Fukuoka
全国中小企業クラウド実践大賞は、クラウドサービス利活用を実践し収益力向上・経営効率化したモデル事例のなかから、コンテストにより優れた取り組みに対して総務大臣賞、日本商工会議所会頭賞等を贈るコンテストです。
2020年11月27日に行われた福岡大会より、株式会社ロゴスホームの事例をご紹介します。
コロナ禍においてsalesforceの導入によるCRMとMAの展開により、広告の紙媒体からウェブへのシフト、広告費を削減しながらも反響・商談・成約を大幅にアップしました。また営業活動の自動化により業務を効率化。クラウドサービスの活用でリモートワークへの移行もスムーズに行っています。人口減による住宅着工数減少をどのように乗り切ろうとされているのでしょうか。
株式会社ロゴスホームの概要

■法人名:株式会社ロゴスホーム
■事業内容 :
・住宅部門
住宅の設計・施工・販売
・不動産事業部門
土地の売買・仲介・斡旋
・リフォーム部門
戸建て住宅リフォーム・リノベーション、マンションリフォーム・リノベーション
■設⽴:平成15年6月3日
■従業員数:265名
■公式WEBサイト: https://www.logoshome.jp/
株式会社ロゴスホームは平成15年に北海道帯広市に創業した住宅メーカー。
北海道の中でも特に自然環境が厳しい十勝エリアにおいて、より快適に過ごせる住宅技術と、給与水準がけっして高くない現地企業に勤めている人たちでも手が届く価格を両立させることで、エリアのシェア7年連続ナンバーワンを達成しています。
ミッションは「家づくりで幸せな家庭を世の中に増やす」です。

順調に成長に続け、全道でも3番手。
11店舗を展開し、順調な成長曲線を描くことができています。
住宅着工棟数の推移(予測値含む )

しかし、住宅産業は衰退産業。住宅着工棟数の予測推移はどんどん減っていきます。
日本の人口推移(予測値含む )

そして、日本の将来の人口推計を見ると、こちらも人口はどんどん減っていきます。
「生産年齢」と言われる64歳以下の人口は特に急減。
それはもう住宅着工数の数も減って当たり前であり、住宅メーカーは大きな危機に立たされているのです。
住宅業界における今後の生存戦略

住宅業界の危機にとって、今後取り組むべき課題もある程度は明白です。
つまり、あらゆる部分の効率化とストック型ビジネスの導入・強化が必要となります。
この2点を強化するために行き着いたのが、クラウドの取り組みです。
中でも、今回解説するのが、この二つの課題を横断的にケアできる顧客関係管理つまりCRM となります。

住宅業界の営業フロー
住宅業界の営業フローを見てみましょう。
まずは市場に対する認知を得てから、集客、商談、契約を経てその後工事、アフターサービス、その後、お客様からリフォーム工事や設備更新を受注するという流れです。
現在、使用しているCRMシステムは、工事の進捗以外全ての野に関与しています。CRM 分野で導入しているのは、営業支援に特に強い Salesforce (https://www.salesforce.com/jp/ )です。
コロナ禍における現状

具体例に入る前に、コロナ禍における株式会社ロゴスホームの状況を解説します。
コロナ禍は住宅業界を直撃していますが、これまでのところは好調な数字を上げています。
前年比で反響数は150%、商談数は180%、そして成約数は152%です。
成約については、反響からタイムラグがあるため、これから数字がさらに伸びる予定です。
コロナ禍において好業績をあげるために、Salesforce は大きな役割を果たしています
縮小する市場に効率的にアプローチ Salesforce を用いた広告費用対効果の測定
導入前の状況

マーケティング担当者として真っ先に対応したのは広告投資の効率化です。
縮小を続ける市場に対して、いかに効率よく広告投資を行ってリーチするかは極めて重要な改善分野です。
しかし、ご覧の通りExcel管理の際は膨大な手間がかかる割に、二次利用・三次利用はとても難しい状況でした。
こんな実装を行いました

