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第2回 経営改善のためのIT活用法

1. 経営革新への要請

前回において、今後の中小企業は自助努力を求められるということを述べましたが、これは国の施策にも明確に表れています。平成11年7月2日に施行された「中小企業経営革新支援法」の目的は『中小企業の自助努力を基本とする経営革新支援及び経営基盤強化の支援の実施』とされています。この法律は平成17年4月に、「中小企業の創造的事業活動の促進に関する臨時措置法」、「新事業創出促進法」と統合され、異業種の中小企業が相互に連携して新規の事業活動を創出する『新連携』への支援をも加えたものとなりました。

この制度は、これから創業を考えている個人、新製品の開発や新事業の展開を意図する企業、他の企業と連携した新たなビジネスモデルの構築を企画している企業等に対し、経営面・金融面及び税制の面で国や自治体が支援するというものです。具体的には都道府県の窓口に計画の承認申請を行って承認を受けることとなります。実際に支援を受けて積極的に事業を展開している中小企業も多数あるようです。

イノベーションなどというと何か画期的でセンセーショナルなものに聞こえてしまいますが、どのような企業でも環境変化に適応していかなければその存続さえ危ぶまれます。経営革新といっても、自社にとって新規の事業あるいは新たな業務プロセスの取込みであればそれでいいのです。小さな変化でも、会社が一丸となって実現のための計画を策定することに大きな意義があります。経営革新を目指して承認申請にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

経営の改善にとってITは大きな力になると思います。自社の現状をよく分析したうえで、小さなことからでも改善の糸口をみつけることが大切です。経営改善を視野に入れた身近なIT活用法について考えてみましょう。

2.OAとMI

パーソナルコンピュータの普及とともに、電話機、ファクシミリ、コピー機等のオフィス機器が安価で便利なものになりました。そこで、オフィスオートメーション(OA)への取り組みが中小企業においても活発になりました。コンピュータの導入に関しては、販売管理業務や購入・在庫管理業務への導入から入って、給与・人事管理や財務会計業務へと進んでいくのが一般的であったかと思います。また、建設関連業ではCADシステムの導入も進みました。

ここで注意すべきことは、OAとは文字通りオフィス業務の自動化による効率向上であり、決して経営全般の本質的な改善ではないということです。納品書や請求書の発行業務がコンピュータの導入により手書きの時代に比べて迅速かつ正確に行われるようになったことは確かです。しかし、それによって経営の改善がなされたとはいえません。OAによって人件費が節減できるのではという期待もあったと思いますが、『コンピュータを導入しても人は減らなかった』というのが実態だったと思います。

IT活用をこの延長線上で進めても、やはり好ましい結果は得られないと思います。業務の効率化ではなく、イノベーションとまでは行かないまでも、MI(マネジメント・インプルーブメント)、つまり経営の改善という視点からのIT活用を考えるべきです。

簡単な例を挙げます。販売管理の業務ソフトを導入している企業では、得意先別の売上高や売掛金残高の一覧表を出力して利用していると思いますが、商品(製品)別・得意先別の売上一覧が出力できるようになっているところは意外に少ないのではないでしょうか。企業会計においては月別や年間の合計売上高及び売掛金残高の取引先別内訳は必要な項目ですが、商品(製品)別・得意先別の売上高は要求されていません。しかし、企業経営にとっては後者のほうがずっと有用な情報です。

基礎データのインプット段階で必要事項は入力済みのはずですから、それを活用しない手はありません。商品(製品)別・得意先別売上高のマトリックス表を時系列で比較すれば、自社の商品・市場戦略の改善点がみつかるはずです。業務の効率化の観点や制度上の必要性からではなく、経営改善の観点からIT活用に取組めば、必要とされるアウトプットも変わってくるはずです。

このようにIT活用といっても、何が何でもイントラネットを構築して、社外から営業社員がリアルタイムで会社のデータベースにアクセスできるシステムにしなければならないというものではありません。自社の経営改善のためにはどのようなアウトプットが必要か、現在利用している業務システムからのアウトプットで足りないものは何なのかを考えるところから進めるIT活用もあるはずです。

また、社内の情報共有を図る目的で社内LANを構築するにあたっても、今ではそれほど大きな設備投資は必要ありません。サーバマシンも安価になっていますし、ソフトウェアも小規模企業用のものが市販されています。むしろ業績向上のためにはどのような情報の共有が必要なのかをじっくりと考えることのほうが先決です。

例えば、『顧客へのサービス向上』という視点から経営改善を考えれば、営業担当者が顧客にとって有益な情報をタイムリーに提供する仕組みをどうするか、顧客からの問合せを受けた場合のスムーズな対処のための仕組みはどうするか、継続的なアフターフォローはどのように実施するか等々の問題を解決する必要が生じるでしょう。このような課題を全てクリアするモデルが構築できれば、コンピュータシステムはうまく稼働するでしょう。

経営改善のために解決しなければならない課題を明確にして、問題解決のためにどこでITを活用するかというのが中小企業のIT活用のポイントであると思います。ITはあくまでもツールであり、経営者の思いを実現するための手段です。

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