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第3回 社員のアクションを促す仕組み「オープンブックマネジメント 」

コラム・連載

こんにちは、会計人ITコーディネーターの前澤三恵です。
前回までは、経営を会計に活かす為に税務署や銀行に提出する為の決算書に加えて、管理会計をとりいれる為のヒントをお話いたしました。
今回は、実際に上がってきたデータを使って、社員のアクションを促す仕組み「オープンブックマネジメント」についてお話したいと思います。

経営指標が迅速にあがるようになった。しかし、その後の行動に結びつかない。
こんなことないでしょうか?
踊る大走査線の名台詞ではありませんが、事件は会議室で起きているのではなく、事件は現場で起こっているのです。社員の方の現場の小さな判断、小さなアクション一つずつが、最後は大きな結果となって現れるのです。

「うちの社員は危機感がなくって困る。」
「うちの社員は当事者意識がなくって困る。」
「うちの社員は○○で困る」という言葉が経営者の口から発せられるのを、よく耳にします。
この言葉を聞くたびに、つい最近まで社員の身だったわたしは、「なんだかちょっとフェアじゃないなぁ。」と思うのです。多くの中小企業の社員の方にとって、自社の経営の状況は想像でしかわかりません。せいぜいわかるのは売上くらいなのですから、どんなに社長が口を酸っぱくして危機感をあおっても、目隠しをされて、走らされているようなもの。疑心暗鬼になるのが当然です。

「だったら、目隠しをはずして、現実に直面していただこう。」というのが、「オープンブックマネジメント」という経営手法です。オープンブックとは、ブックつまり簿記・会計を開示して、全員参加型で経営をしていくマネジメント手法のことをいいます。
特に前回までにお話した、会社にとっての最重要課題である指標の向上と社員の報酬アップを連動させることでその効力を発揮します。

例えば、粗利高の最大化が最重要課題であれば、一定の粗利高を超えると、利益に連動した報酬(インセンティブ)が支払われるようにするというような仕組みです。
例えば、ホリディ・インというホテルグループでは部屋の稼働率が一定水準を超えている限りボーナスを支給しているそうです。ある歯科医は、患者数が一定水準を超えると当日にボーナスをあげる仕組みにしてから、スタッフが予約の組み入れに工夫をするようになったということもあります。

さて、オープンブックマネジメントを導入するときの4つのポイントを挙げてみました。

1) あくまで全員が参加できるような形にすること。
営業の担当者だけが参加できる形やある部門だけが参加できるものだと、かえってそれ以外の方のやる気をそぐ可能性があります。全員が参加できる形を模索するのがいいでしょう。

2) 会計に関する従業員教育をすること
以前、会計情報を開示している会社の社員の方にインタビューしたときに痛感したのがこれです。「確かに試算表も決算書も見せてもらっていたけど、周りにその意味がわかっている人はいなかった。」ので、「オープンブックになんの意味も見出せなかった。」といっていました。会計というのは、苦手な方、目を背けたくなる分野であるので、少しずつ、身近なところから、会計を理解できるような教育をすることが重要です。
まずは興味をもってもらうところからはじめるといいかもしれません。
例えばサウスウェスト航空では「当社が昨年度に支出した事務用品代の総額は?」などといったクイズをだして、旅行券をプレゼントすることで、コストデータへの関心を喚起したのだそうです。

3) 社員に権限を与えること
大企業でもなかなか難しいエンパワーメント、権限委譲ですが、中小企業ではなおさら難しいですよね。たたき上げの社長にとっては、社員の判断するものはすべて自分が通ってきた道ですから、社員の判断が未熟に見えて仕方がないはず。
「お前に任せるといっておきながら、すべての提案にノーを言うんだよなぁ。」とやる気をなくしてしまう社員の方も多いでしょう。
ここで重要なのは、社員が判断する為のヴィジョン、戦略をはっきり言葉にして示すことです。拡大が重要なのか、質が重要なのか、大手を狙うのか、個人がターゲットなのか。その戦略の部分をはっきりさせることで、社員が自分で判断しやすく、行動しやすい風土をつくることが大切です。

4) インセンティブの制度がフェアで、わかりやすいものにすること。できるだけ多くの人が結果に影響を与えられるものを目標にすること。
一部の営業社員が個人別にもらえるインセンティブとは別に、多くの人が結果に影響を与えられるものを目標にするといいですね。一部の社員だけ、一部の部門だけが貢献できるものであると、その他の社員のやる気をそぐ可能性がでてきます。

さて、今回はオープンブックマネジメントについてお話してきました。

私の経験からすると、経営をオープンにするのは、自分の裸をさらけだすような心理的な抵抗感があります。しかし、いったんオープンにしてしまうといままでになかった安堵感を感じます。会社の風通しがよくなり、透明性が確保されることで、御社が益々発展されることをお祈りいたします。  

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