製造の現場では、手袋やガムテープ、マスク、工具など、製品には直接使われないものの製造過程では必要不可欠な備品が数多くあります。在庫切れになったときのことを想定して多めに発注したり、逆に発注をかけるのを忘れてしまったり、いつも注文していた商品が生産中止になって発注できなかったりと、備品の調達はさまざまなリスクが横たわるだけでなく、時間も人手もかかる業務といえます。また、備品が適切に管理されておらず棚卸で数が合わない、商品ごとに調達のプラットフォームが複数あって注文に困るなど、調達担当者の悩みは尽きません。

こういった間接材調達における問題に対して、ミスミでは、製造過程で必要な備品の仕入れ=間接材調達を効率化させコスト削減に貢献する「MISUMI floow(フロー)」を展開しています。

製造現場に放置された、間接材調達における「非効率」

製造現場に放置された間接材調達の非効率

日本の製造業は今、「量」から「質」へと転換する大変革期にあります。「ジャパンアズナンバーワン」と呼ばれた1980年代、日本の競争力は豊富な労働人口と長時間労働という「量」に支えられていました。しかし2020年代、少子高齢化が加速し労働人口はピーク時の半分に減少。働き方改革により長時間労働に制限がかかるようになり、人手・時間不足が顕在化したことで「2025年の崖」といわれる問題に直面しています。人手不足は事業縮小や廃業に直結する深刻な問題となっており、競争力の源泉は付加価値の高い業務にいかに人手と時間を集中させるかにかかっているのです。

製造工場で調達するのは、ハンドルやタイヤなど製品に使用される「直接材」、製造工程で使用される手袋や工具などの「間接材」です。直接材は種類が少なく購買量が多いため、すでに高度に自動化・システム化が進んでいます。一方、間接材は種類が多く購買量が少なく発注も不定期という特性から、システム化のインセンティブが働きにくく、DXが進まず改善が放置されてきました。

間接材調達にかかる業務時間の実態

ミスミの調査(導入検証を行った企業5社における1ライン当たりの平均時間から算出)によれば、間接材調達に関わる業務は1工場当たり年間約1,656時間にのぼります。現場から上がってくる手書きの注文申請、約20社にわたる発注先管理、1日300個口の荷物処理、約6,000点の在庫管理――。これらは本来、工程改善や品質向上、次世代人材育成といった付加価値創造に充てられるべき貴重な時間です。この結果、製造現場では都度の注文対応、荷物の開梱・検品・配膳作業、膨大な棚卸作業といった非効率な業務が日常化しています。

こういった背景から、労働時間に対する相対的価値の高まりとともに、時間も人手も必要な従来の間接材調達方法からの転換が求められています。

MISUMI floow――利用頻度ごとに分けられたチャネルが実現する間接材のトータルコストダウン

MISUMI floowのサービス概要

2025年4月、ミスミは3DデータのみでAIが自動見積もりをする「meviy(メビー)」、低コストでちょうどいい品質を追求した「エコノミーシリーズ」、大量注文でも納期調整や見積もりの待ち時間をゼロにする購買革新サービス「D-JIT(ディージット)」に続くデジタルモデルシフトの第4弾として、間接材のトータルコストダウンサービス「MISUMI floow」を提供開始しました。

利用頻度ごとの3つのチャネル

顧客の需要データを分析し、在庫量を可視化することで、調達担当者の発注・管理・棚卸などの手間を省きます。調達時間を約7割削減し、利用頻度ごとに間接材を最適な以下の3つのチャネルにて提供することで、間接材の適切な在庫管理を実現します。

  • 高頻度使用品:製造現場にfloow自販機を常設し、必要な時にいつでも商品取り出しが可能な仕組みを提供する。ミスミが商品を補充するため、顧客側での在庫管理は不要。使った分だけ後で支払う「富山の置き薬」方式にてサービス提供する。
  • 中頻度使用品:定期便配送で発注の手間を削減する。ミスミが需要データを分析し、最適なタイミングで最適な量を配送するため、現場の発注業務は発生しない。
  • 低頻度使用品:ミスミのECサイトや専任窓口にて迅速に見積回答する。都度発生する特殊な需要にも、ミスミの豊富な商品群と専門知識で対応する。

