事例

保険業界に新風を吹き込むデジタル革命:アフラックの「ADaaS」が示すお客様に対する体験価値の未来

日本DX大賞は、自治体や企業などのDXの推進事例から優れたDX事例を掘り起こし、広く共有する機会として2022年から実施しているコンテストです。2024年6月21日に開催されたCX(カスタマーエクスペリエンス)部門では、顧客に対する体験価値の向上や顧客とのより深い関係構築に、デジタル技術を活用した企業の事例を表彰しています。

保険は必要だと分かっていても、相談に行くのをためらう人は少なくありません。リアルとデジタルを融合させ、お客様との新たな関わり方を創出した、アフラック生命保険株式会社(以下、アフラックと記載)の事例をご紹介します。

1. ADaaS開発の背景:変化するお客様ニーズへの対応

アフラックは、「『生きる』を創る。」をブランドプロミスに掲げる生命保険会社です。1974年、当時の日本人の死因の第2位だったがんに着目し、がんに罹患した際の保障を行うがん保険を、創業と同時に発売。以来、がん保険のパイオニアとしてビジネスを展開しています。

自分に合った保険の相談や家計相談などを、販売代理店に自ら出向いたり勤務先に来た保険営業の人に気軽に相談したくても、契約を強要されるかもしれないことへの不安、あるいはそうしたイメージを強く持つお客様は多くいます。

また、保険加入までにはいくつものハードルがあります。自分の将来を考えてリスクに備える必要性は理解しているが、保険を選択するという行動に至らないケースがあります。

一方、人々の行動変容と価値観の多様化が進み、保険への興味・関心のないお客様は増えつつあり、販売代理店においてはお客様との接点を創出することに難しさを感じていました。

そこで、アフラックは、お客様にとって、「いつでも・どこでも・だれでも」必要なサービスと感動的なユーザー体験の提供、販売代理店の効率的・効果的な営業活動と業務支援を同時に叶えられる、リアルとデジタルが融合した全く新しいサービスの開発に乗り出しました。

2. ADaaSの特徴:リアルとデジタルの融合による新たな体験価値の提供

アフラックは、2022年4月に「ADaaS/Aflac Digital as a Service(アダース)」の提供をスタートさせました。ADaaSとは、お客様、販売代理店やビジネスパートナーに提供するクラウド型のデジタルサービスプラットフォームです。リリースからわずか1年で、全国の販売代理店に導入されるなど、普及が進んでいます。

ADaaSの最大の特徴は、認知のフェーズから相談・申込フェーズの全プロセスにおいて、リアルとデジタルを融合させた体験を提供することです。

具体的なサービス内容は、以下の通りです。

 サービス名概要
お客様向けサービス(1)アフラックのオンライン相談実店舗に出向くことが難しいお客様の保険相談から申込みまで、時間や場所を問わず、オンラインで対応できる。画面共有で保険商品の説明・提案、申込みまでを電子署名で完結。
(2)アフラックミラー(店舗用)※第三者企業により製造・提供販売代理店の店頭や店舗内に設置した鏡型IoT機器。保険料試算や肌診断、ゲームなど、多様なコンテンツを提供している。来店するお客様の興味や関心を引くことで、保険への理解・興味を引き出し、来店誘致につなげる。
(3)ARサービス(商品紹介/自己紹介)チラシや名刺、メールに記載の二次元コード(QRコード*)から、AR技術を使ったサービスにアクセスできるようにしたもので、アバターが募集人(販売代理店において、保険募集の資格を持った担当者)のプロフィールや保険商品の情報を案内してくれる。*QRコードは株式会社デンソーウェーブの登録商標である
(4)XRデバイスVRやARの体験が可能なデバイスの活用により、体内探検などの3Dコンテンツを提供してお客様にがんの早期発見の大切さや、介護に関する理解を促す。
(5)デジタルほけんショップデジタル上に開設された販売代理店の店舗に、アバターを操作して入店できる。オンライン面談の他、保険相談の予約なども可能。
(6)募集人マッチングサービスお客様の趣味・嗜好や要望、地理的な状況と募集人の特性をAIが分析し、お客様にとって最適な募集人をAIが紹介するサービス。複数名紹介されるので、お客様はより自分と相性の良い募集人を選択できる。
販売代理店・募集人向け(7)営業サポートAI管理者による営業同行を代替・補完するために、お客様との面談内容を、AIによって可視化・評価するサービス。管理者が同行している時と同様に、最適な話法や資材を募集人に提示して事実に基づく客観的な指導が可能。
(8)募集人教育AI募集人育成の一環で実施されるロールプレイングで、お客様の役をAIアバターが務める。募集人の質の均一化を図れるだけでなく、接客を学べる環境を提供している。

