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事業再生奮闘記 ~台湾での不正調査4~

5.T社長の行状

東京本社に意向を確認すると、やはりT社長による不正の有無を確認してほしいという事であった。
W課長の処遇は一任すると言われた。

そこで、W課長を呼び出し、解雇処分にしない代わりに情報提供の協力をするよう要請した。
まずは、T社長の普段の行状を聞いた。

・毎日遅くまで会社に残り顧客、特に最近はS社のL社長と飲み歩く事が多い
・飲み歩いているので起きられないのか、出社はいつも昼ごろ
・昨年の社内の忘年会にも、T社長の招きでL社長が参加し、皆が当惑した
・T社長は金にとても細かいところがある
・国際電話をかける時にも相手先と時間を秒単位まで申告させられる
・日本に社員が出張する際にも成田空港から特急に乗る事を許さず、在来線での移動を厳命される(それで社員がよく迷う)
・社内旅行でフィリピンに行った際には商売の女性を社員に自慢げに見せて自室に招き入れた
・触られた女子社員もいるが、昇給させないと脅されるので皆、我慢している

数え上げれば切りが無いほど、次々に悪い話が出てきた。
解雇されたら困ると考えたのか、W課長も必死だ。

一般的に言って、金に異常に細かな人間は、自分が金を手にする事にただならぬ執着心を抱くものだ。
最近はS社のL社長と親しいようなので、S社との取引を徹底的に洗ってみよう。

普段は正午前後に出社するのに、私が来てからは連日9時にご出社だ。
何を調べられているのか、気になるのかも知れない。

6.通帳

まる3日かけて、この会社の過去5年の通帳や出金伝票を片っ端から調べた。
半年ほど前に大口の入出金があった。

1月19日 入金 Jリース会社 → 台湾販社 1,000万台湾ドル(3,000万円)
1月22日 出金 台湾販社 → S社 900万台湾ドル(2,700万円)

これは何だろう。普段の残高は多い時でも、3万台湾ドルしか通帳にはない。
1月19日の入金取引に関する伝票を見た。当社からJリース会社に機械を売却している。
その販売代金が入金されていた。

Jリース会社は台湾販社から機械を仕入れてそれを顧客にリースする。
しかし台湾販社はJリース会社に機械を売却すればそれで取引は完了だ。
この900万台湾ドルの送金は何なのか?せっかくJリース会社から機械代金を回収したのに、
なぜそれをS社に送金する必要があるのか?

とにかくJリース会社を訪問して話を聞いた。

驚いたことに当社から仕入れた機械のリース先は、S社であった。

ここまでの事実関係を掴んで、台湾販社に戻り調査を続けた。

・台湾販社は、経営難に陥っていたS社に900万台湾ドルを貸し付けた
・しかし金融機関でもない当該社が貸付をするわけには行かない
・そこで貸付の事実を隠蔽するために、S社との間に「割賦販売契約書」を締結した
・割賦代金の支払いという形で貸付金を返済してもらおう

こういう背景が見えてきた。

Jリース会社に売却した機械を、あたかも手元にあるかのように偽って
割賦販売契約を締結するという架空販売、二重売買を行っていた。
そして一般企業が貸付をすることは勿論違法である。

7.不渡り

割賦販売の割賦代金は、当地では手形で先に貰うのが一般的だ。
24回払い、即ち24枚の手形を徴求していた。
しかし最初の1枚がつい最近、不渡り処分になり銀行から返却されていた(退票)。

最初の手形が不渡りになったということは、後の23枚も現金化されない。
900万台湾ドルはこの会社にとっては大金だ。
W課長の小遣い稼ぎの比ではない。それなのに、なぜT社長はそのことに触れないのだろう。

東京本社に聞くと、T社長から不渡りの報告は入っている、
T社長もL社長の携帯電話に何度も連絡を取っているのだが
一向に連絡が取れないと言っている、ということだ。

念のためT社長が東京本社に送った報告のメールを転送して貰った。間違いない。
「割賦で販売した客先から回収した手形が不渡りになった」
「社長は連絡つかず台北に居ない様子」と報告されていた。

とにかく、架空販売の事実を報告しなければならない。

台湾に入って2週間になるが、一旦帰国することにした。

以下、次号へ続く

(NPO法人西日本事業支援機構 アドバイザー
公認内部監査人 公認不正検査士 寺島健二)

〒520-0033
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