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事業再生奮闘記 ~台湾での不正調査2~

3.調査開始

翌日は9時に事務所に入った。事務所は台北市内中心部、南京東路という大通りに面した商業ビルの中にある。事務所の前でタクシーを降りると、ビルの前に行列が出来ている。朝食の屋台だ。覗いてみると豆乳と揚げパンを売っている。台北高女と印刷されたカバンを持った女子高生が前に並んでいたので、英語で話しかけてみた。幸い勉強が良く出来る生徒だったようで、こちらの拙い英語を理解してくれ、オーダーの仕方を紙に書いてくれた。

 

事務所に入り自己紹介を済ませた後、早速内部監査に取り掛かった。まずは密告電話があったパーツの無断持ち出しの調査だ。

 

ここ3年の実地棚卸の結果を見せてもらった。なるほど年商の割には違算金額が多い。実地棚卸とは、帳簿上の在庫金額と実際に倉庫にある在庫金額が合っているかを照合する作業で、大きな会社の場合最低年に一度は行われている。数字が合うのが当然ではあるが、実際には失したり、急ぎの修理で伝票を書かずにパーツを持ち出したりで、どうしても多少の差異は生じてしまう。実際に存在する金額に合わせて帳簿の金額を修正するのが通常の会計処理だ。

 

許容範囲を超える違算金額=誰かが無断で持ち出したパーツ、という図式が見えてくる。しかしこの会社は完成品を扱っている訳ではない。カメラやパソコンなら持ち出してヤフーのオークションなどで販売する事も考えられるが、そういう換金の仕方は出来ないはずだ。考えられるのは、技術者が無断で持ち出し、会社を通さずに自前で修理を請け負う場合である。正式の処理では無いので保証の対象外だが、日本製のパーツは頑丈だ。滅多な事では壊れない。「半額にしておきますよ」と自ら修理を請け負えば依頼してくる顧客もいるだろう。

 

日本では余り考えられないケースかも知れないが、華僑は実質主義である。アルバイトをした社員も現金がポケットに入る。顧客にも喜ばれ自分も潤う。度を越さない範囲で適当にアルバイトをして稼いでくれれば賃上げ圧力もないので経営者も助かる。誤解を恐れずに言えばこれがこちらの人々の考え方だ。

 

パーツを持ち出すとして、まさか営業時間中に度々持ち出す訳にも行かないだろう。そうであれば土日だ。課長以上はキーを持っている。課長以上で技術のメンバーの行動をチェックすることにした。ビルの入り口は警備会社の遠隔セキュリティーシステムを導入している。個人のIDカードで出入りするので、警備会社に行けば誰がいつ出入りしたのかが判るはずだ。そう考えて、早速市内にある警備会社の本社に向かった。

 

警備会社の担当者に事情を話すとあっさりと過去半年間の出入りのログを見せてくれた。面倒な書類が要るのかと覚悟していたが、拍子抜けだ。この辺りは南国のおおらかさかも知れない。

➣以下、次号へ続く

 

NPO法人 西日本事業支援機構 アドバイザー

公認内部監査人 公認不正検査士 寺島健二)

 

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