連載・コラム

DX推進のことはじめ「調達」

昨年7月に投稿させて頂きましたDX(デジタルトランスフォーメーション)に関するレポートではDXをバリューチェーンで捉えるということを紹介しました。

今回は「調達」について触れていきたいと思います。

中小企業の調達で真っ先に思い浮かぶのが製造に係る原材料の調達です。1例としてOR(オペレーションズリサーチ)の生産最適化を取り上げます。例えば、商品がコーヒー(コーヒー豆20g/杯)、イチゴミルク(イチゴ2粒+牛乳150g)、カフェオレ(コーヒー豆20g+牛乳150g/杯)の3種類とします。()の中は製造に必要な材料です。これらはそれぞれ以下のように需要があるとします。

★材料と商品の関係、および需要を図示したもの

コーヒー、イチゴミルク、カフェオレのそれぞれの価格が定義され、コーヒー豆、牛乳、イチゴの仕入に上限があるとした場合、何をどれだけ仕入れれば利益を最大化できるか。このような課題には、ORが有効です。既にORを導入している企業は多いと思いますが、まだまだ“勘”を頼りに材料発注している企業もあるようです。必ずしも“勘”が悪いわけではないのですが、“勘”は人に依存しますので人事異動等でブレが生じます。

もう1つ例を出しましょう。

長引くコロナ禍でも、販売が順調な業種や企業もあります。そうした企業こそ、余力のある時に調達判断を経営視点で実施できるようにDXを進めるべきです。

例えば、予定以上の利益が出るという場合に“何をどれだけ買うべきか”という判断を調達の視点だけでなく、“予算BS”という視点も加えます。簡単にいうと、未来のBSを計画します。今、○○を△△万円で購入したら、未来のBSにどれだけインパクトを与えるかをシミュレーションします。何やら難しそうですが、EXCELや各種の会計ツールで算出可能です。

下図は、車両を購入した際の会計(BS)です。あえてざっくりと書いています。重要なのはイメージを持つことだからです。

車両購入を前提に法人税はどうなるのか。一方現金はどれだけになるのか、といった試算をします。

企業が、何かを購入する際には未来のBSも策定します。

上記のような経営判断指標を自社で構築し、日次、週次、月次、四半期ごとに社内情報を確認するにはBI(ビジネスインテリジェンス)と呼ばれるツールが必要になります。一般にBIは、DXの一環として外部のシステムベンダーに相談して導入します。一方で、“ノーコード”、もしくは“ローコード”開発と呼ばれる簡単な方法でBIツールを作ることも可能です。Microsoftは、Power Appsというツールをリリースしています。業務システムは外部ベンダーに依頼するという固定概念だけでなく内製化も可能な時代です。内製化は、コスト削減などメリットが多く、自社開発にチャレンジしたいものです。

今回は調達をテーマにDXについて触れました。DX推進は、内製化とITベンダー等専門家に依頼する方法があります。内製化と専門家依頼、切り分けたいものです。

執筆者

山本 広高 氏
株式会社経営財務支援協会 取締役
NPO首都圏事業支援機構 理事

国立大学大学院終了後、フロリダ・インターナショナル大学にてMBA取得。
アクセンチュア㈱ビジネス統合部門にてコンサルティング業務に従事。
経営コンサルタントとして独立。
2014年、BFCA経営財務支援協会の取締役に就任。
NPO首都圏事業支援機構 理事。

【コラム提供】
BFCA 経営財務支援協会
http://kaikei-web.co.jp/