イベント・セミナーレポート

「自国にない商品を購入できるのが、越境ECを使う顧客のメリット」Shopifyエバンジェリストと、越境EC実践者のおもちゃ屋さんに学んだ越境EC入門

本記事は、2018年9月21日 (金)に中小機構九州本部で行われた「おもちゃ屋さん × YouTube × 越境ec実践者とecのプロが語る。越境EC入門セミナー」(https://fuk-ec9.peatix.com/)のイベントレポートです。

全体は2部構成で、1部では、株式会社フラクタ CEO 河野 貴伸さんによる「 越境ECをはじめるに前に知っておきたい基礎知識と壁の乗り越え方」を、2部では「おもちゃ屋さん × YouTube × 越境EC」で成功をおさめている清家正亀さんに、越境ECで成功するための秘訣を伺いました。

河野 貴伸 氏
株式会社フラクタ代表取締役 CEO
Shopifyエバンジェリスト
https://fracta.co.jp/

2000年からフリーのWebデザイナーとして活動。美容室やアパレルを専門にWebデザイン・ロゴ・パンフレットなどの制作を手がける。2003年にオープンソースを活用したWebサービスの受託開発を開始。
2006年にはEC-CUBEを活用したECサイト構築サービスを展開し数多くの実績を重ねる。2012年にEC-CUBE公式エバンジェリストに就任。現在はデザイン、マーケティング及び普及活動全般を担当している。2013年11月には株式会社フラクタを設立し、代表取締役に就任。


清家 正亀 氏
シーエス・トイズ・インターナショナル代表
https://www.cstoysjapan.com/

特撮玩具を世界に輸出販売するシーエ­ス・トイズ・インターナショナル部門を経営­。母校の愛媛県立農業大学校にて英語講師と­して海外を目指す若者の育成にも取り組む。­愛媛県松山市在住。
1万人を超えるチャンネル登録者の「cstoy」やラジオで、ファンとの交流を続ける。
https://www.youtube.com/channel/UC4oQBhSamC6T4mpXO8lhEgw

第1部「越境ECの始め方」
スピーカー:株式会社フラクタ CEO 河野 貴伸 氏

そもそも越境ECとは?

国境を超えて通信販売を行うオンラインショップの形態です。

「日本では中国人観光客による爆買い現象をきっかけに、帰国後のリピート買いや知人友人への口コミをきっかけに越境ECの可能性が広がりました。訪日外国人が増えれば増えるほど越境ECが発展してきました。」と河野さん。

それでは中国にしか市場がないのでは?

河野さんによると、「中国は共産主義国家でありインターネット利用の制限があり中国への参入はそんなに簡単ではない、市場は大きいがリスクもある」とのこと。

越境ECは中国からだけではなく、中国以外の国からも利用があります。数としては中国、台湾、韓国といった国が多くを占めていますが、香港などアジアだけでなくアメリカからも利用が。

「中国や香港、台湾が増えてきている理由としては、自国にお店が少ないという背景があります。特に香港、台湾は国土面積が少なくためリアル店舗の数が限られています。

さらに、ベトナム、タイ、シンガポールは売上総額は少ないですが、一人あたりの利用金額がとても大きいです。」とのこと。

中国にこだわらずとも、他の国に対して越境ECは大きな可能性がありそうです。

顧客側からみた越境ECの利点

顧客視点での越境ECの利点として、正規のサポートを受けることができる点と、自国にない製品を購入できる、偽物ではない本物を購入できる点が利用者側のメリットだそうです。

・本物の製品を安全に買うことができる
アジア圏ではニセモノの商品が多い。越境ECを利用することで、本物と保証された商品を購入することができる。

・自国にない製品、正規のサポートを受けて購入できる
日本独自のブランドや製品を、代理店を通さず購入できるため、安く購入できる。また、転売とは異なり正規のサポートを受けることができる。

