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第1回 いまさらのOA化

全国IT推進研究会に所属する税理士の田中久喜です。

 私は、現在京都で税理士事務所を開業していますが、初めに私とコンピュータとの出会いについてのエピソードからお話します。

 私は、大学卒業後、食品メーカーに入社し、営業部門を経て3年目から経理部に配属されました。当時、会社はホストコンピュータで基幹業務を集中処理している時代でした。したがって、自部門の処理は手作業で行っており、転勤後の私に課せられた仕事は、手作業でしている経理処理を機械化すること、つまりOA化することでした。

 今のように大容量のパソコンが売られている時代ではありませんでしたから、OA化はオフコンに端末がぶら下がるという形で進められており、パッケージソフトも存在していませんでしたから、未完成な経理システムのテスト運用が行われているという状況でした。

 一方、私自身も経理部に配属されたもののコンピュータはもちろん簿記や会計の知識があるわけでもなく、手探りでのシステム開発と会計の勉強という日々を過ごし、3ヶ月後、なんとかシステムの運用を開始できました。

 しかし、今度は、部内の人達(特に年齢が高い人)の抵抗です。機械処理することにより、自分たちの仕事がなくなるかのような勘違いから起きたものですが、そうではないということを説得するのが、システム開発より大変な仕事でした。上級システムアドミニストレータ試験のエンドユーザコンピューティングについての記述問題で、そのときの苦労話と愚痴を書いたら合格できたくらいでした。

 昭和の当時は、何とか手作業をコンピュータ化するというOA(オフィスオートメーション)の発想が主流を占めていました。コンピュータの導入の稟議書を書くにも、この業務をコンピュータに置き換えると「これだけの時間が短縮できる」とか、「5人でしている仕事が4人でできる」とかというように、かけるコストに見合うコスト削減を迫られていました。そういう意味では、中間層の人達が抵抗するのも無理はありませんでしたが、手作業をコンピュータ化しただけでは工数削減にはつながらず、むしろ人員が増えるということも多々ありました。

 これは、現状の仕組みをコンピュータに置き換えようとするから、最終的には複雑なシステムになったり、人間が何回もチェックしたり、外部のデータをシームレスに活用できないという問題を抱えることになってしまうからです。

 平成の現在でも、中小企業にシステムを導入する場合に同じようなことは起きていないでしょうか?

 「日本企業のIT化は終わった」と言われた時代もありますが、小企業の場合、IT化というよりまだOA化が終わっていません。

 確かに、パソコンの低価格化に伴いほとんどの企業にパソコンは存在しています。しかし、そのパソコンが経営に活かされていることは稀なのが現状ではないでしょうか。

 例えば、私たち税理士が自計化(パソコンソフトを使って会計入力を自社でしていただくもの)を勧め、導入していただいても、伝票入力までの過程が手書きの時代と変化することはほとんどなく、ただ、資料を会計事務所に渡していたものをご自身で入力されているという単にお客様のご負担が増えている場合が多いように感じています。これは、自計化を進める我々会計人にも責任があることですが、処理の前段階の仕組みを見直すことを行わずにシステムを導入するからです。

 まずは、自社の業務の標準化を図り、生産性向上につながる仕組みを考えることから始め、その上で、手作業を業務アプリケーションや表計算に置き換えるという手順を踏むことが必要です。

 「ITの活用は目的ではなく手段である」とよく言われます。そのことに反論はありませんが、資金に余裕がなく、ITに精通した人材も不足する小企業にとっては、限られた『手段』を如何に活用し、それにより生産性を上げ、顧客拡大など収益向上につなげるかが重要です。

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