事例

社員の”わがまま”から始まった?! ~30人30通りの働き方改革の実現~

「出社したら、その間ペットと離れ離れ」この状況を寂しく思う方は多いのではないでしょうか。相互電業株式会社のクラウド化は、そう思う1人の社員から始まりました。愛犬のために定時に帰れる会社に転職したという今野さん。しかし、彼女が定時に帰れても愛犬は9時間は家で独りぼっち。IT経験は特にないものの、在宅勤務をしたいという希望を胸に、社長や現場を巻き込んで、クラウド化に取り組みます。それまでの改革でシステムアレルギーを起こしてしまっていた社員たちですが、実際に業務が楽になっていく過程で、新たなチームワークも生まれました。実際に業務時間と経費の大幅な削減にも成功。そのひたむきな姿勢とまっすぐな努力、そして結果が評価され、北海道総合通信局長賞を受賞しました。「私もあんな風に働きたい」という「わがまま」な気持ちこそが、クラウド化の種になるというお話には学ぶものが多いでしょう。

相互電業株式会社

所在地:北海道帯広市東1条南5丁目2番地 相互ビル
設立:1956年7月(創業65周年)
事業内容:電気工事、施工管理、電気通信工事施工、消防設備工事施工、保守点検
従業員数:33名(2021年10月1日現在)
http://www.sougodg.co.jp/
 

クラウド化のきっかけ

まず、会社でクラウド化に取り組むきっかけになった出来事を紹介します。

 約 3 年前の秋のことでした。いつも通り、定時に仕事をあがり、急いで自宅に帰りました。窓を見上げると、暗闇の中でぽつんと愛犬の茶々丸が待っています。私は思いました。

「茶々丸は幸せなのだろうか……」

 定時で帰れるとはいえ、約 9 時間は 1人ぼっちです。その間、おやつも食べられなければ、外に散歩も行けません。自分だったら絶対幸せじゃない。

そこで考えてみました。犬ともっと一緒にいて幸せにしたい。
しかし、仕事も頑張っていきたい。

「そうだ。在宅勤務がある!」

 在宅勤務をするには、絶対にクラウド化が必要です。

そうだ、kintoneを使おう

そこで発見した素敵なツールがkintoneです。ノーコードでツールが誰でも作れ、業務改善もできます。そしてクラウドシステム。これを使って会社の業務を改善し、システムをクラウド化していけば、在宅勤務も可能になる。みんなで幸せになれると確信した私は、張り切って今の現状を聞きに行きました。

もうシステム、変えないで!

すると、聞こえてきたのは「工事のことは担当者に電話して」
工事の情報は担当者の頭の中にしかありません。 30 人が30 通りの業務フローをこなしており、超属人化している状況でした。さらに「システムを変えようとしている」と噂が広まり声を掛けられるようになりました。

「もうシステムは変えないで!」

なぜ、そういうのか聞いてみると、社長 1人がシステム担当者で、各業務のみに特化したバラバラのソフトやSalesforceを導入しても、現場では使いこなせませんでした。それが、各部門でシステムアレルギーを引き起こしていたのです。

 社長は良い会社を目指してシステムを導入しているけれども使ってもらえず、現場は工事に集中したいと変化を嫌いました。全員が自分の世界しか見えていなかったのです。

しかし、今現在、私たちはクラウド化に成功しました。
そのポイントをこれからご紹介します。

クラウド化成功の3つのポイント

クラウド化成功の3つのポイントはこちら。1 つ目は目的を統一すること、2 つ目は雑談をすること、3 つ目はそれを踏まえた上でクラウド化を進めたことです。

目的統一×ざつだん

社長と話してみよう!

 まずは、現在のシステム担当者である社長と、どんな目的で今のシステムを導入したのかを「雑談」してみました。すると、社長も私と同じ目的だったのです。クラウド化の目的は社員の幸せのために「働き方改善」をしていくこと。そのためには脱属人化が必要です。もちろん、お客様の満足度もアップさせたい。

この 3 つを支えるための、正確で迅速な経営情報が欲しい。
この 4 つの目的について社長と雑談することで「クラウド化の目的」が決まりました。

現場の人と話してみよう!

しかし、1 つ視点が足りません。実際に働く現場のみんなの視点です。そこで次は、現場のみんなと「雑談」をしてみました。ここで話した内容は、システム移行とプロジェクトについてです。基本的に自由参加で、興味がある人、参加したい人には、目的から導入まで全てに関わってもらいました。

みんなで使ってみよう! 

