全国中小企業クラウド実践大賞は、クラウドサービス利活用を実践し収益力向上・経営効率化したモデル事例のなかから、コンテストにより優れた取り組みに対して総務大臣賞、日本商工会議所会頭賞等を贈るコンテストです。
2020年11月27日に行われた福岡大会より、株式会社セリタ建設の事例をご紹介します。
2012年からのクラウド化をすすめ、昨年までで売上成長率は260%、経常利益は20.4%と
建設業の一般的な経常利益率を大幅に上回る結果を出されました。経営理念・ビジョン・ミッションを一から作り上げたというDXの推進をご覧ください。
株式会社セリタ建設の概要

■法人名:株式会社セリタ建設
■事業内容 :総合土木工事業
地盤改良工事(マッドミキサー工法)
環境配慮型工法(S-RCクレーグランド工法、ルベラン)
■開業:昭和44年11月 (1969年)
■公式WEBサイト:https://www.serita.jp/
株式会社セリタ建設は、地盤に関する悩みをスマートにクリエイティブに解決する総合土木工建設業。

総合建設業や地盤改良などの分野で、時代のニーズに合った独自の技術を開発、企業化し、特殊土木の専門工事会社として業容を拡大しています。
クラウドサービスを利用した結果

クラウドサービスを利用した結果です。表にしたのは、2012年からの2020年までの実績。
売上成長率は260%、経常利益は20.4%と、建設業の一般的な経常利益率5.0%を大幅に上回ることができました。
これはクラウドの力だと考えています。
セリタ建設・建設DXのススメ方

株式会社セリタ建設のクラウド化について
・DX
・組織作り
・コア作り
3つのポイントから解説していきましょう。
セリタ建設のDXとは

セリタ建設では、DX を「デジタル技術による業務やビジネスの変革」と捉えています。
さらに、DXを捉えるための視点として3つのポイントを解説しましょう。

1つ目は、悪い部分にパッチを当てるのではなく、薬を当てるべきというところ。どうしても悪いところに目が行きがちですが、そこだけを見るのではなく、全体的に捉えます。

2つ目は、部分最適ではなく全体最適ということ

3つめは、DX は未来に向けたアップデートだということです。
現在の改良・改善だけではなく「将来のあるべき姿」を目指して
・どのくらいの規模感で行くのか
・会社をどのように成長させるのか
・どんな会社が理想なのかというところに
視点を置きながらクラウドを運用していくことが重要なのではないかと考えています。
DXの肝は、組織づくり
DXの推進は、システムの表層的な課題ではなくて、会社の根幹に触れる非常に重要な内容です。
このような環境で、リーダーは何を考え、どのように打ち手を導き出すのか。
それを実行するための
・組織変革
・プロセス
・テクノロジーの構成で紹介していきます
1.組織変革

組織変革にあたり、まずはビジョン策定~浸透プロセスを行いました
2012年にDXを開始したとき、実は「どこに向かうのか」という羅針盤がありませんでした。そこで、経営理念・ビジョン・ミッションなどを一から作り上げていったのです。
さらに、その内容を共有するために、手帳を配布し、至る所に私たちのメッセージを掲示しました。
また、社員間で理解を深めるために、ただアピールするだけでなく、相互に話し合うような場を設けました。
そして、自分ごととして理解してもらうために、業務における課題解決について担当を設け、フィードバックしながら実践していくことで、全社ビジョンを浸透させていったのです。

環境づくりにあたっては、まず「どこが問題なのか」を把握するために、仕事の棚卸しを行いました。
さらに「どうなりたいのか」いわゆる視点・視座の変化を促すために、俯瞰的に「どういう風にしていきたいのか」という目標を立ててもらいます。
最後には「どうなっていたいのか」と将来のあるべき姿・最後のイメージを導き出すよう努めました。

昨今は将来は極めて不確実で現場は多様化しています。
顧客ニーズは高速で変化していますので、IT技術をとってもトップダウン型の経営では崩壊していくでしょう。
このような時に求められるのはいわゆる「羊飼い型」のリーダーシップです。リーダーシップやマネージメントスタイルは変化します。
最前線で顧客を対応し、その情報をうまく吸い上げる環境を作ってくことが、羊飼い型のリーダーシップです。
変化に柔軟に対応することで、来るべき共感型のリーダーシップを育むことが必要と考えました。
2.プロセス

システム化のプロセスについては、まず「引き算思考」で行うことが重要と考えています。
システムを改善するからといって 業務を足してばかりでは、リソースが逼迫してしまいます。システムは足し算ではなく引き算と考え、仕事量や工数を減らすことを留意しました。
全体像は大きく描きましたが、実施はミニマムでスタートすることから。
さらにアメーバ型。最終的には全社へ広げることを考えていましたが、まずは営業スタッフから導入をはじめました。さらに工事部・経理部・総務部……と 少しずつ導入部署を増やすことで、システムの学習型組織が形成されていきました。
3.テクノロジー

・salesforce:https://www.salesforce.com/jp/
クラウドベースのCRM/顧客管理システムやSFA/営業支援システム、MA/マーケティングオートメーション
・Evernote:https://evernote.com/intl/jp
情報を整理するメモアプリ
・Karios3:https://www.kairosmarketing.net/marketing-automation
マーケティングオートメーション/SFAツール
・Sansan:https://jp.sansan.com/
名利管理サービス
名刺をはじめとしたあらゆる「顧客データ」を連携
・SmartVisca:https://products.sunbridge.com/
Salesforceユーザーのために開発された、名刺管理・名刺活用ソリューション
・pCloud.com:https://www.pcloud.com/
オンラインストレージ
私たちのセリタ建設のシステムの全容です。
もちろん、この図に掲載されていないサービスもあります。
業務ごとに、もれなく・ダブりなくシステム導入をしていきましたが、 API は意識して各システムが連携できるようにしています。
また、クラウドなので、ネットがつながればどこでもアクセスできるし、バックアップはストレスがありません。
システム化においては、同業他社で先行してシステム化に成功している会社を、どのようなオペレーションになっているのか、システムの仕組みになっているかっていうところを徹底的に研究するというのもポイントです。
ベンダーに依頼することも考えましたが、外部の支援の方の場合、どうしても悪いところに目が行ってしまい、前述のようにパッチあての要素が強くなってしまいます。
自社の業務や組織をわかっているのはあくまで担当であるため、専門知識についてのアドバイスはいただきましたが、システムの全体像の構築は社内で行いました。

営業部の案件管理・顧客管理から工事部での日報・原価管理、そして総務部の進捗管理・契約管理まで結んでいます。
建設業においては、現場のリアルタイム管理が非常に重要です。クラウド化によって逐次管理できるようになったため、業務依頼内容と原価管理についても現場のサポートがスムーズにできるようになりました。これが利益20%実現に非常に大きく貢献しています。
最終的には経理部の請求書発行業務や入出金管理をAPIで連携し、業務を一気通貫で結ぶというのがこれからのビジョンです。
ここまで来るのに、2012年から8年と長い時間を要しました。しかし最終的なビジョンがあったので、ここまで到達できたのではと考えています。
さらに現在は、コロナ禍において、お客様向けに現場に来なくて進捗をお見せできるようなシステムを導入することを検討するとともに、県の支援も得て非接触営業システムの構築も進行中です。
お客様とクラウド上で商談化を進め、顧客管理システムまでワンストップで連携できるシステムを近々リリースする予定となっています。
DX推進の取り組みを共有しませんか?
日本DX大賞 2025 エントリー募集中