デジタル技術を活用した効率化と情報共有の実現に取り組みながら、鹿児島の価値を全国に発信している、株式会社オービジョンの事例をご紹介します。
鹿児島県の生産者と消費者をつなぐ、プラットフォーム構築の必要性

株式会社オービジョンは、「鹿児島の生産者の明るい未来を創り出す」を企業理念に掲げて2019年10月に鹿児島市で創業。ECサイト『かごしまぐるり』運営を中心に、メディア運営、コンテンツ開発と、多角的に事業を展開しています。最近では、フルーツマーケットなど、生産者と消費者が直接触れ合えるオフラインイベントの開催にも力を入れています。
鹿児島県の、令和4年度における農業産出額は北海道に次いで全国第2位となっており、野菜やお茶、畜産などがよく知られています。しかし、鹿児島の農産物をより多くの消費者に知ってもらうためのプラットフォームがなく、生産者としても販路を拡大したいが時間がなくて手が回らない、デジタルが苦手だが誰かに任せたくてもコストをかけられないなどの理由から、インターネットを介した販路拡大が困難な状況でした。
そこで、生産者には農業に専念してもらう代わりに、オンライン・オフラインでの販促活動やPRを一手に担うべく、株式会社オービジョンは「かごしまぐるり」プロジェクトを立ち上げました。
オンラインとオフラインのコミュニケーションを大切にする、オービジョンの体制
オービジョンでは、生産者のインタビューで得た情報や作成したコンテンツを、社内のシステムに即時アップして全社員で共有しています。ユーザーの行動履歴や購買履歴、コンテンツや商品へのセッション、流入経路をデータとして可視化することで、社内で共有することはもちろん、生産者に提案できることが大きな強みです。全国のターゲットにリーチするため、PRにはSNSで積極的に発信している他、Web広告や動画コンテンツも活用しています。
コミュニケーションを大切にする~多様なメディア活用
「かごしまぐるり」の最大の特徴は、オービジョンの社員が鹿児島県内の生産者を直接訪問し、生産者の人となりや商品へのこだわりなど、商品の背景にある物語を発信していることです。オフラインのコミュニケーションを取りながら、各種SNSやかごしまぐるりのnote、生産者のインタビュー記事や寄稿記事を集めた「かごしまぐるりよみもの」など、多様なWeb媒体を駆使することによって、情報発信しています。また、生産者への連絡は、LINEに専用の窓口を設けることでスピーディーにやり取りができています。
独自のアプリ開発による受注処理の自動化

ECサイト販売を展開する中で、ユーザー対応が増えていき、受注処理作業が煩雑になってきていました。そこで、独自のアプリ開発によって受注処理を自動化することに成功。結果、1日あたり3.5時間程度かかっていた作業時間を、1時間縮めることができました。各種SaaSの導入や自社独自開発のアプリ活用により、業務効率化を実現しました。
部門ごとに最適なデジタルツールを選定

オービジョンのデジタル化は、管理部門や全社横断のデータ共有プラットフォーム、受注管理、運営管理など、各部門や業務の特性に応じて最適なデジタルツールを選定しています。ツールの導入に関しては、実際に使用しているスタッフから使用感や実際の問題点、改善点のフィードバックをもらいながら日々見直しを行っています。さまざまなクラウドサービスを活用し、円滑な情報共有を可能にしています。
鹿児島の魅力をもっと多くの人に広げていくために

スタッフに対しては、オンラインサービスを積極的に活用したリスキリングも推奨。緊急時には出社からテレワークに切り替えるといった、働き方の柔軟な対応も可能です。オービジョンでは、社員数は11人と少ないため、心理的安全性が担保された職場で、自分のスキルや個性を活かしながら働ける環境整備が大切だと考えています。そのためにも、仕事を属人化しないこと、クラウドサービスやSaaSを用いながら業務の仕組み化や効率化を進めること、誰もが自由に意見を言い合えて情報共有できる環境維持を心がけ、今後も社員のワークスタイル改革に注力していきます。
オービジョンの取り組みは、鹿児島県内の多様な団体から認定や表彰を受けています。現状に満足せず、社員や生産者が効率良く情報共有できるよう、これからも情報共有や業務の効率化に引き続き取り組んでいきます。鹿児島には、知られざる魅力がまだまだたくさん眠っています。「かごしまぐるり」や、さまざまなメディアを通じて、オービジョンはこれからも鹿児島の魅力を発信し続けていきます。
まとめ
オービジョンは「かごしまぐるり」を通して、オービジョンのスタッフと地域の生産者と消費者をデジタルでつなぎ、生産者との密接な関係構築から生まれるストーリーをさまざまなSNSで配信することで、独自の価値創造を実現してきました。また、受注処理を独自開発したアプリで自動化し、分析ツールやWeb広告の活用による集客を実施している他、部門ごとに最適なツールを選定。これらの要因により、スタッフや生産者の働き方も変革しました。
オービジョンの取り組みは、地域に根ざしたスタートアップ企業におけるDX活用の新しい形を提示するとともに、地方創生のモデルケースとして、今後さらなる注目を集めることでしょう。
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