DX事例

【大阪産業大学 / くるみ幼稚園】卒業研究は「幼稚園園務DX実証実験」プロジェクト

日本DX大賞は、日本のDX推進を加速するために、事例を発掘し共有するためのコンテストです。自治体や民間企業などが取り組んだDX推進プロジェクトを表彰し、それぞれの部門で大賞を決定します。

2022年6月21日に行われた「官民連携部門」より、大阪産業大学と、岐阜県のくるみ幼稚園が共同研究に取り組む「幼稚園のDX」について、取組内容と成果をご紹介します。

学校法人大阪産業大学の概要

■法人名:学校法人大阪産業大学 
■事業内容:教育事業(大学・大学院、中学校・高等学校の運営)
・大阪産業大学
・大阪産業大学附属高等学校
・大阪桐蔭中学校高等学校
■設立:1928年
■公式Webサイト:https://www.osaka-sandai.org/

学校法人 今小路学園 くるみ幼稚園の概要

■法人名;学校法人 今小路学園
■事業内容:幼児教育
■設立:1963年3月
■公式Webサイト:http://kurumi1963.ed.jp/

幼稚園のDX

大阪産業大学では2012年度から卒業研究活動の支援ツールとしてkintoneを使っています。2017年にその成果をサイボウズ社のイベントで発表させていただきました。
2018年度からはkintoneを活用した幼稚園DXを卒業研究のテーマとしてきました。

一方、くるみ幼稚園は昭和38年創立、今年度で60周年を迎えます。浄土真宗本願寺派のお寺の幼稚園として幼児教育を行ってきました。なぜ、大阪産業大学と共に幼稚園DXに取り組むことになったのかを説明します。

岐阜県内の幼稚園・保育園は以前より園のIT化、園務推進システムの導入を図りたいと考えていました。しかし、個々の園で困っていることは別々であるため、実際にシステムを導入することにハードルを感じていました。

そこで縁あって大阪産業大学が共同研究に取り組むことになりました。

ICカードリーダーの活用や、GPSで幼稚園バスの位置を探す仕組みなどのプロトタイプを
作り、まずは岐阜の大垣幼稚園に提案しました。

大垣幼稚園ではイベントの申し込みが、すべて園長先生のメールに届いてしまい、園長先生がメールを見なければイベント申し込みが滞る問題を抱えていました。そこでGoogleフォームとkintoneを連携し園長先生をメールから開放する仕組みを作りました。

同年、くるみ幼稚園からも課題をヒアリングすることになりました。

くるみ幼稚園で抱えていた課題:「預かり保育のお迎え」「料金計算」

くるみ幼稚園で困っていたことは、毎日の預かり保育のお迎えです。

幼稚園は朝10時からお昼の2時半までが1日の過程です。しかし、両親とも働いている方々も多く、そのまま子どもたちを帰すわけにはいきません。そこで預かり保育として2時半以降
7時まで子どもたちを預かります。多くの園児はバスで送迎しますが、預かり保育の場合は
保護者にお迎えに来ていただきます。

そこで、先生の人手不足という大きな課題を抱えていました。

保護者がお迎えにやって来て、園のインターホンを押しますが、ちょうどバスで送っている時間、職員数が少ない時間で先生たちは大わらわです。タイムカードで迎え時刻を記録する のですが、そこでも、タイムカードの取り違えなどさまざまなトラブルが起きます。
それでも、先生たちは人手が足りず、スピーディーに対応できません。

そこで、預かり保育管理システムを導入しました。 

保護者が園へ迎えに来ると、インターホンを押す代わりにICカードをタッチします。
職員室にはスイッチボットが設置されていて、保護者が園内に入るための解錠をしてくれます。

次に保護者は、職員室の前でもう一度ICカードをタッチします。タイムカード代わりです。ここでタッチされたICカード からどの園児のお迎えが来たのか、教室のディスプレイに表示します 。教室内のモニターには当該園児の名前が表示され、先生方はこれを見るだけで、
帰り支度ができます。保護者は、ICカードをタッチする動作だけで済むようになりました。

保護者からも「混雑時でもスムーズに進むのがいい、とても便利」という声を頂いています。

さらに、預かり保育に付随して大事な業務があります。
毎月預かり保育の料金計算をします。これまでタイムカード1枚1枚をチェックしてExcelに転記していました。多い時で120人分ほどにもなり、約半日かけて料金計算していました。 

それを今は、kintoneからデータをダウンロードして、Excel シートに貼り付け、
ピボッドテーブルを操作するだけで、あっという間に計算できるようになりました。 

「人」が主体のDXにこだわる

大阪産業大学の「幼稚園業務のDX」研究では、あくまでも人が主体です。幼稚園に限らず、なかなかDXが実現できず日々の仕事に行き詰まっている方は多いと思います。

そんな方々こそ「今までの仕事ができるだけ変わらないようなシステムを導入すべき」という仮説を立てました。 

「自らの手で情報システムを創り、業務改善に至る要因は何か…?」―今回事例を挙げた、大垣幼稚園、くるみ幼稚園へのシステム納入は、これを明らかにするための活動です。

今後の展望

くるみ幼稚園からは、今後に向けて「ICカードをどうしても忘れてしまう保護者がいるので、できれば顔認証を導入したい」「先生たちは教室内にずっと居るわけではないので、
教室外でも誰の迎えか分かるようにしたい」といった声があがっています。

これを大阪産業大学では、骨伝導イヤホンやスマートウォッチで実現したいと考え、実験を始めています。

また、大東中央幼稚園(大阪府大東市)でも、 2022年5月から預かり保育管理システムを導入、保護者が迎えに来てICカードをタッチした際、合成音声の館内放送で伝える仕組みにしています。

まとめ

情報システムで業務改善されるにもかかわらず、さまざまな事情で情報システム化に踏み切れない方がいらっしゃいます。その方々に、導入負担の少ないシステムを提供します。

業務改善の意識が向上し、ご自分で情報システムを創り、さらに改善につながる要因を明らかにして行きます。

今後もくるみ幼稚園をはじめ、大垣幼稚園、大東中央幼稚園と実証研究を続けてまいります。