事例

教育DXで「そろばん」を世界に

コロナ禍における休校や、それに伴うお子様の習い事をどうするか。多くの習い事教室が直面した問題です。株式会社イシドは『夢を育てる』を企業理念とし、「そろばん」を通して社会に貢献し、世界に羽ばたく人財と夢を育てることを目的としています。1973年の開校以来、順調に生徒数・教室数を伸ばしてきたものの、その管理体制に問題を抱えたことからクラウドシステム化を決意。自社にフィットしたシステムを作り上げることで、コロナ禍においても生徒数・教室数を伸ばしています。今後はeラーニングも展開し、さらなる発展を目指す事例。習い事業界の方は必見です。

株式会社イシド

所在地:千葉県白井市堀込1丁目1-12
設立:1973年(昭和48年)3月
事業内容:石戸珠算学園(直営事業)/いしど式加盟校(FC事業)/珠算教師育成課(資格事業)/インターネットそろばん学校(eラーニング)/海外・文化交流事業・イベント従業員数: 110名
https://www.soroban.co.jp/

経営課題とシステム化の背景

当社は1973年に創業しました。日本の文化でもある「そろばん」をより多くの人に知っていただくことが我々の使命と考え、海外での普及活動や文化交流の事業にも力を入れています。生徒さんは世界の暗算大会でも優勝するなど活躍し、口コミで生徒数も増加。2008年に募集を開始したフランチャイズ教室は 、5年で約 5倍の規模に成長しています。

しかし、成長スピードに対して情報管理処理、意思疎通などの情報基盤が追いつかないという経営課題がありました。結果として、本部で一元管理ができず、均一なサービスを提供しにくい状況になっていたのです。

これまで、生徒情報の管理はAccessで行っていましたが、システムが老朽化していたため、
次のシステムは今後のさらなる成長を見据えた総合的なクラウドシステムが必要であると考えました。

クラウドシステム化の目的

クラウド化の目的は、経営情報をリアルタイムに把握し、教育品質の向上を図ること。

加盟店にとっても、利便性向上となり間接業務の時間が短縮されれば、教務力が均一化されます。フランチャイズ展開も、構想としてはスーパーバイザーを配置しない、新たな手法を用いることにしました。人間の移動や物流・配送などの面からもドミナント戦略(一定のエリアに集中して出店し、市場占有率を向上させる戦略のこと)を取らずとも展開が可能です。それで、フランチャイズ本部のコストダウンを測ると共に、海外展開のスピードも向上させることを目的としました。

経営課題の解決に向けて

経営課題の解決に向けて、社内でプロジェクトチームを結成。
もちろん、そろばん専用の当社に IT のプロはいません。しかし、独自のシステム開発だからこそ、現場経験が豊かな先生たちが開発の中心メンバーとなり、自分たちの理想のシステムを作り上げたいと思いました。

システム開発は範囲の広い大規模開発になるため、それぞれの開発分野に強みがある2 社をコンペによって選定しました。

一社目の開発ベンダーには、銀行業務などの開発経験を活かして情報の基盤部分を手がけてもらいました。このサーバーを「Core(コア)」と名付けました。

「Core(コア)」では、生徒の基本情報や月謝の集金、学習状況の把握などを一元管理できます。これまで手書きで行っていたルーティン業務を IT に置き換えることで、先生の負荷を減らし、労働環境を整えることにつながりました。

教育業界は、まだまだ紙などの印刷物が多いアナログな業界です。
当初、これまで紙に書いたり、印刷をしていた出席簿や学習の記録、住所録などがデジタル化されることに、スタッフはとても大きな不安を抱えていました。

しかし、結果として利便性だけではなく、個人情報流出のリスクも減り、印刷物を減らして紙の量を削減することで地球環境にも貢献ができます。

もう一つのサーバーは「More(モア)」です。

生徒さんが教室に到着すると、保護者様にメールでお知らせする機能や、先生とのコミュニケーションが気軽に取れるチャット機能などを備えています。お子様の「成長」「安心」「便利」「楽しい」を伝えるマーケティングデータベースです。欠席の連絡や振替の予約、学習状況や検定結果も情報として見られます。

これまで、保護者様とのコミュニケーションは対面でお会いする以外では主に電話でした。電話の場合は、必要な要件以外にお子さんの様子をお伝えしたり、家庭の様子を伺うことで情報共有もできますし、信頼関係も深まります。デジタル化されると、信頼関係が希薄になるのではないかという懸念がありました。

しかし、実際は真逆のことが起こりました。働くお母さんも増える中で、これまで電話が繋がりにくかった方も、必要な情報をいつでもすぐに確認でき、利便性も上がって安心にもつながったと好評を得ることができたのです。

災害時の緊急連絡

昨年のコロナウィルスによる休校の時期は、このシステムが大活躍しました。2011年の東日本大震災の時は、休校の連絡を電話でするしかありませんでした。その作業は、全従業員で手分けをしても丸 2日以上かかりました。

今回の臨時休校のお知らせは、送信ボタンを押すだけで終わりです。10年前と比較して、そのあっけなさに拍子抜けするほどでした。一人当たりの日給を仮に 1万円としても 100人が 2日間稼働すれば費用は 200万円になります。

しかし、このシステムがあったおかげで少人数が対応すれば完了です。しかも自宅で作業ができますから、危険のある中で外出する必要もなく、従業員は安全確保のためにお休みしてもらうこともできました。

eラーニング

このシステムは eラーニング教材です。インターネットそろばん学校と連携させたことで、コロナの有効期間中は、自宅で学習を継続することもできました。

コミュニケーションツール

これらは現在弊社で活用しているソフトウェアです。コミュニケーションツールは Google やSlackなどのフリーウェアを活用。
EC 販売ではオープンソースをカスタマイズして利用することで、時流の変化への対応が容易にできます。昨年は IT 補助金を活用し、販売から請求経理部門までが一気通貫できるソフトに更新しました。

多店舗展開をする私たちのビジネスモデルでは、クラウド活用により、移動時間の大幅な削減や一対多数のコミュニケーションが可能となりました。働くスタッフの 75%が女性である当社にとって「働く場所を選ばない」こと「お子さんの急な病気や介護があっても柔軟な働き方ができる」メリットは非常に大きいものとなっています。

タブレット導入

そして今年の春、教室の授業にタブレットを導入しました。
機械学習や AI機能を活用して、1人1人に最適な学習を提供することで、将来的には先生のいない遠隔地や学校、幼稚園などでの活用を見据えています。

いしど式教室数推移

2013年の開発から、現在の状況としてはフランチャイズの加盟法人数は 50社から 98社へ、教室数は 115教室から 280教室となりました。

海外では 6カ国に展開。
グアテマラ、ポーランド、ドイツ、UAE、モンゴル、ルーマニアに 14教室があります。

私たちの独自性と強みを生かすために ICT を積極活用することで、差別化だけでなく品質の向上、高付加価値を産むことにつながっています。結果として、お客様満足度の高い状態でサービスを展開することが可能となりました。

そろばんは計算力だけでなく、人の成長の舞台を作る教育です。私たちはそろばんを世界に広げることで、これからも夢を持ち、未来に羽ばたく、子供たちを応援していきたいと思います。

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