事例

企業の防災・減災を支援する「DXソリューションパッケージ」とは

日本DX大賞は、自治体や企業などのDXの推進事例から優れたDX事例を掘り起こし、広く共有する機会として2022年から実施しているコンテストです。2024年6月20日に開催されたSX部門では、気候変動や飢餓、災害対策、エネルギー危機といった社会課題を経営に取り込むことで企業の稼ぐ力を強化していく、SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)に取り組んだ企業を評価します。

最先端のソリューションを活用し、事故の未然防止と企業の持続可能な事業環境構築を支援する、あいおいニッセイ同和損害保険の事例をご紹介します。

1. DXソリューションパッケージの開発背景

企業の事業活動に影響を及ぼすリスクは、設備の老朽化、火災や漏水、従業員の怪我、洪水や地震といった自然災害の頻発化など多岐にわたり、複雑化しています。また、テクノロジーの急速な進展など、社会環境も大きく変化していくにつれて、これまで思いもしなかったことがきっかけで、事故が発生するケースも出てきています。

そんな環境下において、特に中小企業からは「デジタルを活用したリスク対策の方法が分からない」といった声が上がっています。一方で、リスクを予防する最先端のデジタル技術を持ち、ソリューションを開発・提供している事業者も、営業網を有していない等の理由から日本全国へ展開しきれてない現状があります。

この世から事故を減らしたいと考えるあいおいニッセイ同和損害保険株式会社は、そういった企業や事業者をつなげるためのプラットフォームとして、事故が起きた後の補償を提供するという従来の機能に加えて、事故の未然防止・損害の極小化に有効なソリューションと補償をセットで提供し、お客さまとともに事故の低減を目指していく企業向けのパッケージ商品「DXソリューションパッケージ」を開発しました。

DXソリューションパッケージは当社の中期経営計画の核に掲げる、「CSV(Creating Shared Value:社会との共通価値の創造)」と「DX(Digital Transformation:データ・デジタルの活用で価値提供を変革)」を掛け合わせた「CSV×DX」戦略に基づいている商品であり、2024年1月から本格展開しています。

2. DXソリューションパッケージの特徴と効果

DX ソリューションパッケージは、「デジタルのチカラで、プラスワンの安心を。」をコンセプトにした、事故の予防や低減を支援する企業向けのパッケージ商品です。

DXソリューションパッケージは主に、次に挙げる特徴を有しています。

事故の未然防止・損害の極小化に有効なDXソリューションの提供IoTセンサーやAI、画像解析などを活用した最先端のソリューションを提供全国の代理店から企業に紹介
補償万が一の際は、充実の補償でお客さまをサポート事故発生時の保険金によるソリューション導入の支援 など
ソリューションラインアップ火災、漏水、業務上の賠償事故・ケガ、構内事故、高齢者の孤独死など事故原因を軸にラインアップ(今後も追加予定)

DXソリューションパッケージは、安全・安心でサステナブルな事業環境の構築を支援し、企業の発展、さらには地域の活性化、安全に暮らすことのできるまちづくりへの貢献を目指しています。

