事例

東北コピー株式会社「クラウドで進化し続ける私たちの仕事」

全国中小企業クラウド実践大賞は、クラウドサービス利活用を実践し収益力向上・経営効率化したモデル事例のなかから、コンテストにより優れた取り組みに対して総務大臣賞、日本商工会議所会頭賞等を贈るコンテストです。

2020年11月13日に行われた郡山大会より、東北コピー販売株式会社の事例をご紹介します。コピー機販売の東北コピー株式会社が行ったクラウド化による業務改革と営業改革。ペーパレス化の流れの中でのコピー機の位置づけについての考察もぜひご覧ください。

東北コピー販売株式会社

 

■法人名:東北コピー販売株式会社

事業内容

1.リコー製品の画像機器全般の販売とサポート

2.ICT関連の販売・構築・サポート

3.お客様のオフィス環境改善のご提案

4.業務改善コンサルティング

■設⽴:1980年03月

■公式WEBサイト:https://t-copy.co.jp/

 東北コピー販売株式会社は、今期で41期目。本社は福島県福島市にあります。業務内容としては、社名の通りコピー販売がメイン。DXでほとんどの企業が1枚でも減らしたいというふうに思っている、紙に出力する機械を販売している会社です。

そんな東北コピー販売株式会社が、クラウドを使うようになって今年で6年目となりました。

クラウド導⼊の背景

まずはクラウドを導入するにいたった背景の方から解説します。

コストの⾒える化

 まずは「コストの見える化」の必要性です。その当時は、1か月どのくらいシステムの運用費がかかっているのか、全く把握できておらず、管理者が本当に大変な日々を過ごしていました。

BCP(事業継続計画:Business Continuity Plan)

また震災を経験していますのでBCPの一環として、クラウド導入が必要だと考えました。

業務改善⇒ 紙⽂化からの脱却(ドキュメントカンパニー⽂化)

そして、業務改善のために、紙文化からの脱却を何としてもやりたかった。というのが非常に大きな要因となっています。

ドキュメントカンパニー文化と書きましたが、これまで、いくどとなく業務改善にチャレンジをし、失敗してきました。

その原因は、どうしてもコピー機を使った業務改善を考えがちだったという点にあります。

コピー機というハードありきの業務改善が、失敗の原因じゃないかと仮説を立て、ハードに依存しないクラウドで業務改善をしていこうと考えたのが、クラウド導入に至った大きな理由です。

社内の問題・課題

さらに、会社の課題もいくつかありました。一例として、営業の課題を見てみましょう。

例えば「今月の見込みを出して」と指示をすると、Excelで、 しかもフォーマットがバラバラのExcelで提出されてきました。

また「お客様にコピーを納品したのはいつか、リース契約書を確認したい」というと、毎回

分厚い紙の台帳を10-15分探して、ようやく「これです」と提出される。

さらに「お客様の年間取引どのくらいあるの?」と尋ねると「管理部に聞いてください」と仕事を丸投げ。

そして「お客様に納品したあとのフォローっていつ行くの?」と質問すると、「え、じゃあ……うーん、来週ですかね」となんとなくの回答が返ってくる……

必要な情報はバラバラ、そしてどこにあるのかわからないという課題を抱えていました。

導⼊の目的

 ここでクラウドを導入することになりますが、クラウドを導入する目的というものを明確に持つべきだと、フェーズを2つに分けました。

第1フェーズ(2016~2019年)

 第1フェーズは

①情報共有

②コスト削減

③クラウドファースト

の3つの観点に沿って進めました。

①情報共有

 ストック型の情報共有として、とにかく情報をため込むことにしました。

情報を確認したいときにすぐに見ることができる環境を作ろうという目的です。

②コスト削減

 次はコスト削減です。業務改善をしながら、無駄なものはどんどん削減をしていこう

と努めました。

③クラウドファースト

 最後にクラウドファーストです。とにかく「うちの会社ではこれからクラウドを使うんだ」「クラウドという環境に慣れてくれ」と、社員にその旨の説明をしました。

もちろん反発もあり、最初のうちはなかなか入力をしてくれない社員もいました。

根気よく入力を促すことで、2019年までかかりましたが、完成形に近づくことができました。甘いかもしれませんが、第1フェーズの自己採点では100点満点です。

第2フェーズ(2020~2022年)

