経革広場は、地域や組織の変革に取り組む人たちがつながる場です。変革に取り組む人の日々の活動やノウハウを発信し、地域や業種や世代にとらわれない連携を促進します。

家具とITの融合で生まれる購入でもレンタルでもない新たな小売のかたちとは?

次世代リテール研究所 ~第二回 町野健氏~

次世代リテール研究所では、どうすれば地域の小売りがもっと元気になるのか?という悩みの答えを探すため、次世代のリテール作りに取り組む方々に考えを語っていただきます。
家具のサブスクリプション型販売サービスの開始、音を奏でるテーブル「SOUNDTABLE」の販売といった家具×ITを融合させたサービスや商品を生み出すKAMARQ(カマルク)。
KAMARQ HOLDING Co-founder and Director町野健氏に、新たな販売サービス「サブスクリプション型販売サービスの強み」や今後の小売りの未来ついて語っていただきました。

町野 健氏

大学院卒業後、日本ヒューレット・パッカード株式会社の入社。2003年株式会社マクロミルに転職し、2012年にマクロミル代表の杉本哲哉とともに、株式会社グライダーアソシエイツを設立。「Antenna(アンテナ)」をスタート。2015年建築家でデザイナーの鄭秀和氏、インドネシアに工場を持つ和田直希とともに家具ブランド「KAMARQ(カマルク)」を立ち上げる。

IT業界から未経験の家具を取り扱うインテリア業界へ

―まず、KAMARQさんへジョインしたきっかけを教えてください

町野さん

創業者の和田はKAMARQを立ち上げる前にインドネシアで家具の製造業をおこなっていました。和田が何か新しいことをしようと考えている時に知人を介してだったのがきっかけです。

私自身IT業界にそれまで勤めていたので、家具というサイズも大きく少し特殊な分野に戸惑いましたが、直感的におもしろそうだと感じジョインし、2015年からプロジェクトは動き出しました。

―新しい分野への参入に不安はありませんでしたか?

町野さん
新しいことをするには必ず不安が付きまといます。しかし意外と、その業界ではない人が参加することで新しいものが生まれることがあります。不安と新しいものが生まれることは表裏一体だと思うので、不安はありましたが覚悟を決めました。

―IT業界からインテリア業界へと大きく変わりましたが、戸惑うことはありませんでしたか?

町野さん
たくさんありました。やはりモノ作りは大変です。IT業界のスピードはとても速いです。一方で、モノづくりのスピードは開発から販売まで一年近くかかることもあります。そこのギャップにまず戸惑いました。

IT業界の時には問題点が出ればすぐに解決することが必須でしたが、モノ作りは販売までに時間がかかるので、問題点が出たとしても解決までに時間がかかります。これは焦ってもしょうがなく、周りも一緒の条件だと思うので、その中でいかに早く問題点を解決していくかを重視しています。

―KAMARQさんは、シンガポールに拠点がありますが、シンガポールに拠点でのメリットは何ですか?

町野氏
私たちは海外に拠点があるので、海外進出にまったく抵抗感がありません。契約書などの細かな部分もすでに英語などで作成しており、ベースがしっかりしているので、すぐに対応することが出来ます。そういう意味で、ほかの企業に比べ海外への進出がしやすい点はメリットといえます。

―逆にデメリットはありますか?

町野氏
デメリットとしてはリソースが分散してしまうことです。各々が離れているので、情報などがバラバラになってしまい、コミュニケーションがどうしても取りにくい点です。
その対策として、メンバーの日々やっていることの共有を大切にしています。経営陣も密に連絡を取るなど、意識的に交流を深めることで、情報の共有を図っています。

家具業界に新たに取り入れた購入でもレンタルでもない新たな販売サービス

―サブスクリプション型販売サービスを取り入れるきっかけは何でしたか?

町野氏
私たちは家具業界で革命を起こしたいという思いが強くありました。創業時もたくさんの製品を開発しましたが、革命とまではいきませんでした。そんなときに、海外のベンチャーイベントに日本企業で初めて招待され、そのイベントの中で海外では多くの企業がサブスクリプションに取り組んでいることを知りました。

そこで、家具でもサブスクリプション型の販売をするとおもしろいのではと考え、ビジネスモデルを検討し始めました。もともと家具のサブスクリプションは家具の大きなサイズや購入頻度が少ないといった特性上、手間がかかると思われていました。
だからこそ挑戦することが面白いと感じましたし、またビジネスモデルとして成立すると分かったので始めました。

家具は良いものは値段が高いですし、買うとそのままにしがちです。その不自由感がサブスクリプションを取り入れることで、気軽に新しいモノや違う家具に交換できる機会を作ることができ、自由に感じていただけると思います。

―サブスクリプション型販売サービスの強みは何ですか?

町野氏
利点はいつでも新しいモノや違うものに交換でき、初期費用が安くなることです。何十万もかかる家具が月に5千円ほどで自分のものとして使えることが大きいと思います。これは利用者に好評でしたし、そこが一番使ってみようかなと思うきっかけになったと思います。

―KAMARQさんがサブスクリプション型販売サービスを通じて利用者に伝えたいことは何ですか?

