インタビュー

サイバー農家が実践しているWebマーケティング

interview

こんにちは。一般社団法人日本中小企業情報化支援協議会(JASISA)の牛島です。
今年も早々3月に突入しました。「中小企業だからこそできるWebマーケティングとはなんだろう?」をテーマに様々な企業の方にお話を伺ってきております。

今回取材をさせて頂いたのは、熊本県の宇城市にて蘭の栽培・販売をしている宮川洋蘭の店長、宮川水木さんです。
宮川洋蘭さんは、蘭の販売をインターネットでされており、たくさんの興味深い取り組みについてお話ししていただきました。

 

牛島:

貴社のマーケティング施策として、どのようなことに取り組んでいらっしゃいますか?

宮川さん:

当園は1972年に父が創業した農園で1994年に法人化し、2007年に楽天市場で妻の旧姓を冠したウェブショップ「森水木のラン屋さん」をオープンしました。
当初はネットショップ運営の右も左もわからず、出店して月商100万円になるのに2年かかりました。その後は楽天市場にて年に一番お花が売れる母の日の時期に広告を出しています。要は勝負のタイミングを絞っているという事です。紙面での広告は、ここ熊本県宇城市役所の封筒裏に地元での周知の意味も込めて載せています。
また、商品を一度購入されたことがある方にはメールマガジン(現在約3万人)をお送りしているのですが、お花だけでなく、お花の周りの環境に興味を抱いてくださる方が結構いらっしゃいます。ですので、お花のご案内だけでなく、ハウスの様子や農家の具合的な仕事内容をご紹介していたりします。

 

牛島:

Facebookページのいいねを多く獲得していますが、そのために何か実践されていることはありますか?

宮川さん:

当初から販促ではなくコミュニケーションツールと考えていたので、皆様に知ってもらいたい、役に立てもらいたいと思うことを投稿してきました。その内容が皆様に応援してもらう、忘れられないお店につながってきたと思います。
具体的には、宮川洋蘭は熊本県の宇城市という県と橋でつながっている島にあり、人口も1200人ほどののどかな島です。そんな自然に囲まれた生活の魅力や
子供の成長の話も投稿していて、全体的なライフスタイルをさらけ出していたことに好感を抱いていただけているのかなと思います。

 

牛島:

その中でも反応の良かった投稿はありますか?

宮川さん:

蘭は一番種類が多い花なのですが、街中の花屋さんでは贈り物に送られる胡蝶蘭がほとんどです。うちでは、胡蝶蘭以外の珍しい種類も育てているので、普段見ることのないよう蘭をご紹介すると「いいね」がたくさんつきます。
また、季節に合わせた蘭、例えば冬だったら明るい色の花を、夏だったら涼しげな色の花をご紹介し「部屋の空気まで変えることができるお花ですよ」ということをお伝えする、また、皆様の手に届くお花は一つの蘭ですが、ハウスにある頃は花畑なのでその光景を投稿したりすると反応してくださいます。

 

牛島:

2007年より楽天でのECを開始されていますが、時代に沿ってマーケティング手法を変えていたりしますか?

宮川さん:

2007年にECを始めたのですが、当時は「インターネットで生物の花を買うなんて考えられない」というお声もたくさんいただきました。ですので、ご自身の目で確認しなくても大丈夫、贈り物としても安心して購入していただける、といったお客様の信頼を獲得することに重点を置いていました。
インターネットではもちろん競合店も増えてきますので、2012年頃からは、品揃えの豊富さや珍しい品種も扱っていることを自社の強みをアピールしています。当店では栽培に必要な資材まですべてそろった苗から育てる蘭のキットも販売しているのですが、肥料や受け皿、また床が汚れないように新聞紙も同梱しています。最近では新聞紙をとっていない方も多いと耳にしますので、そういった些細なお客様のニーズにも気づける私たちでありたいです。
また、街の花屋さんが減少傾向にあり、お供え用のお花を遠くまで行かなければ手に入らないというお声をお年寄りの方から伺いました。そのようなお声のもと、ケアも不必要な加工されたお花、ボトルフラワーの販売を開始しました。

 

 

牛島:

直接対面できる実店舗ではないからこそ、ECサイトで工夫されていることなどはありますか?