そして、作ったシステムはみんなで雑談しながら楽しく使っていきました。
ただの導入説明会ではなく、ワークショップも一緒に開催。一人一人が抱えている問題を解決できるのかを、一緒に体験しながら雑談をして改善していきました。

クラウド化事例

そうして作り上げたクラウド化の事例をご紹介します。もちろんツールはkintoneを使っていますが、素敵な連携サービスもたくさん使いました。

これらを使って、案件工事管理などの工事業務のほか、日報やスケジュールなど多くのアプリを作成しました。見積もりなどの専門ソフトを使っている業務以外は、ほぼkintoneで管理しています。

案件工事管理

実際のきっかけとなった案件工事管理をご紹介します。
これまでは左の写真のように、エクセルに入力して印刷した紙にみんなに書き込んでいました。これをkintoneでアプリ化。

業務フローを図解で表示したり、よく更新されるので改善履歴を表示したり、
使いやすいような工夫を盛り込み、誰もが入力しやすいシンプルな画面を作りました。

さらに担当者付のステータス管理や、「この見積もり提出して 1 週間ですよ」といったリマインド通知機能も作成しました。このようにして、まずは情報を誰もが見れるように管理することから始めました。

すると、今までアドバイスをしたことがなかったようなベテラン社員の方から「この工事、得意だから一緒に行こうか」といった声掛けが生まれたのです。
なんと、見えるようになることで、チームワークが生まれました。

感覚が目で見えるようになった

さらに、これまでは感覚で思っていた「あの人は忙しそうだな」というものも、データが溜まっていくことで、案件をどこのステータスで何件、誰がどこまで担当しているのかが見えるようになりました。更に、チームワークも、具体的なアイデアも生まれ始めたのです。そのアイデアをさらに改善し、クラウド化を進めていきました。

 例えば案件・工事。アプリから契約書を発行したり、外注費を精算したり、原価計算をしたり、請求書を発行することができるようになっています。

この中で、まずは外注費の精算をご紹介します。

協力業者さんが高齢の方も多いため、請求書は当社側で代理発行しています。
これまでは、こちらの写真にあるように手書き式の複写式伝票を転記してエクセルで集計していました。この作業だと、過去情報を参照したり、最初に契約した情報を見つけるのがとても大変です。

しかし、Kintoneアプリ化することにより、過去の支払情報を一覧で見れたり、契約情報もその場で見れるように。アプリに登録すると、自動で集計し、明細書まで発行できるようになりました。

アプリを増やしていくことによって、原価管理もできるようになりました。

今までは伝票を手で計算して集計し、月に1回の会計締め後に出る原価計算を待って参考にしていましたが、日報の情報や外注費の情報、さらに請求書の支払い情報がkintone上にあるので、
自動で原価計算結果が反映され、毎日自動更新で原価管理ができるようになったのです。

このように業務改善とクラウド化を進めることで、私たちは3年間でアプリを148個、スペースを61部屋も作りました。

 私たちはクラウド化によって、 1人でどうにかしていた、30人30通りの業務フローから30人で協力しあう1つの業務フローを手に入れたのです。

導入効果

さらに具体的な導入効果も出ました。なんと年間1000時間も業務時間を削減。
さらには経費も年間400万円削減することができたのです。

なんと組織風土も変わりました。
現場からはたくさんのアイディアが出て、主体的に30人30通りの人事制度が確立されました。

人事制度のうち、代表的な3つをご紹介します。

1つ目はスポーツ支援制度。会社のスポーツクラブに所属している社員は、有休が5日追加されるほかに、活動費も5万円補助されます。さらに周りの人が許可すれば、犬を連れて出社してもよい制度。そして、ついにここで、在宅勤務ができるようになったのです。

 在宅勤務ができるようになったことで、最初の目的であった私の愛犬が幸せになったかどうか、3つの指標で示してみました。1つ目の散歩距離は、なんと1年間に2080km も。
写真の枚数は2300枚増加。そしてさらに一緒にいる時間が年間で3ヶ月も増えたのです!

この先の予定

これからも、私たち相互電業メンバー・お客様・協力業者みんなが幸せになれるように業務改善をし、クラウド化をしたいと考えています。

最後に伝えたかったことは「あなたのわがままがクラウド活用の種になる」ということです。

「私もあんな風に働きたいな」「もっとこうしたら仕事が楽しくなるのに」というわがままこそがクラウド活用の種になります。みなさまが「わがまま」を実現していく過程で、この話が参考になると嬉しいです。

応募受付中

日本DX大賞

DX推進の取り組みを共有しませんか?

日本DX大賞 2025 エントリー募集中

あなたの組織DX推進事例をぜひ日本DX大賞にご応募ください。他社の参考となる貴重な取り組みを共有することで、日本のDX推進に貢献。また、受賞企業は事例集への掲載やイベントでの登壇機会など、さまざまな形で企業価値向上につながります。