結論になりました。

これら様々な調査の結果、村民が憩いの場としていた温泉の閉鎖や、コロナによりコミュニケーション不足など「コミュニティ」に関する課題がアンケートで浮き彫りとなりました。

さらに、子供の学べる場所が少ない、高校が無いなど、「教育」に関する課題はアンケートで多く挙げられており、村長も「子は宝」といったことを挙げられていたことから、教育も重要な課題です。

このことから「コミュニティ」と「教育」を最優先課題とし、現在デジタル田園都市国家構想推進交付金にてプロジェクトを推進中です。 

取り組みが動き出したことにより神恵内村ではDX推進体制を整備する方向へと舵を切ろうとしています。

2022年3月に神恵内村でのコミュニティ再生計画「デジタルコミュニティ実証実験計画書」を私たちで策定しました。内容はデジタル端末を住民の方々に配布しコミュニケーションを促進する取り組みです。端末から村の住民に対して様々な情報が共有されます。例えば漁業者が余った魚を直接住民に配布するなどが可能です。 コミュニケーションが活性化されるだけでなくフードロス削減にも貢献できます。

また「デジタル見回り」も実現させます。今まで家まで訪問していた民生委員さんの負担軽減にもなり、何よりも村民にとって相談回数が増えたり、コミュニケーション時間が増えたりといったメリットが付帯されるだけでなく、村民の安心・安全につながります

これらの活動により神恵内村でのコミュニケーション活性化、ひいては コミュニティ全体が活性化することを目標に推進していく予定です。

また神恵内村でのもう一つの課題「教育」に関する取り組みもあります。神恵内村の大学進学率は34%と低い割合であり、子供の学習時間が他の地域と比べて少ないことも分かりました。また未来についても考えることが少ないという課題が浮き彫りになったため。神恵内村にすでに配布されているタブレットを使ったデジタルを使った教育や、アナログで自分のキャリアについて考える授業など、デジタルとアナログのハイブリッド教育機会を増やす取り組みを実施しています。

今後の展望

現在すでに9人の地域 DX人材が派遣されており、各地域の取り組みが行われております。
派遣先自治体も続々と増加しています。

今後は日本全国に地域DX人材を派遣して、日本全国の隅々を現地から見つめ、地域の課題に向き合い、強い日本の創造を目指します。

今後も我々はDXの架け橋となって地域を救い、幸せを隅々にまで届けたく考えています。