宮川さん:

ECの運営方針としては、目先の利益ばかり追わない、期待以上の感動を届ける、決める&動くスピードを最大にの三つです。それが私たち小さな農家の強みで、大きな会社には難しいところだと思うからです。

また直接お客様に手をとって見ることができないという点に関して配慮を心がけています。
お花についての説明は、写真と文字でお伝えすることしかできないのですが、自然の日の光が当たった時にどのように見えるか、どんな色になるかがしっかりとわかるような写真を撮るようにしています。特に母の日ギフトについては、みなさん選ぶのに苦労されます。ですからハウスの中で咲いている様子を店長がレポートする動画も活用して、信頼感と臨場感をお届けするようにしています。
こちらの「母想い」という自分で作ったランのストーリー動画は転換率が12→29%になるほど大きな反響をいただき、月商が4800万円になりました。
この経験から商品に対する「共感」は本当に大切だと感じました。

 

 

牛島:

ネットショップはどちらで出店されていますか?また、その理由を教えてください。

宮川さん:

以前は公式サイトでも販売をしていたのですが、今は楽天市場のみで販売をしています。楽天市場で買い物をするとポイントがつくのですが、蘭を購入して頂いてついたポイントを使って何万点という他の商品を買うことができます。また、楽天市場ではお客様がレビューを書く・見ることができるので、他の方が自店に対してどのような思いをお持ちなのかを知って頂いた上で蘭を購入することができます。こういったことを自社サイトで運営するのは、手間もかかって大変です。もう一つの理由は、楽天市場は大きなショッピングモールなので、たくさんのお客様がいる中に出店していることになります。足を止めて見てくださるチャンスが何万倍とある思うと非常に効率的です。

 

 

牛島:

今後取り組みたいこと、課題などを教えてください。

宮川さん:

お花の中で一番種類が多い蘭を育てて販売をしている専門店として、より多くの方に蘭のお花を知ってもらい、身近に感じてもらうようにしたいです。最近はインスタグラムのアカウントも作り、若い世代の方にも蘭を自分で育てたり、贈り物の選択肢として入れてもらえるよう取り組んでいきます。

 

また、自分たちができる範囲で社会貢献をしながら店を運営していきたいです。

昨年、熊本県は震災があり私たちも被災したのですが地元から元気を発信したいとの思いから、お客様のご注文1件につき100円を熊本地震の復興に募金する取り組みを行い
先月200万円に達しました。
インターネットで販売をしていると、こんな小さな島の農園でも日本全国、海外の方といったよう大変多くの方に気に留めていただけます。 

もう一つの取り組みとして、kibidango社、そして楽天市場と二つのクラウドファンディングを行い230万円を集めることに成功しました。
プロジェクトの内容ですが実は花の事ではなく最近は農作物をイノシシに食べられて困っている方が急増しているのですが、鳥獣による作物被害対策として、「箱わな」というしかけを畑に設置するための資金援助を呼びかけました。箱わなは高価なものですので、資金援助を呼びかけて多くの農家さんの助けになればという思いで行いました。 

現在、宮川洋蘭では30人の雇用を100人まで増やす計画をしています。宇城市は小さな島で雇用先も大変少ないのです。なので、私のように子供を育てながら仕事もできる環境を整え、100人の雇用を実現できるようみんなで花を、そして農園を育てていきたいと思います!

 

 

最後に

蘭、お客様への愛情がたっぷりと伝わるお話を伺えました。
お客様の求めていること、利益ではなく喜んでもらえることを第一に考えた宮川洋蘭さんのマーケティング。
知人へのギフト、また自分へのご褒美にお花を贈ってみてはいかがでしょうか。

顧客満足度の最大化賞受賞 森水木のラン屋さん

お知らせ

 

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▼お問い合わせページ

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執筆者:
一般社団法人日本中小企業情報化支援協議会 牛島
URL:http://www.biz-solution.org/