どの企業も抱える人手不足の問題。そんな中、函館市の大鎌電機はこの10年で社員数を5倍以上に伸ばしています。その決め手はDXです。新卒採用で2020年に入社した金曽さんは、自身が同社に好感を持ったきっかけは「採用活動の一環としての IoT 導入」だったと語ります。学生が企業を選ぶときに見るのは「差」だけではありません。企業の独自性・先進性を「違い」として訴えることが必要なのだと感じたそうです。大鎌電機は中小企業では先んじてVista Finder(ビスタファインダー)を導入。これまで「見て覚えて10年かかる」といわれた技術習得期間を大幅に短縮しました。現在では、新卒採用された社員たちが中心となって、よりいっそうのIoT化を進めています。若手社員の新しいアイディアを活かしたDXを進め、その結果、より良い人材の興味・関心を惹くことでまた新たな採用に繋がる。中小企業における、人材確保の好例となる事例です。
大鎌電気株式会社
所在地:北海道函館市美原3丁目36番5号
設立: 1945年(昭和20)10月
事業内容:一般電気工事業、電気通信工事業、消防施設工事業
従業員数:26名
https://www.ookama.co.jp/
大鎌電気×IoT導入

今回のクラウドコンテスト出場にあたり、当社で導入済みのシステムを整理してみると、本当に様々なツールを導入していました。そもそも、いつから当社はこんなにたくさんの IoT 機器を導入しているのか?なぜ導入することとなったのか?という疑問が浮かびました。
しかし、IoT 機器の導入は全て私の入社前。そこで、社長に確認したところ、従業員数の推移を見せてもらいました。私の入社は2020年 。同期が 6 人いる状態で入社しました。私は、従業員数が 1 桁の時代を知らなかったので、6 年前の「 5 人」から現在までの従業員数増加にとても驚きました。

現在、建設業はもちろんですが、どこの業界でも人手不足が続いています。社長も数年前まではこの人手不足にとても悩んでいたそうです。そこで、従業員数を増やすために様々な取り組みを行いました。
私も、学生時代大鎌電気の説明会に参加したことがあります。コルクボードを設置した PRにはとても親しみやすいイメージを持ちました。
実際にお話を聞いていく中で、ノートパソコンはもちろんのこと、IPad やiPhoneを全員に支給するなど、様々な IoT 機器を導入していることを聞きました。一般的な中小企業では取り組んでいない施策に、とても驚いたことを覚えています。私の入社のきっかけともなった採用活動の一環としての IoT 導入が、現在の IoT 機器の充実につながっていることを知りました。
続けて社長から紹介されたのは1本の動画です。

「ホンダイノベーション魂!」という、ホンダの元経営企画部長の小林三郎さんがホンダの技術革新をテーマに行った講演のDVDでした。この動画の中で印象に残ったのは、「派手はなく違いを埋め」という言葉です。

この言葉は、当社の採用への取り組みにも当てはめられると感じました。
そもそも、なぜこのような採用への取り組みを行うのでしょうか。それは、学生が企業を選ぶ時の、他社との差別化を図るためです。
ここで言う「他社」とは中小企業だけではなく、函館市内の大企業も指します。例えば、当社の取り組みに当てはめてみると、青色の部分は中小企業では導入している会社は少ないですが、大企業では導入している会社も多いです。そのため、これらは「差」にはなりますが「違い」にはなりません。
ただ、IoT機器の導入は大企業でもなかなか行っている会社がありませんでした。これこそが「違い」です。ちなみにVista Finder(ビスタファインダー)ですが、中小企業の中では大鎌電気が一番に導入したと聞いております。
Vista Finder MX

そこで、本日はこのVista Finderについて紹介します。
Vista Finderは株式会社 KDDI 総合研究所の製品で、高機能なリアルタイム映像伝送によって、現場作業を遠隔地より指示・サポートするためのシステムです。熟練者が事務所にいながら現場の作業者に指示を出すことを可能にします。
作業者のいる現場の映像を、端末から本部のパソコンへリアルタイムで送信します。本部にいる熟練者は、受け取った映像を元に指示を出す流れです。

それぞれの機器を見ていきます。作業者の使用する機器としては、ハンズフリーの状態で作業を行えるようにするため、スマートグラスを採用しました。スマートグラスはカメラとモニター、そしてイヤホンの 3 点で構成されています。

次に本部側の動きです。
パソコンには、スマートグラスのカメラから映し出された映像がリアルタイムで表示されます。最大で 4 台稼働できるので、4 人まで指示を出すことが可能です。

こちらは、実際に使用している様子です。
事務所にいる熟練者が、現場にいる若手作業員へVista Finderを通して指示を出しています。現場に行かなくても状況を把握し、離れた場所から指示を出すことができるようになったため、熟練者の若手教育に対する負担の削減に繋がりました。
Vista Finderは音声だけではなく、AR で指示を出すこともできます。リアルタイムで送られてくる映像に対して指示を出すことが可能です。指示内容はスマートグラスのモニターから確認できます。若手は、分かりやすい指示のもと、安心して作業を進めることができるようになりました。

Vista Finderの導入は、新人教育に革命をもたらしました。
建設業界では「見て覚える」という文化が定着しているため「1人前になるには 10 年かかる」と言われています。ですが、Vista Finderを導入すると、実際に手を動かしながら作業を進めることができるため、技術の習得スピードが上がりました。
実際に手を動かすことは、見て覚えるより、何倍もの効果があります。
導入後の効果

IoT 機器の導入は、新卒採用の成功という大きな効果をもたらしました。
私のように「会社の IoT 化が入社のきっかけとなった」と答えた新入社員の割合が、 9 人中 7 人もいたのです。IoT 機器導入の重要性を実感する結果となりました。
推進に向けて

IoT 機器ですが、一部の社員しか使用できないことが問題視されていました。
そこで、新卒採用をきっかけにIoT 化を若手にバトンタッチ。マニュアルの作成や講習会をすることで、若手から社内全体に推進していきました。こちらは、昨年入社社員が作成した実際のマニュアルです。このような検証を通してIoT 化をどんどん推進していきました。
まとめ

最後にまとめです。
私の入社のきっかけの 1 つともなったVista Finder。これがあれば、どこにいてもパソコンがあれば指示を出せます。熟練者の「教える」という作業負担を軽減することにつながりました。
そして、実際に自分の手を動かしながら作業を進めていくことができるため、技術の習得スピードも上がっています。
つまり、建設業界の「当たり前」を覆したのです。これが他社との「違い」に繋がり、この「違い」の創出が新卒採用の実現に導きました。今後も、IoT の導入による業務改善を通して、他社との違いを創出していきたいと思っております。
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