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事業再生奮闘記 ~台湾での不正調査3~

4.技術課長W氏へのインタビュー

警備会社から入手したデータには、土日に出入りしている社員のIDコードがハッキリと示されていた。

繁忙期でもないのに月に何度か、土日のどちらか一方、時には両日とも出勤している社員がいる。

技術部のW課長だ。

警備会社から必要なページのコピーを貰い、事務所に戻った。

日差しが強く明るいので勘違いをしそうだが、もう18時前だ。サラリーマンやOLの通勤の足は圧倒的に

バイクのようで、交差点で止まる車の前にざっと30台ほどのバイクが列を成している。

排気ガスがひどいのか、殆どの人がマスクをしている。良く見るとそのマスクも色とりどりで、日本では

見たことがないような、オレンジや赤、縞模様など個性豊かだ。

今日は我々監査人の歓迎会をしてくれるそうで、管理職の社員が事務所に居た。

W課長もその中の一人だ。監査人が接待を受けるのは本来は良くないのであるが、T社長の強い

勧めもあり素直に好意に甘えることにした。

案内されたのは、中山北路という大通りに面した上海料理の店だった。聞くところによると当地では、

上海料理=高級のイメージがあるそうで、客層もそれなりに見える。

乾杯の後は次々と料理が出てきた。W課長はちょうど私の真向かいに座っている。

最初は緑色の瓶に入った台湾ビール、そして紹興酒、更にはアルコール度数が50度以上もある高粱酒…

と酒盛りが続いた。自分でもかなり酔いが回っているのが分かるが、酔い潰れる訳にもいかない。

自分が酔っている以上に酔っているという演技をしながら、W課長の横に移動して話をすることにした。

家族構成などを聞きながら「満足な生活をするだけの給料が出ていますか?」と聞いてみた。

一瞬戸惑い苦笑いを浮かべて「T社長が厳しくて昇給も少ない…」と言う辺りは案外正直な性格

なのかも知れない。

話も弾み勢いでそのまま彼と二次会に行くことにした。KTV(カラオケ)に行こうと誘われたが、

静かな場所がいいと希望を伝え、クラブに行くことにした。

二人並んでカウンターに座った。幸い、カウンターには他に客は居ない。

「私が何を言いたいのか、理解できますね?」

警備会社の資料をW課長に見せながら、静かに切り出した。

W課長は、あっさりとアルバイトを認めた。「昇給しない分を自分で補ったのです」

この発言は、不正を行う動機の一つである『正当化』だ。

もう1年以上前からアルバイトをしている、とW課長は言った。金額にして500万円は下らないようだ。

台湾人の平均年収が100万元(約300万円)らしいので、500万円は決して少ない金額ではない。

そして金額は本人の申告であるから、実際はもっと多いのかも知れない。

W課長の言い訳と愚痴を聞きながら、私の頭は猛烈に回転し始めた。

・公認不正検査士は米国では一定の調査権限が与えられているが台湾ではそんな権限は無い
・そもそも泥酔状態での告白なので後から「意思無能力状態でした」と反論されるかも知れない
・A監査法人のクライアントの目的は、T社長による不正の有無であるはずだ
・そうだとすればW課長の協力を取り付けるのも悪くはない
・しかし、見て見ぬ振りも出来ない
・クライアントの意向をまずは確認するべしだ

W課長には、「悪いようにはしないから」 と言って今日のところは別れることにした。

以下、次号へ続く

 

(NPO法人 西日本事業支援機構 アドバイザー
公認内部監査人 公認不正検査士 寺島健二)

 

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