3. DXソリューションパッケージで提供するソリューションラインアップ

DXソリューションパッケージは現在、火災や漏水など、業務上想定されるさまざまなリスクに対応可能な、10個のソリューションを提供しています。

ソリューション社会課題ソリューションの概要
①ダクト内遠隔監視システム「T-SENSOR」ダクト内火災発生は、初期消火失敗の原因の一つ(東京消防庁「令和4年版  火災の実態」より)ダクト内の状態を撮影、内部温度の測定が可能。異常な温度を検知したら、専用アプリに通知してくれるアラート機能がある
②炎検出センサー火災の発生原因のトップは「放火+放火の疑い」であり、放火対策は重要な社会課題(引用:令和2年版消防白書「主な出火原因別出火件数」)火から発生する紫外線をリアルタイムに検知しアラートを発信。太陽光と火の紫外線を分離できるため屋外での利用も可能
③AI火花検知カメラリチウムイオン電池等を処分する際、火花が発生し、これを原因に火災事故に発生するケースが多発AIカメラにより火花を瞬時に検知し、アラートの発信や自動消火も可能
④X線老朽配管検査一般的に築30年以上の建物は、給水管からの漏水発生率が急激に上昇するため、建物の老朽化対策は重要な社会課題建物内配管をX線で撮影し、配管の寿命を計測することで効率的な修繕計画の策定を実現
⑤IoT漏水検知センサー建物の老朽化・メンテナンス不足を原因とした漏水事故が、建物の長寿命化を阻む要因となっている漏水を検知すると警告音やWi-Fi機能によるメールでアラートを発信
⑥障害物検知警報センサー少子高齢化に伴う労働人口減少を主因として、以下のような課題が表面化
⑥建設機械等の操作者(オペレーター)の高齢化・担い手不足
⑦業務負荷の増加により人力での現場管理に限界。機械による業務効率化が急務
⑧業務負荷や残業時間の増加による従業員の体調不良を原因としたヒューマンエラー発生
⑨従業員教育の時間が取れないことや外国人労働者の増加による教育不足を原因としたヒューマンエラー発生
(左記⑥の解決に寄与)
フォークリフトを中心とした建設機械等に取り付け、近接した人や物を検知してアラートを発信
⑦IoT作業者安全見守りサービス(センサー)(左記⑦の解決に寄与)
あらかじめ定めたエリア(侵入禁止エリアなど)に許可担当者以外が侵入した時にアラートを発信
⑧IoT作業者安全見守りサービス(ウェアラブルデバイス)(左記⑧の解決に寄与)
従業員のバイタル情報をリアルタイムで取得し、バイタル異常時に管理者へアラートメール等を発信
⑨オンラインマニュアル作成ツール(左記⑨の解決に寄与)
スマホ一つで簡単に高品質なマニュアルが作成でき、8か国語の自動翻訳機能の活用や、作成したマニュアルの即時共有が可能
⑩モーションIoTセンサー高齢化および独居老人の増加による「孤独死」が社会課題化賃貸物件における入居者の異常を検知し、不動産管理会社へアラートを発信。孤独死の未然予防・早期発見に有効

これらのソリューションは、最先端のデジタル技術を活用していること、十分な事故低減効果が期待できるか、といった条件に加え、お客さまとともに事故の低減に取り組んでいくというあいおいニッセイ同和損害保険の理念に共感していただけるかなどの観点から選定されたパートナー企業により提供されております。

その中でも、1つ具体的なソリューションを紹介させていただくと、飲食店等に設置されているダクトは、メンテナンスや点検を怠っていると、ダクト内部に堆積している埃や油に引火し、火災を引き起こしてしまいます。しかしながら、それらは、構造上外から視認することは難しく、火災が発生してしまっても初動対応が間に合わないこともあります。

ダクトに設置する据え置き型のダクト内遠隔監視IoTセンサー「T-SENSOR」は、先端に付属するカメラで、ダクト内の堆積した埃や油を可視化することができるため、適切な点検・清掃および、工場や飲食店等の火災事故を未然に防ぐことにつながります。また、ダクト内部の温度異常を検知してアラートも発信するため、火災事故の初動対応も迅速に行えます。

4. 取り組む理由と今後の展開

保険会社がソリューション提供に取り組む理由は、全国から集まる事故のデータを有効に活用し、リスクに応じたラインアップを検討できること、またあいおいニッセイ同和損害保険が有する、約300の営業店と約5万の保険代理店のネットワークを通じて、契約者のニーズや要望を直接キャッチアップできるメリットがあるためです。

今後、あいおいニッセイ同和損害保険は、リスクソリューションのプラットフォームとして、最先端のソリューションを提供するさまざまな事業者と連携を進め、DXソリューションパッケージをさらに拡充し、多様化するリスクへの対応を強化していきます。そして、企業とともに事故の未然防止・早期回復に取り組むと同時に、ソリューションの利活用により得られるデータの分析を通じてCSV×DXを基軸とする新たな商品・サービスの開発を進めていく方針です。

5. まとめ:デジタル時代の新たな保険の形

あいおいニッセイ同和損害保険のDXソリューションパッケージは、事故発生後の補償という従来の保険会社の役割から、「事故発生前の防災・減災と事故後の早期回復+企業のサステナブルな事業活動の支援」に焦点を当てたビジネスモデルです。デジタル技術をフルに活用した、新時代の保険サービスと言えます。

今後、このような取り組みがさらに進化し、普及していくことで、企業のリスク管理はより高度化し、地域の安全・安心に貢献するでしょう。