日本の中小製造業は、生産年齢人口の減少や賃金上昇など、これまでにない経営環境の変化に直面しています。さらに、老朽化したITシステムの刷新を怠ると、いわゆる「2025年の崖」によって、日本全体で2025年以降、年間最大12兆円もの経済損失が生じる可能性があると指摘されています。製造業の多くは、DXの必要性を認識しつつも、高額なITツールやシステムへの投資に躊躇したり、高額のシステムを導入したものの、現場でほとんど活用されなかったりして、自社の複雑な現場にマッチするシステムが見つからず、付加価値生産性の向上に伸び悩んでいるのが実情です。
中小製造業8社が全国から集結し、中小製造業のための生産管理システム「TED」を共同開発。「TED」の導入支援も手掛けている、プロフェクト株式会社の事例をご紹介します。
「最適なシステムがなければ、自分たちで創ればいい」――8人の共同設立者がたどり着いた答え

プロフェクト社が設立されたのは2005年。生産管理システムの勉強会で出会った、岩手から鹿児島までの中小製造業8社の経営者たちが共同出資して立ち上げた岩手県の会社で、生産管理システムの開発から販売までを手掛けています。
既存の生産管理システムは、付加価値生産性向上が捉えにくいため、多品種少量不規則生産、度重なる予定変更が発生する中小製造業の現場の実情に即していないのが現状です。
2007年から関わりのある大手機械メーカーに、社員一人1台のフル機能システムへの更新を相談したところ、10億円近い見積もりが提示されました。当時、プロフェクト社内では生産管理システムに2億5,000万円を投資しており、これ以上大手ベンダーを頼っていては、自分たちの目指す製造業の変革は実現できないと痛感。ワンタッチで動かせるなど、製造現場が本当に求める機能が備わっていること、1人1台の端末導入が可能なコスト、継続的なサポートが受けられること。3つの条件を兼ね備えたシステムを自社で開発しようという結論に至ったのです。
生産管理システム「TED」がもたらしたさまざまな成果

プロフェクト社は、参画企業8社が持つ豊富な知見を盛り込んだ、クラウド型生産管理システム「TED」(Total Engineering Design)を2015年にリリースしました。企業ごとに大規模なカスタマイズを必要としていたり、特定の企業・業種向けに開発されていたりする従来のシステムとは異なり、どんな企業でも導入しやすい価格設定・仕様になっています。ペーパーレス化や経営陣の迅速な意思決定をサポートすることはもちろん、「TED」から得られるデータにより、業務の非効率な部分の可視化と在庫管理の最適化、現場と経営陣とのスピーディーな情報共有ができます。また、より柔軟な働き方が実現し、従業員のモチベーション向上、人材確保にも貢献します。
中小企業の業務改善に取り組んでいた、静岡大学情報学部(当時)の田中宏和教授をはじめ、さまざまな企業や機関と連携しながら開発を進め、実証実験とシステム改修を繰り返すことで、自らが求める理想のシステムを形にしていったのです。
現在では、開発に参画した8社以外にも導入が進み、約40社弱の企業が「TED」を活用して自社のDXに取り組んでいます。「TED」は、ユーザーからのフィードバックをもとに月に1度の頻度でバージョンアップを重ねており、常に進化し続ける共創パートナーとして企業の成長を支えています。

成功事例としては、参画企業の一社である鬼頭工業株式会社では、データの入力や検査、会議にかかる時間を大幅に削減し、1日あたり合計480分もの工数削減を実現。
また、株式会社広島メタルワークでは、「TED」導入後、1人時間あたりの売上高が29%増加した他、不良の発生原因を徹底的に管理する機能により、年間の不良損金額が97%減少。この事例は、経済産業省の「DXセレクション2024」優良事例に選定されました。
「管理に独特はない」――成功体験を共有するユーザー目線の徹底した伴走支援

中小企業の経営者の多くは、「うちの管理は特別だから」と口を揃えます。
導入にあたっては、実際に導入している企業や開発に携わった、プロフェクト社の参画企業が運用支援するなど、成果を出すまで徹底した伴走支援を実施。具体的には、導入を検討する経営者に対して、「企業ごとに持つ技術は特殊だけど、生産管理に特別はない」と、プレゼンのときに説明し、「TED」を導入している企業の工場見学会への参加を推奨しています。導入後もシステムを実際に使っているユーザー目線でのきめ細やかなサポートを提供しており、「ユーザーによるユーザーのための伴走支援」こそが、他社には真似のできない独自の価値を生み出しているのです。
「TED」はDXの成功事例の横展開を目的に開発されたシステムですが、多様なメーカーの商品と販路などでぶつかることも多く、なかなか横展開が進んでいないのが現状です。最初の説得の段階をクリアすると、「TED」の活用が広がっていくとプロフェクト社は考えています。
板金業から他業種へ――日本の「ものづくり復権」を目指す「TED」の未来

従来のものづくりDXは、受注の範囲、発注の形態が地域性や顧客先によって変わってくるので、他社に転用しにくく横展開性が低い点が課題でした。プロフェクト社は岩手から鹿児島の中小製造業が集まっているので、各地域の習慣や業界の特性などが全て、「TED」に反映されています。
「TED」の開発に参画した8社はすべて板金業であったため、同業種への「TED」の展開を主軸に進めてきました。現在では鍛造や食品系といった他業種への導入も進んでおり、そこで得られる新たなフィードバックをシステム改善に活かし、さらなる横展開の可能性を追求していく計画です。
プロフェクト社の活動は、「いわてデジタルトランスフォーメーション大賞2023」で企業連携賞を、「TOHOKU DX大賞2023」で優秀賞・東北経済連合会 会長賞をそれぞれ受賞しており、徐々に評価されつつあります。プロフェクト社は今後も、中小製造業のための生産管理システム「TED」を活用し、付加価値生産性の向上を図っていきながら、業界の内側から日本の「ものづくりの復権」という大きなテーマに挑戦し続けています。
まとめ
プロフェクト株式会社は、大手ベンダーのシステムに限界を感じた全国8社の中小製造業が、「現場の叡智」を結集して、生産管理システム「TED」を共同開発した企業です。当初から他の企業でも使えるよう、高い横展開性を志向。導入したばかりの企業には、開発に関わった企業や導入企業が徹底した伴走支援を行うことで、「使えると思って導入してみたけど、うちには全く合わなかった」という、大規模なシステム導入を実施した企業が陥ってしまうDXの罠を回避。導入企業では生産性向上などの劇的な成果を上げています。
全国に中小製造業は板金企業だけでも約3万社あるとされます。ユーザーからのフィードバックを反映した機能改善やシステムの認知度向上、「TED」導入の推進を続けることで、プロフェクト社が目指す日本の「ものづくり復権」に寄与することでしょう。