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事業再生奮闘記 ~台湾での不正調査6(最終回)~

11.預金通帳

 

T社長をはじめ台湾販社の社員の預金は、南京東路にあるS銀行だ。そこに毎月の給与が振り込まれる。

 

経理部長経由でS銀行からT社長の預金の明細を過去1年分出してもらった。

 

昨年までは給与が振り込まれるとその当日か翌日にまとまった金額を出金している。平成18年の1年間は毎月そうだ。ところが平成19年の1月からは一切出金されていない。ただの一度も、出金した記録が無い。

 

平成19年1月と言えば、台湾販社がL社長の会社に900万台湾ドルを振り込んだ時期に一致する。あれから7か月の間、出金せずにどうやって生活してきたのだろう。

 

T社長は単身赴任で中山駅近くのK飯店という安宿に住んでいた。販社の経理部長を伴ってK飯店に行き、フロントの女性に事情を聞いた。T社長は毎月月末に、貸金庫から現金を出して、翌月のホテル代を精算しているそうだ。

 

12.結末

 

おおかたの調査が終了した。8月8日に成田を発ってから、4週間が過ぎていた。監査法人のMパートナーを通して東京本社に一部始終を報告した。

 

報告の2日後、東京本社からT社長の上司がやって来た。T社長はその翌日、上司と一緒に台湾を後にした。会社を出る前に彼は社員に挨拶をしていた。幹部社員の二人がエレベーターまで見送りに出てきた。涙をためているT社長を見て一瞬気の毒になったが、仕方が無い。彼の自業自得だ。

 

少々重い気持ちを引きずりながら、民生東路にあるホテルに戻った。このホテルにも本当にお世話になった。部屋で荷造りをしていると電話が鳴った。台湾販社の経理部長からだ。なんと、慰労会をしてくれると言う。

 

シャワーを浴びてホテルの前からタクシーを拾う。1か月半も居るので、日常の会話は何とか出来るようになった。

指定された杭州南路の海鮮料理店に行くと、社員全員が待っててくれた。あのW課長もにこにこ顔で座っている。これには思わず苦笑してしまった。何ともおおらかな国だ。

 

ビールで乾杯をした後は、紹興酒、高粱酒と続いた。丸テーブル二つに座った17名の社員全員と乾杯して廻る。3周廻ったところまでは記憶がはっきりしているが、それ以降は少々心もとない。

 

翌朝チェックアウトをしていると、社員がロビーに勢揃いしている。半数はいる。聞けば空港まで見送ってくれると言う。

 

一緒にバスに乗った。40分で空港に到着した。出境と書かれたゲートの手前でお別れだ。一人ひとりと握手をした。次は遊びで台湾に来いと口々に言われた。

 

〝我一定再来台湾〟(また必ず台湾に来ます)と言おうとするのだが、涙で声にならない。何度も握手をして、何度も振り返りながら、後ろ髪を引かれる思いでゲートをくぐった。

 

後日談であるが、T社長はそのまま帰国させられたそうである。台湾販社はL社長を詐欺破産罪で訴えることになった。

 

L社長はすぐさま中国に逃亡し、約1年後に、台湾の管轄裁判所宛に〝死亡届〟が中国から届き、裁判は被告人死亡により終結したそうである。

 

焦げ付いた900万台湾ドル(2,700万円)であるが、Jリース会社から格安で再仕入をしそれを転売することで、7割程度は回収できた。機械が新しいことが幸いした。

 

(NPO法人西日本事業支援機構 アドバイザー

公認内部監査人 公認不正検査士 認定事業再生士 寺島健二)

 

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