MISUMI floowでは、VMI(Vendor Managed Inventory、ベンダー管理在庫)による在庫負担ゼロを実現。手袋や工具などの高頻度使用品は、工場や事務所に常設したfloow自販機で管理します。利用の際は顔認証またはIDカードでログインし、必要な時に必要な量を取り出すだけです。自販機内の物品はミスミの資産なので、現場では間接材の在庫補充、管理、発注、棚卸不要(=管理レス、発注レス、棚卸レス)です。リアルタイムで部署または個人単位で使用量を確認できるダッシュボードにより、誰が・いつ・いくつ取り出したかが可視化されるため、経営の透明化にも寄与(不正レス)。MISUMI floowの導入で創出できた時間により、現場の改善推進や梱包材削減、配送合理化による環境負荷低減など、働く人のウェルビーイングにも貢献します。

導入企業の実績と声が示す、製造現場の大きな変化

MISUMI floowの導入効果は、複数の導入工場の実績で実証されています。本格ローンチ前に、日本では約50社の工場に試験導入を1年間実施し、さまざまな検証を重ねてきました。

導入企業の実績データ

試験導入した工場のデータを分析したところ、間接材調達に関わる業務時間は、トータルで1,656時間、約150日分に相当する労働時間がかかっていました。また、自社で間接材の在庫を抱えていたので、現場から上がってくる紙での申請依頼を処理する時間、調達や商品受け入れ、在庫管理にも時間と人手が必要でした。ミスミが棚卸や在庫管理も一手に引き受けるので、発注申請や棚卸の時間が不要になり、年間約1,219時間削減(導入企業5社における1ラインあたりの平均時間から算出)できました。

他にも、「購入先をミスミに絞ったことで購入価格の平準化や在庫管理の業務効率化を実現できただけでなく、管理コストを年間1,900万円、発注業務は80%減少した」「現場から急いで頼んでくれと言われることがなくなり、在庫管理もいらないから無駄な廃棄物も出なくなった」「在庫管理のプレッシャーから解放された」など、トータルコストダウンのみならず時間創出やメンタルコスト削減を評価する声が寄せられています。

ミスミが徹底する顧客視点×他業界との協創が目指すMISUMI floowの未来図

ミスミが目指す未来図

ミスミでは、現場に近い顧客視点(=MISUMI floow)から収集した年間400件ほどのVOC(Voice Of Customer、顧客の声)をもとに、MISUMI floowのサービス進化にも取り組んでいます。例えば「工場内で、現場に周知したいことがある」といった声に対しては、floow自販機のモニターを使って、デジタルサイネージの機能を追加したり、「在庫が少ない時に商品取り出しが不安」という声に対しては、次回の補充日をモニターに掲載したりと、徹底した顧客視点でサービスを進化させています。もともとMISUMI floowも、顧客にMRO商材と付加価値、両方を同時に提供できる方法を考えた結果、生まれたものです。

顧客視点でのサービス進化

部門間の情報断絶、現場の無理に依存、至るところに無駄が発生している「べき」論によるノンコア業務は、長く製造現場に根付いています。MISUMI floowの導入により、こういった文化からの脱却を図り、トータルコスト削減、輸送量の削減、過剰梱包や余剰在庫をなくして環境負荷を低減します。時間の創出によって、顧客企業の社員の健康や幸福感の向上にもつなげていきたいと考えています。また、間接材調達のDX化により、社会的責任と環境への配慮、企業の持続的成長に貢献します。

MISUMI floowの全体像

DXを通じて、幅広い業種の社会的課題解決を実現し、顧客とミスミの協創により、新たな持続的価値創出とモデル進化に今後も取り組んでいきます。具体的には、アジア諸国へのグローバル展開と、物流・食品といった他業種への浸透を図り、量産工場への価値提供をさらに拡大します。

まとめ

MISUMI floowは、製造現場が抱える間接材調達の課題に対して、3つの最適なチャネルで提供するサービスです。高頻度使用品には、「富山の置き薬」をヒントにしたfloow自販機で、在庫もミスミが管理するので顧客側が余剰在庫を抱えたり棚卸をしたりする必要がなく、取り出した分を月ごとに請求します。中頻度使用品には定期便発送、低頻度使用品にはECサイトでの迅速回答・発送を採用しています。試験的に導入した企業では平均して年間1,656時間を削減し、現場に年間150日分の付加価値時間を創出した結果、間接材調達の課題解決だけでなく、時間創出による従業員の心身の健康、環境への貢献を同時に実現しました。MISUMI floowは今後、日本の他の業種や海外展開が検討されており、サービス自体もさらに進化していくでしょう。