Fukuoka
全国中小企業クラウド実践大賞は、クラウドサービス利活用を実践し収益力向上・経営効率化したモデル事例のなかから、コンテストにより優れた取り組みに対して総務大臣賞、日本商工会議所会頭賞等を贈るコンテストです。
2020年11月27日に行われた福岡大会より、株式会社ネオマルスの事例をご紹介します。
従業員数の増加にともない、業務改善のために自社業務・システムをクラウド化。業務効率化するとともに、業界のクラウド化を目指して自社開発のクラウドシステムを開発しました。自社だけでなく、業界全体の課題の解決を目指して取り組まれている事例です。
株式会社ネオマルスの概要

■法人名:株式会社ネオマルス
■事業内容 :電気通信工事業・人材事業・IT推進事業
■設⽴:1991年10月5日
■従業員数:282名 (2020年12月現在)※契約社員等含む
■公式WEBサイト: https://www.neomars.co.jp/
株式会社ネオマルスは「人をつなぐ・情報をつなぐ」というテーマをもとに、電気通信工事業・人材事業・IT推進事業の3つの事業を展開する企業。
2020年度で設立から30周年を迎えました。
1.私たちのクラウド活用

株式会社ネオマルスの業績は、これまで順調に右肩上がりで推移。事業の成長に伴い従業員数が毎年増加しています。
IT化を取り組み始めたのは2003年ですが、当時の従業員数はわずか12名。
クラウド化に踏み切ったのはその5年度の2008年。従業員数は約10倍102名になっていました。2020年には292名の従業員数とそこからさらに3倍になっています。
IT やクラウドは変化の手段のひとつでした。「なぜクラウドか」と言うとリソースが限られていたためです。
大分市という立地もあり、人材の採用が非常に厳しかったということもあります。
事業に特化できるように、社内業務の改善を優先的に行うと決定。社内業務の改善を優先的に行いました。その中でクラウドが一つの手段として選択肢になったのです。

業務改善のために、既存のクラウドサービスだけでなく自社でもクラウド開発を行いました。
既存サービス
・サイボウズ:https://cybozu.co.jp/products/
クラウドで動くアプリ作成やグループウェアを提供する
・AWS:https://aws.amazon.com/jp/
Amazonが提供する信頼性と拡張性に優れたクラウドコンピューティングサービス
・Google Workspace(旧称 G Suite):https://workspace.google.co.jp/intl/ja/
操作が簡単な統合型のワークスペース
・Microsoft Azure:https://azure.microsoft.com/ja-jp/
マイクロソフトの管理するデータセンターを通して提供されるクラウドコンピューティングサービス
自社開発
・GoSmart:https://www.neomars.co.jp/products/go-smart/
・ステラクラウド:https://www.neomars.co.jp/products/stella-cloud/
株式会社ネオマルスが自社開発したプロセスマネジメントシステム。
2. クラウド活用の事例
実際に活用したものの事例を一部紹介していきます。

まずは一番最初に導入したのはサイボウズ(https://cybozu.co.jp/products/ )です。
それまではメールが伝達の手段の中心でした。そのため情報量が多く、整理がうまくできていないという課題があったのです。
そこで、社内と社外にメールの機能を分けようということになり、
社内グループで使うものをサイボウズに集約し、通常使っていたメールを社外に分けました。
社員が急激に増え、内部統制が追いつかなかったため、ワークフローを活用し、まずは社内の稟議・決裁をサイボウズのワークフロー機能で対応。
続いてファイル管理機能を活用しました。
各自のデスクトップに保管されていた資料が煩雑になってしまい、どれが最新なのかバージョン管理ができてなかったため、サイボウズに集約してデスクトップをクリーン化しています。
なかでも最も効果があったのは、決裁時間の短縮です。
決裁者が出張が多かったため、これまでは約3営業日ほど決裁に時間がかかることもあったのですが、半日で決裁ができるようになりました。

続いてGsuite(現Google Workspacehttps://workspace.google.co.jp/intl/ja/ )です。
社外向けのメールについては G Suite で導入しています。
また、オンライン会議にMeetを活用しています。現在はコロナ禍でオンライン会議は当たり前になりましたが、当時はサイボウズを全員が使うようになったことで、チャット感覚で様々な情報を書き込むスタッフというのが増えてしまったため、コミュニケーションがうまく取れないということがありました。そこで、社内のオンライン会議を推進するために導入したのがきっかけです。
Google ドライブに関しては、営業資料など外向けに展開する資料に関して、営業先でもすぐ見れるようにということで利用しています。