現在はこのようなスキームに変更しています。
アカウントがないために Salesforce に直接データを書き込めない間接部門スタッフなどは、Google スプレッドシートを通して各店舗のキャンペーン情報を一元化して入力してもらいます 。Google スプレッドシートには、 Salesforceと直接データをやり取りする機能が付いていますので、そのままデータを取り込むことができるのは、クラウドシステム同士の強力なメリットです。

Salesforceにインポートした広告の実施時期や予算などの情報は、 Salesforceの顧客情報と結びついて、最小の労力でキャンペーンごとの費用対効果を高い精度で図ることができるようになっています。
こんな成果を計測しています

北海道地方では未だ紙媒体が強く 、広告のデジタル化は進んでいませんでした。
しかし、コロナ禍でどうしても集客モデルの変革をしなくてはならず、一気にデジタルシフトを進めました。
昨年の9月には77対22で紙が多かったのですが、今年の5月には66対34とデジタル比率が変わっています。しかし集客数はほぼ同じでした。
「Web 広告は不向き」と固定観念経験則による固定観念が働いていたのですが、 Web 広告の有用性を実証できただけでなく、獲得単価を3割安くすることができました。

このスキームを Salesforce で動かすことで、キャンペーン・媒体ごとの費用対効果をしっかり把握できるようになりました。
結果を踏まえた上で、最適な広告投資を行うための PDCA を回せるようになり、デジタルシフトが進んでいます。
現在22店舗全体で行なっている施策なので、より大きなインパクトで広告の投資に対するリターンが改善するはずです。

2020年10月末の時点で獲得した反響数は、前期比150%増。大きく伸ばすことに成功しました。この間広告支出は110%増に抑えられています。
営業プロセスの最適化顧客満足もアップ Salesforce を用いた営業マネジメント
マーケティングフェーズの改善を経て、営業プロセスの過程についても Salesforce の機能を用いて改善しています。
まず案件の見極め機会損失の防止です。
反響が増えると、どうしても営業スタッフの業務負荷が重くなることで、顧客コミュニケーションの品質低下に陥りやすい傾向があります。結果、成約率の低下に結びついてしまうという課題がありました。
資料請求が来たらやるべき to do リスト

そこで、反響があってからのお客様とのコミュニケーションの必須事項を定型化しました。
営業活動活性化のための自動化処理その1

反響があったときに行うべきことを、TODOリストとして自動生成できるようにしています。
期限が来ると自動でアラートがでる機能を実装しました。
営業活動活性化のための自動化処理その2

また、商談進捗のプロセスを定型化。
そこから外れると「長期育成」というプロセスに移行することで、案件を個人ではなく別の営業プロセスからしっかりケアします。
営業業務の最適化
これらの施策を通じ、営業担当者の業務最適化をはかりました。
まず、自動か処理も含め、
・追いかけるべき案件
・そうじゃない案件
を仕分け、営業担当を外れた案件については、組織でケア。
営業スタッフ一人がかけるべき案件数のコントロールをするとともに、案件における過度の属人化を防いでいます。
営業スタッフには「次に何をしたらいいんだろう?」ということを迷うことなく、明確なタスクをどう行うかという
「What から How」への転換に向かい、お客様とのコミュニケーションの質の改善を追求できる環境を整えています。
マーケティングオートメーション

営業担当から外れたお客様は MA マーケティングオートメーションを用いてインサイドセールスチームを中心に、組織的に定期的なコミュニケーションを継続しています。
主な施策

MAにおける主な施策は、長期育成顧客へのメール配信と開封、クリックの追跡に始まり、スコアや顧客の関心に応じたコールまであります。
マーケティングオートメーションの成果
MA施策からのリサイクルポについて、6月~10月で42件。
そこからの成約も4件獲得しました。これは少ないように見えますが、金額価値に換算すると 2,000万円以上の成果を上げています。

特に今年に関しては、新型コロナウイルスの影響で相談の頻度が下がったり、進捗に遅れが出ているにも関わらず前年比152%というご成約を頂く事につながりました。
営業業務の効率化まとめ
これまで取り組んできた営業業務の効率化は、営業担当者が闇雲にはたくさんの顧客を抱えてしまうことで顧客満足度の低下を招く事態を回避し、お客様にご満足いただけるサービスを提供することにつながります。
案件をしっかりと見定めてコミュニケーションを取ることで、お客様に満足いただけるサービスを提供するとともに、営業スタッフの大きな労働負担の減少を実現。お客様との良好なコミュニケーションでその後の紹介案件をいただけたり、リフォームや設備の入れ替えなどのストックビジネスへの展開へと結びつくのです。
組織への浸透

