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会社分割無効訴訟は怖くない 第 2 会社方式で気をつけてほしいこと ②

コラム・連載

4 第2会社方式の事業再生で気をつける点について

窮境に陥った中小企業を再生しようとする場合、会社分割や
事業譲渡を活用して、要するに別会社を新設したり既存の別
会社を利用したりして事業を承継させることが多い。その際、
もとの分割会社や事業譲渡会社はいずれ破産処理で償却す
ることを想定しており、結局もとの会社の債権者(多くは銀行な
ど金融債権者)は新事業体の収益からは債権を回収できなく
なる。

もとの会社の債権者が債権回収をはかろうとする場合、
①事業を承継した会社(新設会社・吸収会社、事業譲受会社)
に対し、法人格否認の法理や信義則を使って履行請求訴訟を
提起する方法、
②分割会社や事業譲渡会社に対し債権者破産の申立をして
破産管財人を使ってもとの会社に資産を戻させ破産配当に預
かる方法、の二つが実効性がある。
逆に言うとこの二つの手段が再生会社からすると脅威となる方
法だと思われます。

①②いずれの場合も、もとの会社から承継会社に対する資産・
負債の移転が的確に財産評価されているかどうか、適切な対
価がもとの会社に交付されそれがもとの会社の債権者の弁済
に供されているかどうかという点がポイントになります。裁判所
はもとの会社の財産が不当に流出して会社債権者を害してい
ないかどうかに注目します。事業継続中の財産の評価ですから
清算価値でなく存続価値で評価しなければなりませんし、暖簾
なども評価することを求めることが一般です。この点で弱点があ
ると承継会社がその埋め合わせをすることが必要になります。
逆に訴えられてもその後承継会社が利益を出すことが可能で、
異存を述べてきた債権者と和解可能ならば、やり得と非難され
るかもしれないが承継会社による事業再生は成功する可能性
があるということです。

次に、もとの会社と承継会社の実質的な経営者や株主構成と
いう点でみて承継会社がもとの会社と同一でないかどうか、とい
う点が訴訟では注目されます。承継会社の代表者や株主がも
との会社の経営者の一族や関係者で占められている場合は
疑って見られます。中小企業の場合、経営者が重要な経営資
源となり代表者なくして企業存続が考えられないという場合が
多いようです。その場合は詭弁を弄することなく、もとの代表者
が承継会社の実質的な代表者をしていることを隠さず、それで
もなお当該事業再生が経営者の私利私欲によるものでなく、
企業価値や雇用を守る積極的な意味があるのだという点を裁判
所に積極的にアピールしてゆくのがよい。そうすればどこかで和
解できて事業継続が図れるというのが私の実感です。事業譲渡
で譲受会社が譲渡会社の商号を続用する場合、単に債務不承
継の登記をしてあるから譲受会社が譲渡会社の債務を承継しな
いとか、会社分割で組織法上の行為だから詐害行為取消権は
成立しないとかの形式論だけでは、裁判所は納得しないことが
多い。裁判所は事案をトータルにみて承継会社を残すべきか否
かという大局的な発想から結論を決めることが多いと思っておい
た方がよい。

第3に、もとの会社(分割会社や事業譲渡会社)を破産させる場
合、もとの会社の債権者による破産申立よりも、もとの会社の自
己破産の申立の方が、その後の破産管財人の事業再生への協
力を得やすいことを知っておいてほしい。これはどういうことかとい
うと、破産管財人は破産会社の総債権者の代理人で、決してもと
の破産会社の守護者の立場の機関ではありません。もとの会社か
ら分割新設・吸収会社や事業譲受会社に対し財産の不相当な
流出があると認知すれば、裁判所の許可を得てその取り戻しをし
てきます。債権者の申立で選任された破産管財人ならその傾向
が顕著になります。他方、もとの会社の側が、債権者の疑惑を解
消するために自ら破産を申し立てて破産する場合、もとの会社の
経営陣が破産管財人に事業再生に至る経過や心情を説明でき
ます。破産管財人も人情がありますから、窮境に陥ったもとの経
営者が事業存続を思って行ったことなら相当程度もとの経営者
の心情を察してくれます。破産管財人が破産債権者と事業承
継会社の中に入って双方が歩み寄れる着地点を見つけてくれ
ることが多い。破産管財人はある程度の期間に管財業務を完
了することが期待されており、破産手続では名目の債権額でな
く実際に回収できる額が基準となって和解するのが普通です。
ですからもとの会社の破産管財人は承継会社に対し、事業譲渡
や会社分割対価の不足分を請求したりしてきますが、承継会社
が直接に破産債権者と折衝する場合よりよほど廉価に話を付け
てくれることが多いのが実情だと思います。もとの会社の破産管
財人を活用して承継会社の事業継続を確実にするという発想が
意外と有効だと思います。

 

NPO東海事業支援機構理事 弁護士 佐久間信司

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