地域や企業にデジタルトランスフォーメーションを実現するための情報をお届けします

第1回 ITと中小企業の現状

1. ネットワーク社会の到来

今から30年以上も前になりますが、私が2年ほど勤務していた某私立大学には、当時ミニコンピュータと称されていた電子計算機がありました。ミニコンピュータと言っても、中央演算装置、入出力装置及び記憶装置がそれぞれ相当に大きなもので、空調の利いたコンピュータ室に鎮座していました。その処理能力は現在のパソコンとは比較にならないほど惨めなものでしたが、その当時はとても大事にされていました。夏の暑い時にエアコンで涼んでいられたのはこのミニコンピュータだけでしたから。

その後の30年間のコンピュータ技術の進歩には目を見張るものがあります。また、昔はアセンブラ(機械語の意味を表記する略語)でプログラムを組んでいたものですが、今では人間の言語により近く非常に使いやすいアプリケーション開発言語が登場しています。高価だったコンピュータが今では10万円前後で購入出来て、ちょっと努力すれば大抵の要求に応えられるアプリケーションの開発が可能です。電子卓上計算機が20万円以上もした時代と比較すると隔世の感があります。

更に、今世紀に入ってからは『ブロードバンド』と言われる通信技術の進歩により、インターネットを介した大容量の情報交換が可能になりました。今ではIT(情報工学)と言うのも古いのかもしれません。某社のコマーシャルにもあるようにICT(情報通信技術)が喧伝される状況が現出しているところです。インターネットがなければ仕事が出来ないという人も多いのではないでしょうか。

バブルが弾けて日本全体が長引く不況から脱却できないままに21世紀を迎え、政府はITの活用による経済活性化を目指して2001年に内閣府にIT戦略本部を立ち上げました。年初に施行されたIT基本法に基づいて、「5年以内に我が国を世界最先端のIT国家にする」という目標に向かって動き出してから7年が経過しましたが、その間に様々な施策が実施されてきました。

「特にブロードバンド環境については、2003年には、高速インターネットの利用可能世帯数はDSLが3,500 万世帯、ケーブルインターネットが2,300 万世帯、超高速インターネットの利用可能世帯数は光ファイバが1,770 万世帯に達し、e-Japan 戦略の掲げるインフラ整備目標を短期間で大幅に上回る成果を上げた。」(平成17年5月総務省:日本のICTインフラに関する国際比較評価レポートより)との報告もあります。

また、2006年1月にIT 戦略本部で決定された『IT新改革戦略』においては、2010年度までに対象行政手続きのオンライン利用率 を50%とするとの目標と定めています。電子入札や電子申告の制度もその一環であり、今後の国民生活にも大きな影響を与えるものとなるでしょう。

2. 中小企業の現状

このようなネットワーク社会の到来に対し、大企業は早くから巨費を投じて対応に努めているようですが、大方の中小企業では対応がなかなか進んでいないのが現状でしょう。経済のグローバル化が進む中で中小企業と大企業の格差の拡大が問題視されていますが、デジタルデバイドがこの状況にさらに拍車をかけるのではと危惧する声も聞かれます。

1999年に中小企業基本法が改正されましたが、この改正について2000年版中小企業白書では、以下のような解説がされています。

「従来の基本法は中小企業と大企業との二重構造を背景とする格差の是正を政策理念としてきた。経済自体の不確実性が増大する中で、大企業の優位性が崩れ、中小企業の多様化が進展している。このため、中小企業を画一的に「弱者」ととらえ、一律に底上げを行う施策はもはやその有効性が低下しており、見直しが必要となっている。改正中小企業基本法では『多様で活力ある中小企業の成長発展』を提示している。中小企業者の自主的な努力を前提としつつ、①経営の革新及び創業の促進②経営基盤の強化③経済的社会的環境の変化への適応の円滑化を政策の柱としている。」

政府税制調査会が少子高齢社会における税制のあり方に関して、「高齢者を画一的に弱者とみる時代は終った」としていたことと似ているような感じがしないでもありません。しかし、日本社会全体が護送船団方式では立ち行かなくなってしまったことは確かであり、今後は中小企業に一層の自助努力が求められ、優劣の差が明確になる時代に入ったと言えるでしょう。

中小企業基本法の定義によれば、日本の企業の99%以上が中小企業です。ところが、財務省の法人企業統計によれば、企業数ではほぼ99%を占める資本金1億円未満の法人の付加価値額合計は、全法人の付加価値額合計の半分程度に過ぎないことがわかります。
しかし、日本経済を下支えしているのはこれら多くの中小企業であり、中小企業が活性化しなければ日本経済の活性化もあり得ないでしょう。

このような状況の中で、中小企業はどうIT化に取組めば良いのでしょうか。大企業のようにIT化のために巨額の投資をすることは無理でしょう。システムを適切に運用管理する人材の確保も大変です。それでも、中小企業には大企業と違ったIT化の方法があるはずです。現在のように情報通信技術が進み、パソコンさえあれば相当な業務がこなせる時代においては、小さな投資で大きな効果を生むことも不可能ではありません。

現に中小企業におけるIT活用の成功事例がいろいろなところで紹介されておりますが、ここでは小企業でもチャレンジできる経営革新に目を向けた身近なIT活用について考えてみたいと思います。

SNSでフォローする

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

CAPTCHA