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リーガルテックとは?用語の解説から歴史、国内のサービスまでを紹介

本記事はGVA TECH株式会社が2019/09/03に作成・公開したコラムの転載記事です


最近「リーガルテック」という言葉を耳にする機会が増えてきました。

それ以前にも、これまで IT 技術との関わりが薄かった既存の業界にもデジタル化やテクノロジーを活用したサービスの普及が進んでおり、これらは「○○+テック」と呼ばれていました。

有名なところでは「Fintech(フィンテック。金融系)」、「HR tech(エイチアールテック。人事系)」、「Health tech(ヘルステック。医療・健康系)」などがあります。まだまだ探せばたくさん出てくるくらい最近のビジネスシーンではホットなキーワードです。

「リーガルテック」もそれらの一つの分野です。本記事では、リーガルテックという言葉の解説から注目される背景、関連サービスまでを紹介します。


リーガルテックとは

リーガルテックは「リーガル」+「テック」で、法と IT を組み合わせた単語です。今までテクノロジーが活用されることが少なかった、弁護士が行っている業務はもちろん、司法書士が行う登記業務や弁理士が行う特許や商標業務までを対象とし、業務自体をデジタル化したり、テクノロジーによる効率化を行うことを総称しています。

近い分野では、役所など公共機関の手続きなどを支援する行政寄りの「Gov tech(ガブテック)」という分野もあります。

わざわざ「テック」とついていることからもわかるように、今までは紙が中心だったり、効率的な業務フローが整備されていないような業種が対象になることが多く、テクノロジーで課題解決 = ある領域に特化した IT サービスを活用する、ことと同義に表現されることもあります。


リーガルテックの歴史

他の「〇〇テック」の大半がそうであるように、リーガルテックの発祥の地は米国です。すでにアメリカには数百のリーガルテックスタートアップが存在しており、米国内だけでなくグローバル展開も視野に入れて活動しています。

米国におけるリーガルテック企業の代表格といわれる DocuSign社は、2003 年創業。日本のリーガルテックシーンに比べるとだいぶ前に創業されており、その分、厚みのある市場を形成しています。

日本でも、契約書などを含む文書の解析といった取り組みは、かなり前から存在していましたが、「法律業界に特化したサービス」としては、 2005 年創業の弁護士ドットコムが象徴的です。そして同社の電子契約サービス「クラウドサイン」がリリースされた 2015 年前後から、リーガルテック関連サービスを耳にすることが増えました。

スタートアップだけでなく、リコーなど紙に関する製品を展開していたプレーヤーによる契約書管理サービスなど、市場の裾野が広がっています。


リーガルテックが日本でも注目される背景

まず、リーガルテックが近年注目されている背景を、労働環境とテクノロジーという2つの点から整理してみます。


①労働環境の変化に伴う効率化のニーズの高まり

「働き方改革」という言葉に代表されるように、この数年、労働環境も大きく変わりつつあります。労働人口の減少はもちろん、日本の労働生産性の低さやグローバルでの日本企業の存在感低下を背景に、大企業における人員整理、サービス業における労働時間や雇用確保といった問題は、ますます顕在化しています。

ですが、これらは悪いことばかりでなく、副業や育児休暇の奨励など、社会全体で労働力の流動性を高めたり新しい働き方をベースにした社会のデザインという動きにもつながっています。

マーケットは縮小する、けれども今までと同じやり方が成立しない、という矛盾した時代を迎えるにあたり、事業部門に限らず、労働生産性の向上は経営上必須になりつつあり、今までマーケットが小さいために効率化の対象になりにくかった総務や法務といった分野でも様々な手法が登場しています。

特にこの数年、国内でも SaaS という形態により、企業内の様々な業務の自動化・効率化を支援するサービスが増加しており、リーガルテックとして提供されるサービスの提供形態の一つとしても認知が高まりつつあります。


②テクノロジーの進化に伴う解決課題の拡大

法務の業務は、コンピュータとソフトウェア(主にワープロやデータベースソフト)による作業の確立を除き、長い間テクノロジーの影響を大きく受けることがありませんでした。

法務というスキルや知識における特性はもちろん、日本法や日本語という言葉を対象とし、解釈の余地が大きい領域だからこそ、すぐにはテクノロジーに代替されにくい状況が長く続いてきました。

しかし近年、AI などの技術発展を背景に、米国を中心に様々な産業においてテクノロジーが既存の手法を代替しつつあります。法律業務においても、判例や商標の検索といった従来からあるサービスだけでなく、弁護士をマッチングしたり、紙や印鑑を使わない承認フローを実現したり、従来は人が判断するしかなかったことをサポートしたりと、法務の業務もテクノロジーとは切っても切れない時代になりつつあります。