これらの技術を駆使することで、ADaaSは従来の保険商品販売の枠を超えた、新たな体験価値を提供しているのです。

3. ADaaSの開発プロセス:アジャイル開発とデザイン思考の採用

アフラックでは、変化に富んだ現代社会でも、お客様のニーズに柔軟かつスピーディーに対応し、新たな価値創造を行うべく、アジャイル開発の手法を働き方に取り入れた「Agile@Aflac」に、全社を挙げて取り組んでいます。

同様に、ADaaSも「Agile@Aflac」の方針とデザイン思考のもと、縦割り型の従来の組織ではなく、機能横断的なアジャイルチームにて構築されています。

営業・マーケティング部門とIT・デジタル部門の協業により、それぞれの専門領域で企画開発を進めるとともに、お客様や販売代理店からのフィードバックを受けて、スピーディーかつ柔軟にサービスの継続的な改善にあたっています。

4. ADaaSの成果:急速な普及とお客様に対する体験価値の向上

ADaaSの導入から約1年で、その成果は着実に表れています。ADaaSを通じて、お客様との接点を増やすことに成功しました。

アフラックミラーは、全国で約100,000人が利用。ARサービスは約3,500回アクセスがあり、それぞれ保険商品やアフラック生命保険への関心や興味が生まれるきっかけになりました。オンライン相談システムを活用した保険契約数は、1年間の契約数のおよそ13%にあたる52,000件を超えました。

一方、販売代理店においては、アフラックミラー、XRデバイス、ARサービスの導入件数が約1,100件(2023年、3サービス合計)。このうち、アフラックミラー(店舗用)の導入店舗においては、アフラックミラーをきっかけとして創出した接点は約400件で、保険に関する会話へと繋げられた件数はおよそ100件でした。

また、実際にADaaSのさまざまなサービスを体験したお客様や、導入した販売代理店の営業担当者からはポジティブな声が寄せられています。

これらの成果は、複数のメディアで取り上げられた他、ADaaSのサービスの一つであるアフラックミラー(店舗用)での事例を紹介したコンテストで受賞するなど、他の業界からも注目されています。

5. 今後の展望:地方の社会課題解決に貢献

アフラック生命保険は、ADaaSを保険領域から社会課題解決の活用へと広げようと、地方自治体や他企業、学術機関との産官学連携・協業を積極的に進めています。「わかさ健活プロジェクト」と名付けられた福井県若狭町のプロジェクトでは、自治体や大学病院と連携し、地域住民の健康寿命の延伸に、新潟県関川村においては、地域の防災・減災を目指す「関川防災・健康増進プロジェクト」にそれぞれ取り組んでいます。

今後ADaaSが、生活者に寄り添うプラットホームへ進化していくことを目指しています。

また、業界を超えた他業種・他社とのパートナーシップによりエコシステムを構築しつつ、「生きる」を創るリーディングカンパニーとしてDXを推進し、生活者や社会と共存・共有できる新たな価値を創造し続け、社会にポジティブな変化を与えたいと考えています。

6. まとめ 

アフラックの「ADaaS」は、デジタル技術の活用、デジタルとリアルの融合、アジャイル開発とデザイン思考により、お客様との新たな接点を創出しただけでなく、販売代理店などにとっても接客の品質の向上につながっています。また、地方自治体が抱える防災・減災や健康増進の課題にADaaSを活用するというプロジェクトを進めており、従来の生命保険の販売に留まらない保険業界の新たな事業の形を示唆しています。

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