町野氏
家具は非常に不自由でめんどうくさいモノで、日本では一生に買う回数も少なく同じものを古くなっても使い続けたり、自分の好みではなくても安いからと購入します。しかし、海外ではこれは一般的ではなく数年に一度は買い替えることが当たり前です。

新しい洋服を着てワクワクするように、家具を変えることは、部屋の雰囲気も一変私たちに新鮮な気持ちを与えてくれます。そういう意味でサブスクリプションを通して、家具を変えた時のワクワクを消費者に提供したいと思っています。

―今後重視していきたいことは何ですか?

町野氏
今はサブスクリプション型販売サービスをもっと浸透させたいです。そのために、今は法人様や個人様両方に言えますが、地道に啓蒙活動していくことが大切だと思います。まず使ってもらって、メリットはどうですかと。メリットが分かってきたらそのメリットをしっかりと周知させていく。こういったことが、地道ですが、どういった分野でも非常に大切だと思います。

これからの小売について

―IT化していく中で小売が手を付けられていない分野はどの部分だと思いますか?

町野氏
購入した顧客との関係をIT化するために会員カードなどもありますが、出来ていないと思います。家具業界では主に家具を購入すると同時に顧客との関係が終了します。顧客との関係をもっとIT化することで企業側からの提案ができるようになるなどより良いサービスを顧客に提供できるようになると思います。

―KAMARQさんでは何かその点に対して取り組んでいますか?

町野氏
KAMARQでは会員にならないと買えないので、家具を購入すると同時にコミュニティに顧客が入るので顧客との関係を継続的に続けることが出来ます。購入後も、もし買い替える時もKAMARQへの連絡が必要となるので、こちらからの提案が可能となります。

―注目している企業や参考にしている企業はありますか?

町野氏
必ずしも他者を参考にすることが、イノベーションに繋がるわけではないため、特に参考にしている会社はありません。参考にしていく中で、成長することもありますが、私は参考にするだけではその企業の真似事になってしまうと思うのでなるべく私たちならではのやり方でやっていこうと思っています。

―地域発の小売りの可能性どういったところにあると思いますか?

町野氏
地元でやるからこそ強みがたくさんあります。地元でしか買えないおいしいものはたくさんあります。だから、地元最適化が大切だと思います。

この前テレビで見たのですが、あるトウモロコシを売っているお店が朝一で取れたトウモロコシの糖度が上がるという強みを生かすために、朝三時から収穫をはじめ、七時から販売をすると2500本近く売れるそうです。こういった工夫は当たり前に見えますが、大手には出来ない強みです。こういった自分たちの強みを理解することで地域にしっかりと密着することが大切だと思います。

―これからの小売に必要なキーワードを一言で表すと何ですか?

町野氏
「動的囲い込み」だと思います。お客さんは毎日小売で買い物していると思いますが、今はお客さんを囲い込むために会員カードなどの方法しかありません。ただ、会員カードを配るという受け身ではなく、動的にすることが必要だと思います。会員カードではなくITでもアナログでもいいので自らお客様を囲い込むことで、また来たいなと思わせる必要があると思います。

―具体的には何か思いつきますか?

町野氏
例えば、試食コーナーがありますよね。あれを10人ほどが食べられる試食コーナーにし、そこでしか食べられないおいしい食材を無料で食べられるようにする。その代わりにコミュニティに入ってもらうようにすることで、コミュニティの輪を広げていき、そこのコミュニティでまた新たな情報を発信していく。

このコミュニティに入ってくれた人たちに良いものを継続的に届けることで、その企業に信頼感が生まれるとお客様からアドバイザーに変化していくと思います。こうして輪を広げていくことは当たり前のように見えて、行っている企業は少ないと思うので、キーワードは「動的囲い込み」です。

編集後記

「アイデアとは既存の要素の組み合わせである」というが、町野氏のように異業種へ挑戦することで、誰も手につけたことのない領域に取り組むことができ、さらにこれまで誰も経験したことの内容な喜びを顧客に提供できるのだということがインタビューを終えての感想です。

KAMARQ社が取り組んでいるサブスクリプション型のビジネスモデルは、モノのソフトウェ化・サービス化が進む中で増えてくるビジネスモデルと言われています。「家具は所有するもの」という時代から、「家具を利用するもの」という価値観を受け入られる時代においては、利用を前提とした顧客への提案が可能となる。ユーザーからしても欲しいけれども所有するにはハードルが高いものが体験することができメリットは大きい。

なによりもサブスクリプション型のビジネスモデルの利点は、顧客と繋がっていられることです。「動的囲い込み」と町野さんはキーワードとして挙げていただきましたが、次世代の小売を考える上のヒントとなれば幸いです。

サブスクリプション型販売サービス:
物やサービスではなく「利用期間」に費用を「定額」で支払うサービス。KAMARQでは月々の利用料を支払うだけでKAMARQのオリジナル家具を使いたい期間だけ利用でき、ライフサイクルに合わせて、家具を他のものに交換できるサービスを提供している。

(編集:一般社団法人日本中小企業情報化支援協議会 櫻木諒太 文:早川佳佑)

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