続いてクラウドサーバーの AWS (https://aws.amazon.com/jp/ )を導入。
もともと社内にサーバーを置いていたのですが、サーバーの老朽化によってデータが飛んでしまうことで業務が停止する リスクを抱えている状況でした。
そこで、拡張性、利便性、耐久性そしてメンテナンスを考慮し、オンプレミスからクラウドへ移行することにしました。
3. クラウドサービスへの挑戦
次に、自社で開発したクラウドサービスについても解説します。

ここから自社サービスのクラウド化にも挑戦することになります。
全国の電気工事組織は約約600社の工事のネットワークを持っており、そこをつなげるために独自のシステムを作っています。
自社だけのシステム化では、このような多重下請けのタイプの業界において、発注者・受注者・現場作業者の課題の解決にならないということが大きな課題でありました。

そこで、関連する会社を含めて利用してもらおうと、ステラをクラウド化しました。
取引先には無償提供、同業他社でシステムのみ使いたいところにはサブスクリプションで提供しています。
AWS を導入していたことによって、サーバー自体をクラウドサービスに移行できていたので、自社のシステムを外部提供することに関してはスムーズにおこなうことができました。
課題解決

しかし、その中でも課題はありました。
まずクラウドで提供するためにはセキュリティ面に不安があったのです。
中小企業は、セキュリティの問題が一つでも起きると仕事が一瞬にしてなくなるという大きなリスクを抱えています。
提供するクラウドサービスを安心して発注いただけるようにと
・ISO 9001(https://www.jqa.jp/service_list/management/service/iso9001/ )品質マネジメントシステムに関する国際規格を2008年に取得
・ ISO 27001(https://www.jqa.jp/service_list/management/service/iso27001/ )
(情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)に関する国際規格。情報セキュリティのリスクアセスメントおよびリスク対応について)を2010年に取得。
運用については各部門から代表者を集め委員会を設置、内部監査だけでなく、外部監査を受けており、体制の構築に努めています。

ステラクラウドの導入時の留意点としては「使えるもの」としてまず認知してもらうことです。
「使えるもの」になるためには、便利に感じていただくということ、つまり、なくてはならない、必要であると思っていただかなくてはなりません。
これらを意識して、解説にあたり説明や改善、PDCAサイクルを回し続けることで、常に良いものを追求し続けて、改善を重ねています。

そうして完成したのが、業務に関わる全ての立場で「見える化」を提供できるシステムです。
管理者目線や現場目線、それぞれの立場で見たい情報が異なります。立場に応じて使いやすいように画面を作りました。

社内にはモニターを設置。現在の電気通信工事業の受注の状態や進捗状況について、いつでも管理者から見えるようにしています。

ステラクラウドの利用が広がるにつれ、利用者からの要望も出てくるようになりました。
例えば「全ての発注をステラクラウド経由にしてほしい」「スマートフォンからも使いたい」等です。

いただいた要望で改善したものを紹介しましょう。
「スケジュールを提供するので、空いている時間に仕事を入れておいて欲しい」という要望です。こちらは対応完了しました。

次に「電話報告を、クラウドシステム経由で報告できるようにしてほしい」ということです。こちらも対応完了しております。

こうして、全国工事組織と株式会社ネオマルスにおいて、互いの得意なところをシステム活用によりシェアリングできる関係を構築できるようになりました。
4. サービス拡張

現在、ステラクラウドは、新たなチャレンジに向かって進んでいます。
利用者の方とディスカッションを重ね、サービス拡張へのキーワードは以下の3つに絞りました。
・高画質画像:作業発注のための必要情報提供
・デジタルコミュニケーションに:作業レクチャーや手順の標準化
・ワンストップサービス:材料の購入

これからは、5Gの時代です。
現在はステラクラウドで行っている既存のビジネスモデルもこれからは変化します。

新たな市場へ向かって、キャリアやECサイト、ホームセンターなど様々なオンラインサイトとAPI連携でつなげていきたいと考えています。
さらに、マッチングやシェアリングを行うための新たなシステム・サービスを作ることも考えています。

API技術を活用し、ECサイト・メーカーサイトなど、いろいろなものをつなぐことができます。原料を購入したお客様がAPIを経由して直接工事会社に依頼するなど、API連携を活用したエコシステムも夢ではありません。
5. おわりに
現場に近い中小企業は、エンドユーザーに関わる時間が最も長いです。
ITやAIの技術がどのように発展しようとも、未来を築くのはやはり人ではないでしょうか。
株式会社ネオマルスでは、これからも「人」を支えるクラウドサービスを活用し続けていきたいと考えています。
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