「これは日本では当たり前のようなことですが、海外から見るととても大きな強みになります。」と河野さん。

越境ECを始めるメリット


河野さん曰く、越境ECを始めるメリットは以下の3点とのこと。
①現地で実店舗の経営をするよりはハードルが低い
「海外に出店する場合、5つのパターンがある」と河野さん。

現地法人の設立
自社のグローバル対応(翻訳や多言語化)
現地モール
日本の越境モール
海外の個別対応

1の現地法人の立ち上げが難しいが、越境ECであればハードル低い。しかし、どの形態を選ぶかでコストと工程も変わってくるとのことです。

※モール・・・日本でのAmazonや楽天など、複数の店舗を1つにまとめたECサイト

②Google翻訳などの現地に対応するサービスが整ってきている
「翻訳だけでなく、出品代行、配送代行、購入代行と、お金を払えば多くのサービスを利用できるので、最初はコストがかかっても積極的にサービスを利用するほうが良い。」と河野さん。

全て自分で準備するとなると、やはりかなりの労力がかかるみたいです。
翻訳に関しては、2部の清家さんのセッションでもコメントされていましたが、商品名の付け方も、現地で受け入れられるかを考えないといけないので、できるだけネイティブの方のチェックを受けた方がいいとのことでした。

③最低限英語で対応できる環境を作ることにより、多くの国で売買できる
中国圏の方々は英語で対応することができるので、柔軟に対応ができるようになるとのことです。

越境ECを始めるデメリット

越境ECを始めるメリットとは反対に、デメリットについても言及されていました。

①決済方法、発送手段を国の文化や仕組みにそれぞれ合わせる必要がある

「QRコード決済、WeChatPay、コンビニ支払いなど、国ごとに主要な決済方法が異なる。」と河野さん。発送に関しても、日本と違う点が多いので気をつける必要があるとのことです。

②販売する国の法律や規制について知識がいる
河野さんによると「国ごとに法律で販売してはいけない製品、宗教上販売してはいけないものに配慮する必要がある。また、飛行機では発送できない商品もある。」とのことです。

実際にターゲットにする地域の法律、宗教面のリサーチも必要です。

③為替変動のリスク対策、為替手数料といった安定しないものがある
「為替変動で損をしない日本円建ての決済の導入を検討するか、外貨決済の場合は、信頼できる決済システムを提供する業者の選定が重要。」とのこと。

第2部「越境EC成功の秘訣とは?」
スピーカー:シーエス・トイズ・インターナショナル代表 清家 正亀 氏


第2部では、特撮玩具を世界に輸出販売する清家さんに、YouTubeでのライブ配信をしていただきながら、越境ECで成功する秘訣を質疑応答形式でお答えいただきました。

ー 最初のお客さんはどうやって集客を?

清家さん:
シーエス・トイズを共同で始めた方がもともと日本の特撮が大好きで、日本に来た時にトイザらスに連れて行ったところ、当時放送していたマジレンジャーの商品が、出たばかりなのに売れなくなっていた。

4000円が500円になって、セールのワゴンに入ってたので購入した。やられた理由はムシキング。セールで買った商品を、eBayに載せたら売れた。

eBayでの販売を経験後、ストア型にしようと思い、eBayの子会社のストア開設サービスが安かったのでそこに移行した。

特撮ものの場合、すでにコミュニティができていた。すでに掲示板があって、パワーレンジャーについて語り合ってるコミュニティがある。そこに商品情報を投稿した。すでにマーケットがあったということ。

そして、ニッチマーケットの場合は、掲示板運営者が個人の場合が多い。資金が苦しい掲示板運営者も多いので、シーエス・トイズのバナー広告を載せてもらった。

ー 良い集客のステップは?