経済産業省の「国際競争力強化に向けた日本企業の法務機能の在り方研究会」のワーキンググループにおいても、日本におけるリーガルテックの市場構造が紹介されています。法務機能強化におけるリソース確保の手段としてリーガルテックの活用が議論されており、効率化を期待できるサービスとして、契約書作成や登記・電子署名などのサービスが取り上げられています。

出典:経済産業省「第4回 国際競争力強化に向けた日本企業の法務機能の在り方研究会 法務機能強化 実装ワーキンググループ 資料1 事務局提出資料」(2019年5月13日)

また、2020 年2月からは、全国9つの裁判所で民事裁判の IT 化が実施される予定です。裁判業務につきものだった紙を使わない新しい裁判のあり方として動向が注目されています。



国内のリーガルテック関連サービス

日本国内の主なリーガルテックサービスから、大きくわけて

  1. 契約書業務を支援するサービス
  2. 登録・申請を支援するサービス

の2つに分けて紹介します。(※各サービスの紹介は 2019 年9月時点の内容です。)


①契約書業務を支援するサービス

特に企業が多いのが、契約書関連業務を支援するサービスです。さらにこの中でも2つの領域に分類されます。

A)契約書の締結と管理

作成した契約書を電子データで保存したり電子署名を行うサービスです。今まで紙で交わされることが電子データに置き換わることで契約締結までのワークフローを効率化したり、保管や印紙税などのコストが抑えられるというメリットがあります。

B)契約書の作成・審査と交渉サポート

契約書内のテキストをシステムが読み込み、修正が必要な箇所や自社にとってのリスクの有無を判定し、どの点を修正したり締結先と交渉すべきかをサポートするサービスです。


A)「契約書の締結と管理」サービス

クラウドサイン(弁護士ドットコム株式会社)

2015 年にサービスを開始した、日本のリーガルテックサービスでは草分け的な存在です。導入企業数も4万を超えており、交通広告で出稿されているのを見かけたこともあるかもしれません。

PDF の契約書類をアップロードし、締結先の情報を入力することで、署名や締結後の保管がそのままできます。紙の契約書で発生していた、製本や郵送、印紙税などのコストの削減が可能です。

※画像はクラウドサイン HP https://www.cloudsign.jp/ (2019.9.3) より引用。


ドキュサイン(ドキュサイン・ジャパン株式会社)

世界で 30 万社以上が利用している、グローバルにおけるリーガルテックの元祖的なサービスです。できることはクラウドサインとほぼ同じですが、スマホアプリが使えたり、多くの外部 API と対応していたりと、規模や歴史の長さによるメリットがあります。数年前には日本法人も設立されており、日本語でのサポートも受けられるようになってきています。

※画像はドキュサイン HP https://www.docusign.jp/ (2019.9.3) より引用。


契約書管理サービス クラウド版(株式会社リコー)

株式会社リコーが提供するクラウドでの契約書管理サービスです。リコーが提供するサービスなだけあって紙文書からのデータ化を強調してサポートしているのが特徴です。

※画像は契約書管理サービス クラウド版 HP https://www.ricoh.co.jp/service/cms/ (2019.9.3) より引用。


Holmes(株式会社Holmes)

あらかじめ用意されたテンプレートによる契約書の作成から、社内での承認、取引先との締結、締結後の管理まで契約書締結業務に関わるワークフローを広くカバーするサービスです。前述のクラウドサインやドキュサインを、より契約書に特化させたサービスといえます。

※画像は Holmes HP https://www.holmescloud.com/index.html (2019.9.3) より引用。


Hubble(株式会社Hubble)

文書作成ソフトとしてシェアの高い、Microsoft Word 形式で作成された契約書作業に特化したサービスです。Word で行った作業をクラウド上で同期することで、使い慣れた編集履歴やコメントといった Word の機能を使いながら管理や共有のコストを下げることができます。Word の文化が根強い法律事務所や大手企業などは導入コストを抑えながらリーガルテックの導入が可能です。

※画像は Hubble HP https://hubble-docs.com/ (2019.9.3) より引用。


B)「契約書の作成・審査と交渉サポート」サービス

AI-CON(GVA TECH株式会社)

契約書のレビュー支援サービスです。PDF や Word 形式の契約書データをアップロードすると、AI を用いて契約条項ごとに5段階で有利・不利のリスクを判定し、そのリスクの内容や典型的なトラブルの説明に加えて修正例や修正意図などを提示します。不足している条項を洗い出すこともできます。2019 年9月3日現在で全 16 類型の契約書に対応しています。また、契約書ドラフト支援機能の「AI-CONドラフト」を利用すれば、簡単な質問に答えるだけでユーザーの要望に応じた各種契約書の作成も可能。契約書の作成から交渉までの業務をサポートし、効率化します。