 2020年から第2フェーズに入りました。これまで蓄積した情報を積極的に活用する段階です。

第1フェーズのコストバランスから、今ある経費がだいたいこのくらいかかるというのは明確になりました。そこで、第2フェーズでは、現状のコスト以上にならないように対策を打ち、更なる改善のために新しいクラウドツールを使うというようにしています。 

第1フェーズでは仕事を楽にするためのクラウド活用を目指していました。第2フェーズではさらに進んで、仕事を楽しくしていこうという目的を持って取り組んでいます。

現在のシステム管理

 こうして、現在システム管理としてはこのような形で行っています。

97%以上の情報はクラウドに移行が完了しており、ほぼ移行は完了したという状況です。

クラウドによる情報活用の例

 次に、クラウドによる情報活用の一例を解説します。

まず、お客様がコピー機を導入して1年が経った際に、営業と管理部門にアラートが出るようにしています。その際、お客様のメールアドレスを確認してお礼メールをするという流れを作りました。

営業がメールアドレスを確認したときに、メールアドレス登録がない場合は次回、訪問時にお客様にメールアドレスを確認したり、またアドレスはあるけど自社ドメインを取得されていない場合は、ドメイン取得の提案をするなど営業展開につなげています。

そして、お礼のメールは管理部門から送っています。

これは、管理部でも業績に貢献できるという意識の改革をするとともに、お客様から見ると営業だけではなくて管理部門からも「東北コピー販売全体で自分たちを見てくれてるんだ」という安心感をあたえることが出来、それが最終的に顧客満足度向上につながればと思い、考えた仕組みです。

営業戦略へのクラウド活用

 次に営業戦略についてのクラウド活用です。

こちらでは、google cloud platform を使って、お客様の位置情報をマップに出しています。これで営業のテリトリー、件数、取引額等を全て確認できるようにしています。

担当エリアが広すぎたり数が多すぎたりなどの判断に使うことできます。

図の中の赤枠のような空白地帯に企業があれば、営業をかけてお客様になってもらえれば効果が上がる営業活動ができるのでは?など、クラウドを営業戦略的な部分で使用しています。

業務へのクラウド活用~脱ハンコの例

いま、脱ハンコが盛んに言われていますが、東北コピー販売株式会社における社内の決裁にはほぼハンコは使っていません。 

しかし、メーカーとのやりとりに多くのハンコが必要な状況だったのです。これを確認すると、捺印をほしがるのは、要するにエビデンスがほしいという理由が見えてきました。

そこで、各処理段階におけるエビデンスをしっかり残すようにして、誰が承認したかを明確にわかるようにしたことで、FAXや印刷が減り対前年比20%の紙を削減することができました。

ルールを変えるのは⼤変でも柔軟に対応すれば解決できる!

ということを実感しました。

社員のクラウド化に対する声

社員の声をあえて手書きでアナログに書いてもらったものの一部です。

対応時間が短くなったこと、電話でのチャットは既読がわかるのでわかりやすい、在庫削減で倉庫がきれいになったなど、概ね好評を得られています。

最後に

社内業務の改善を行い、ペーパレスにすることは、社名とのギャップを感じられるかもしれません。しかし、企業の業務はいくらペーパレス化しても、紙は必ず残ります。ペーパレスをしつつ紙をうまく併用する方向性を示すことで、自社のポジションを向上させることも狙いです。

会社のクラウド化の経験を、しっかりとお届けすることがお客様の最終的なDXにつながると信じ、これからもクラウドの良さをどんどん発信していきたいと考えております。