もちろん最初からスムーズに現在の状況にたどり着いたわけではありません。
導入当初は操作への理解のなさから、なかなか情報の入力収集が進まない時期がありました。

ところが現在では、浸透させる施策を通じて、実際の業務改善につながる好循環が生まれています。
Excelの削減は200以上、毎週の作業量は33時間、1か月で133時間(16人/月)の削減に成功しました。
こんな成果を計測しています

今ではシステムをフルに活用することで、営業現場でそして経営会議が営業会議の場でもすっかり仕事になくてはならないツールとして浸透しました。
本日紹介した自動化もそうですが、ベンダーを介さずにをある程度自由にsalesforceの運用をカスタマイズするノウハウを獲得しました。
その他のクラウドサービス導入

・Salesforce :https://www.salesforce.com/jp/
顧客一人ひとりの情報を一元的に共有できる統合CRMプラットフォーム
・Google Workspace(旧称 G Suite):https://workspace.google.co.jp/intl/ja/
操作が簡単な統合型のワークスペース
・ANDPAD:https://lp.andpad.jp/
新築・リフォーム・商業などの建設・建築現場で使えるシェアNo.1施工管理アプリ
・Slack:https://slack.com/intl/ja-jp/
ビジネスチャットツール
・AWS:https://www.desknets.com/
Amazonが提供する信頼性と拡張性に優れたクラウドコンピューティングサービス
・desknet’s NEO:https://aws.amazon.com/jp/
仕事の効率を上げて生産性を高めることができる高機能グループウェア
・Chatwork:https://go.chatwork.com/ja/
仕事で必要なコミュニケーションをより効率的にするビジネスチャット
・あしたのチーム:https://www.ashita-team.com/
人事評価業務のクラウド化から、評価制度の構築、運用までを徹底サポート
・Zoom:https://zoom.us/jp-jp/meetings.html
オンラインでの会議を実現するクラウド型のビデオチャットサービス
・Googleデータポータル: https://developers.google.com/datastudio?hl=ja
様々なデータを視覚化してメンバー間で共有することができる無料のダッシュボードサービス
他にも様々なクラウドサービスを活用。自社で開発したクラウドシステムもあります。
API 連携を備えていないシステムを自動で連携するための RPA(Robotic Process Automation /ロボティック・プロセス・オートメーション)導入など、積極的なDX推進を実施してきました。
こうしたクラウドへの取り組みのおかげで、コロナ禍でもいち早くスムーズにリモートワークに移行。むしろオフィス勤務よりも効率が上がったとの声も聞かれるようになりました。
クラウド戦略は、株式会社ロゴスホームの生存戦略と切っても切り離せない関係にあります。
今後の住宅業界とクラウド

住宅産業は「お客様の生活の基盤を支える」という意味でもインフラ産業です。インフラである以上、会社の健全な存続は至上命題となります。
会社を健全に存続させるためには、何より健全に利益を上げること。
利益を上げるためには、市場・顧客・従業員との健全な関係性が不可欠です。
クラウド化による効率はもちろん万能薬でありませんが、現時点で最良の 処方箋の一つだと確信しています。
知見の共有

クラウドによるマーケティングのノウハウについては、 Salesforce ユーザ同士や全国のビルダー仲間で積極的にシェアしています。もともとsalesforceの導入についても、同業他社が先行して導入していたものを技術移転させていただいたのがきっかけでした。
今後も多くの会社とさらに広く付き合い、知見を共有し、高めあっていける活動をしていきます。そこから新しいビジネスが生まれることもあるでしょう。
クラウド化を通じ、株式会社ロゴスホームのミッションである
「家づくりを通して幸せな家庭を世の中に増やす 」ために、これからも事業に邁進していきます。
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