LegalForce(株式会社LegalForce)

契約書の草案データをクラウド上に登録すると、AI を活用したシステムが、条文の抜け漏れや修正内容の提案するサービスです。条文を見落としてしまったり、潜在的なリスクとなる条文を提示することで、人による見落としや、契約書レビューにかかる時間を効率化できます。

※画像は LegalForce HP https://legalforce-cloud.com/ (2019.9.3) より引用。



②登録・申請を支援するサービス

会社の登記や特許、商標など、今までテクノロジーとは無縁と思われていた領域においてもリーガルテックが台頭しつつあります。最近はサービスによって GovTech(ガブテック)や IP(知財)Tech などとさらに細分化して分類されることも増えてきています。


AI-CON登記(GVA TECH株式会社)

法人登記の申請支援サービスです。会社の本店移転や、募集株式の発行(増資)、代表取締役の住所変更、商号変更といった法人の登記申請を、一般的な司法書士への依頼より安価に、スピーディに行うことができます。

登記情報や株主名簿などのファイルをアップロードするだけでシステム側で自動的に登記申請に必要な情報を選別してフォームを埋めてくれるので、手間のかかるフォーム入力作業コストを削減できます。

完成した登記申請書類については、ユーザーが印刷して郵送し、あるいは押印して投函だけで OK のレターパック付きプランが用意されています。


LegalScript(株式会社サンプルテキスト)

会社の本店移転や、代表者の住所変更に伴う法人の登記申請をWebサービス上で行えるサービスです。登記情報をフォーム入力すると手続き書類が作成されるので、印刷して役所に提出するだけで登記ができます。登記以外にも定款の再作成に対応しています。

※画像は LegalScript HP https://legal-script.com/ (2019.9.3) より引用。


Cotobox(cotobox株式会社)

商標の登録状況を区分ごとに検索し、そのまま商標登録を出願できるサービスです。専用の書類を作成する必要がなく、オンラインでの入力内容だけで出願することができます。

※画像は Cotobox HP https://cotobox.com/ (2019.9.3) より引用。


Toreru(特許業務法人Toreru)

出願を検討している商標について、電話での打ち合わせ後1営業日内で報告書を作成、ウェブサイトのフォームに必要事項を入力するだけで、最短数分で商標出願の申し込みができるサービスです。

※画像は Toreru HP https://toreru.jp/ (2019.9.3) より引用。


Graffer法人証明書請求(株式会社グラファー)

法人の登記簿謄本や印鑑証明書を、オンライン入力とカード決済のみで取り寄せることができるサービスです。取り寄せた書類は郵送または PDF で受け取ることができます。

※画像は Graffer法人証明書請求 HP https://registry.graffer.jp/ (2019.9.3) より引用。



その他のリーガルテックサービス

enjin(円陣)(ClassAction株式会社)

ウェブサイト上で集団訴訟のプロジェクトを作成し、訴訟への参加を募集できるサービスです。集団訴訟という性質上一般消費者向けのプロジェクトが中心です。仮想通貨や一部のネット系ビジネスが訴訟対象になっているケースもあるようです。新規性の高い事業を展開することの多いスタートアップなら一度チェックしておきたいサービスです。

※画像は enjin HP https://enjin-classaction.com/ (2019.9.3) より引用。



以上、「リーガルテック」の解説、および日本におけるリーガルテックサービスをピックアップして紹介しました。

「リーガルテック」に興味をお持ちの方ならすでに知っている、使っているサービスもあったかと思います。自社の強みに集中するリソース確保のためにも「リーガルテック」を理解し、ここで紹介したリーガルテック各サービスをご活用ください。


なお、GVA TECH株式会社では、本記事でご紹介した AI-CON や AI-CON 登記など、契約業務や登録業務に関するリーガルテックサービスを提供しています。ぜひ、本記事と合わせてご覧ください。


AI-CON

契約書のレビュー支援サービスです。PDF や Word 形式の契約書データをアップロードすると、AI を用いて契約条項ごとに5段階で有利・不利のリスクを判定し、そのリスクの内容や典型的なトラブルの説明に加えて修正例や修正意図などを提示します。不足している条項を洗い出すこともできます。2019 年9月3日現在で全 16 類型の契約書に対応しています。

詳しくはこちら


AI-CON登記

法人登記の申請支援サービスです。会社の本店移転や、募集株式の発行(増資)、代表取締役の住所変更、商号変更といった法人の登記申請を、一般的な司法書士への依頼より安価に、スピーディに行うことができます。

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