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事業再生奮闘記 ~台湾での不正調査1~

1.依頼

平成19年7月23日、ちょうど近畿地方の梅雨明けが発表された日の朝のことであった。旧知の監査法人A社のパートナーM氏から、クライアントである電気関連企業の台湾現地法人の内部監査を行って欲しいという連絡が入った。電話では事情が良く理解できず、とにかく会って話を聞いた。M氏の話の概要は以下の通りであった。

 

・台湾現地法人は設立7年目で年商は5億円。3年前からは毎年堅実に利益を上げており剰余金は1億円を突破している。

・創立以来赤字が続いていたが、4年前に東京本社から来た日本人社長T氏が粗利の取れない商売を切り捨て徹底した財務リストラを行った結果、売上は三分の二になったものの、現在のような高収益企業に生まれ変わった。

・毎年の監査でもここ数年大きな問題は見つかっていない。

 

こういう状況でなぜ内部監査が必要なのか?と尋ねると事情はこうであった。

 

・日本人社長T氏はやり手だが、社員からの人望もなく、日本人会でも良い評判を聞かない。

・架空売上やパーツ在庫の無断持ち出しが行われているという匿名の告発電話が入った。

・告発の内容が事実なら、自分たちの監査責任も問われかねない。

・そういう微妙な立場の自分たちが告発電話を受けて特命監査を行うのは、利益相反になり、コンプライアンス上好ましくない。

・東京本社からも数年に一度は監査役と監査部員がやってきて内部監査を行っているようだが、実態的には視察と称した観光となっている。

 

中小企業の経営者から事業再生の相談を受ける時にはしばしば感じることがある。それは「なぜもう少し早く相談してくれなかったのか」という事だ。この思いはおそらく他の再生実務家の皆様も同様ではないだろうか。こういう手遅れをなくそうという発想から、私どもは数年前から内部監査の相談にも応じている。第二会社や会社分割による債務の切り離しを「外科手術」とするなら、さしずめ内部監査は「健康診断」だ。自覚症状が出る前に問題を発見し、処方箋を書く。手詰まりになってから出来る事はたかが知れている。無理をすればどうしても債権者の意向を無視した対応を取らざるを得なくなる。そんな事をすれば債権者の反感を買い、時には訴訟に発展するなど、ろくな事はない。

今回の依頼は内部監査といっても不正調査に焦点を当てたものだ。東京本社からの依頼を受ける形になるとはいえ何とも気が重い。仮に不正が行われているとしてもほとんどの社員は真面目に働いているはずだ。それを刑事が現場にいる人物全員のアリバイを確認するが如く最初から全員を疑ってかからなければならない。まして私は中国語が出来ない。知っている単語は、ニーハオと謝謝ぐらいだ。

 

しかし「犯罪以外は何でもお請けします」「日本全国の社長様の悩みを解決します」と常日頃から公言し名刺にも刷り込んでいる以上、やる前から断る理由も見つからない。結局、我々はこの案件を請けることにした。M氏に押し切られたという方が正確かも知れない。要するに「あの社長は不安なので見てきて欲しい」という事である。

 

2.台湾へ

8月19日、関西空港から台湾に向かった。3時間弱で台北桃園国際空港に到着した。見るもの全てが珍しい。「入国」は「入境」、「荷物」は「行李」、「両替」は「換銭」というようだ。15年前に初めて韓国を訪れた時には、ハングル文字が一文字も分からず、食堂だと思って入った店がクリーニング店だった。中国語が分からなくても漢字を共有している有難味をしみじみ感じる。

 

到着して30分弱で空港ビルを出た。覚悟はしていたものの、暑い。暑いというより熱い。そして湿気が物凄い。熱帯の風が吹き抜ける。京都より四、五度は気温が高いのではないだろうか。

 

T社長が出迎えに来てくれていた。50代半ばの若々しい紳士だ。そんなに悪い人物には見えない。一緒にリムジンバスに乗り、ホテルにチェックイン。林森北路という日本人相手の歓楽街で台湾料理を食した。暑いので殊更ビールが旨い。中国語では「口偏に卑しい酒」と書いてビールになるそうだ。台湾語では「ビール」。日本統治時代の名残で他にも「満タン」「運ちゃん」「バケツ」などが日本語の音を借用した台湾語らしい。

➣以下次号へ続く

 

NPO法人 西日本事業支援機構 アドバイザー 

公認内部監査人 公認不正検査士 寺島健二)

 

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