河野さん:
魚がいないところでは魚が釣れないのと同じく、まずはファンが多くて、ニッチ・マニアックな領域を探す。清家さんがやられたように、コミュニティや小さなメディアにアプローチする。

ニッチでもマニアックでもない大きな市場を狙う場合は、国ごとの主要SNSでの広告はお客さんを集めやすい。

日本の場合、楽天・Amazonに出店すると、それまでより売れるのでやめられなくなる(自社ECに移行しにくい)。

米国の場合は、そういったモールを、集客・PR用として使ってる。商品を知ってもらって、ある程度認知されたら自社ECに引き込む。

そういったように、とりあえずAmazonで販売して、まずは買ってもらって自社を知ってもらう。そこから自社ECに引き込むのも一つの集客の手段。
結局、人いないところに広告を出してもしょうがないので、人がいるところにだす。モールやソーシャルなど。

ー Amazonへの出店のメリット・デメリットは?

清家さん:
以前は私もAmazonに出店していた。最新の情報ではないかもしれないが、以前、ぬいぐるみを売っていた頃に、国内向けにAmazonで販売しようとした際、写真の背景は必ず白じゃなければいけない条件があった。

さらに、違う店舗であっても同じ商品には写真が使われる。自社以外の商品にも、自分で撮影した写真が使われた。自社独自の写真であるはずが、他のショップの同じ商品にも写真が使われてしまうので、写真で独自色を出すのは厳しい。

河野さん:
Amazonでは商品が横に並ぶので、見せ方を工夫できない。シーエス・トイズさんみたいに、商品をパッケージして、配送まで見せる手法(良いユーザーエクスペリエンス)を提供している会社はAmazonに出店するのはもったいないかもしれない。

さらに、他の商品と価格の比較をされてしまう心配もある。先ほど言ったように、マーケティング目的にAmazonに出店はあり。ただし、確実に自社ECで受け皿を作っておく。

さらに、Amazon Payは日本でも使え、実際の店舗でもQR決済できるようになってる。効果は高い。色んなインフラを利用するという意味ではAmazon利用はあり。

ー 商品名のつかけたは?日本の場合は、SEOを意識したものが多いと思うが?

清家さん:
英語の場合は注意が必要。誤解を招く可能性がある。

昔、キヤノンのカメラの機能で「オートボーイ(自動フォーカス)」というのがあったが、そのままの名前だと、英語圏では「駐車場にいるガイドの少年」という意味になる。
結果的に、アメリカでの販売では、「シュアショット」という名前に変えていた。
日本での名前が現地で理解されるかどうかは別。


河野さん:

日本だと、感嘆符をかなり入れてるが、グーグルショッピングと連携するとNG。
海外では、正確な情報を伝えないといけないので、感嘆符が多めの、購入を煽るような言葉遣いは、使えないし、使っても意味がない。
ネガティブな意味に聞こえる場合もあるので、ブランドを傷つける場合も。ネイティブの方に、表現に間違いがないか、聞いたほうがいい。

ー ライブ配信に自分が出るのが苦手な場合はどうすれば?

清家さん:
チャットだけでもいいが、動画の方が一体感がある。さらに、顔を出すことで、その場の主導権を持てる。自分がコントロールできる環境にすることが大切。他者が自分をどう見るか?が大事。自分が言いたいことは何か?を伝えるには、顔が出ていた方が良い。

ー 商材が決まってない方は中古販売もありですか?

清家さん:
そうですね。それが全てではないが、バランスを考えると中古を扱うのはあり。

以上です!清家さんがお話しされている間も、配信中のチャットは盛り上がっていました。視聴者同士のコミュニケーションも盛んで、初めて来られた視聴者への説明も、古くからの視聴者の方がモデレーターとして、その役割を担ってくれているそうです。

越境ECの現状とメリット/デメリット、販売・集客する上で気をつける点など、非常に学びの多いイベントでした。

お知らせ


来週の10月11日(木)は、「ECを運営する上で効果的な集客方法 Vol.1〜SNSを活用した集客について〜」、宮本 順一さんをお迎えしたセミナーを開催予定です。
お申し込みはこちらから。
https://fuk-ec10.peatix.com/view