事例

【株式会社ヌボー生花店】地方の花屋がDXに奮闘、“三方良し”で競争力向上 

全国中小企業クラウド実践大賞とは、クラウドを活用して新規事業創造、収益向上、業務効率化を実現した中小企業等の実践事例を発掘し、広めていくためのプロジェクトです。2022年10月12日に行われた「関東・信越大会」より、生花店のDXで競争力向上を実現した、株式会社ヌボー生花店の取り組みと成果をご紹介します。

株式会社ヌボー生花店の概要
■法人名:株式会社ヌボー生花店
■事業内容:生花ギフト事業、空間装飾事業、ウエディング装飾事業、葬祭装飾事業、
                     グリーンレンタル事業、造園事業、人工芝施工事業、Café事業
■設立:1988年4月
■公式Webサイト:https://nubow.co.jp/

ライフステージの変化に対応できる働き方にしたい

7年前のある日、ある優秀な女性社員が私に言いました。

「結婚することになりました。旦那の仕事で長野県松本市へ引っ越します。だから、6ヶ月後に退職します」

現場仕事が中心の花屋であっても、ライフステージの変化に対応でき、女性社員が働き続けられる環境を整えることができないだろうか…?そんな会社でありたいと強く願い、そこから私の挑戦はスタートいたしました。

ヌボー生花店は創業1974年、現在私が2代目の社長を勤めております。 長野市内に3店舗の花屋があり、売上2億6000万、社員13名、パート従業員10名、社員のうち9割が女性、平均年齢35歳という、至って普通の地域の花屋さんです。

今回ここでお伝えしたい私のメッセージは

・小規模事業者であっても、やり方次第で従業員に対して多様な働き方を提供できる
・多様な働き方の実現が、企業の「稼ぐ力」を向上させることができる
・小規模事業者こそ、DXが武器となる

ということです。

 我々は、独自開発したシステムは、一切持っておりません。これからお伝えする我々のDXの取り組みは、実現性・再現性の高い施策なのでは?と思っています。

「三方良し」を目指して

私の経営理念は「三方よし」で「買い手よし、売り手よし、地域よし」を理念にしております。冒頭で述べた女性社員から話があった際、「女性が活躍できる、女性が働き続けられる環境作りに貢献できないだろうか?」という想いを抱き、DXに取り組んでまいりました。

まず取り組んだこと

まず取り組んだことは、「退職しよう」と思っている女性社員に対して、「リモートワークをできる環境を整えるから、続けてもらえないでしょうか?」という説得です。

中小企業にとって、新たな事例を作ることは、一番大変なことではないでしょうか。この説得も、時間を要しました。3ヶ月かけてなんとか説得をした上で、リモートワーク可能な社内業務を一つ一つ洗い出していき、独立して業務が成り立つ分野から、徐々にリモートワークをスタートをさせていきました。

7年前は、まだまだリモートワークはそれほど広がっていませんでした。そのような中、私は「DXをする」ことを目的としていたのではなく、「女性が働きやすい環境作り」という想いの下、取り組みを継続してきました。

導入したクラウドツール

当時、徐々に導入していったクラウドツールの一覧です。
今でもこれらは全て使っています。 

社内コミュニケーション、社内のデータ共有、独立してできる会計財務業務からリモートワーク化していきました。例えばマネーフォワードを活用して給与勤怠の業務、スマートHRを使ってすべての労務を電子化、取引先への支払い業務をすべて電子化し、リモートワークができる環境を徐々に整えていきました。

ITツール導入で大事にしていること

我々はITツール導入の際、大事にしている考え方がございます。
それは「小さく始めて、大きく育てる」というものです。

汎用的なクラウドツールの最大の利点は初期費用が安く、かつ月額費用も決して高くない点です。「とにかく失敗を恐れず、どんどんやってみる」という考えで進んでまいりました。数々の失敗もあり、導入に至らなかったツールもたくさんあります。

その中で生き残ったのが前掲のツールで、徹底的に社内に浸透させて使い倒しています。
ツール選定の際は、「複数ツール間の連携」と「導入率が高い」という2点を重視しています。

複数ツール間での連携は、業務効率化に直結します。そして、企業での導入率が高いことは、多くの会社にとって汎用的に役に立つ製品である、と捉えています。

業務に合わせてツールを選ぶのではなく、ツールに合わせて業務を変えていく。その方が早く効果を出せることがわかってきました。我々のように小さい会社では、トップ自らが積極果敢に新しいツールを使って導入していく姿勢こそが、非常に重要だと痛感しています。

リモート環境を整えてみて気づいたこと

リモートワーク環境を整える中で、だんだんと気づくことがありました。
リモートワークをしようと思えば、できる業務は山のようにある。

ところが、「現場でやったほうが早い」という理由から、リモート化が見送られていく業務も非常に多い、と気づいたのです。

私は、「これは本当に正しいのだろうか…?」と疑問を抱きました。
中小企業は、1人の社員が複数業務を常にパラレルでやっている状態が、ある意味当たり前・常識です。ただ、「それは固定概念なのでは?」「本当に最適なのだろうか?」と疑問に思ったのです。

「1人であれこれと現場作業を掛け持ちしているのは、お客様から見て、本当にあるべき姿なのか…?」「やはり現場は、接客に集中できる環境を構築していくべきではないのか?」と考えました。

そこで、社内業務をもう一度整理し直しました。

リモートワークチームに業務移管して、現場がクリエイティブな仕事に集中できるようになれば、結果的に売り上げ・利益の向上につながるのではないか?という仮説に沿って、また様々なクラウドツールを導入していきました。顧客管理ツール、 請求・入金管理ツールなどを活用し、お客様に対する対応スピードを上げたり、受注業務の電子化でお客様とのやり取りをよりスムーズにしたり、など新たな施策に取り組みました。

右下に「業務支援」と書いております。
リモートワークチームは最初1人だけでしたが、今は4名にまで拡大しております。各店舗の様々な現場業務を支援し、労働生産力を上げていくことをミッションにした部署で、これが結果的に大きな成果を生むことになりました。

競争力が向上

数字的な成果として、一番は、社員一人当たりの平均給与が7年前(リモートワーク開始前)に比べて1.2倍になりました。今、花業界は厳しい状況です。そのような中でも、安定した利益を叩き出すことができ、かつ平均給与を上げ続けることができているのは、我々にとって非常に自信を持てるポイントです。

また、「ジョブ型雇用」の考え方を取り入れるようになりました。様々な業務を切り分けていく中「これは外部に頼んだ方がいい」「専門人材に頼んだ方がいい」という業務が多数見受けられました。例えば「チラシのデザイン」「SNS運用」「データ入力」といったことです。様々な専門人材を採用し、中には、海外に住む日本人も在籍しています。店頭のパートさんが対応できない時間帯にも、スムーズに業務を進めることができる体制を整えています。

従業員にとっては、働き方の選択肢が増えました。さらに、今の若い人材は、「働き方」も非常に重視して就職活動しております。我々が新たな人材獲得を目指す上で、給与・働き方改善は大きな武器になっています。 

クラウドツールも7年前に比べると非常に進化し、多様な選択肢が生まれています。我々は早くからリモートワーク化したことで、さまざまなツールを導入・定着できるノウハウを既に持っているため、競争力が高まったのではないかと捉えています。

今後の展望

今、私が夢として思い描いていることは、我々のノウハウを活用し、全国各地の花企業を儲かる企業へ変革させていきたい、ということです。

当社のDX奮闘記は、一人の社員の話を発端として始まりました。このような取り組みが全国各地に波及していけば、非常に素晴らしいことだな、と信じております。

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