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「働き方改革」「職場の生産性向上」の機運

コラム・連載

最近「わたし定時で帰ります」というタイトルのドラマが放映されています。朱野帰子の小説のドラマ化です。

ドラマのヒロインは、定時に堂々と帰ります。多くのビジネスマン、ビジネスウーマンが企業で働くなかで休むことを極度に恐れたり、家事と仕事のワーキングバランスに悩んだり、定時で帰ることに対するマイナス思考が働きます。そんな社員の意識を変えさせて、定時退社でも効率よく働き成果を出す!というテーマのドラマです。新時代の働き方とこれまでにない働き方の意識付けに着目しています。

「定時に帰る」という設定はこれまでの一般概念の「残業してでも成果を出す」と、正反対な取り組みになります。「そのようなことを他の社員が受け入れるのだろうか」、であれば「自分の居場所がなくなるのでは?」という心の葛藤を見事に描いているようにも見受けられました。

経済産業省は、補助金を通じて「定時に帰る」を推奨しています。「効率よく働き成果を出す」を支援する補助金として「IT導入補助金」の公募を始めています。(第一次公募のA類型の交付申請受付は6月12日で終了しており、B類型の交付申請受付は6月28日までとなっております)。公募開始が5月27日からでしたのでこれから応募する企業は、第二次公募を目指すことになります。

行政は、ますます「働き方改革」「職場の生産性向上」の機運を高め、厚生労働省からも「時間外労働時間改善助成金」といった時間外労働の上限規制導入に向けた支援策(こちらの締め切りは11月29日まで)が打ち出されました。

中小零細企業向けの施策は多様です。私どもNPO東日本事業支援機構は、多方面の専門家が在籍し、施策活用の最適化を指導しています。近時、IT導入補助金申請のアドバイスをする機会にいくつか恵まれました。その中の一つの事例ですが、ある企業で興味深い出来事が起こりました。

当該支援先の企業名や業種は匿名とさせていただきます。当該会社は、産業活動の基盤機能を支えている業種であるにもかかわらず、人不足が深刻化しています。長時間労働の是正やコンプライアンス順守を図るべく業務基準やガイドラインの見直しが行われています。このコラムの配信される頃には業界に通達される予定です。今後、労働時間の厳正な順守が徹底させるのは想像に難くありません。

このような課題を抱える企業に、顧問税理士から経理担当者に「今回IT導入補助金を活用してみてはどうか?」提案したようです。結果、企業の経営者と経理担当者、税理士事務所の担当者、IT導入支援事業者を交えて検討する時間を取ることにしました。

ところが経理担当と税理士事務所の担当者は、それぞれの上司である経営者と所長税理士をさておいて「手書きの作業を変えるつもりはない」、「補助金がでるとはいえ設備投資する費用が惜しい」とそろって頑なにIT化を拒み始めたのです。

規模こそさほど大きくはない企業ですが業績は決して悪いわけではなく、むしろ税理士目線から見ると設備投資を行うにはふさわしいタイミングとみえます。補助金制度を付けてまで進める政府の施策ですから、税理士事務所の担当者までも拒む場面には理解に苦しみました。あとからわかったのですが拒んだ理由は、先に挙げたドラマさながらの、経理担当も税理士事務所の担当者も「自分の居場所がなくなるのでは?」と意識した発言のようです。

この企業がIT導入補助金を活用するかどうか、経営者と経理担当の間での話し合いは現在も平行線のままだそうです。

IT活用や生産性向上に対する経営者と経理担当、所長税理士と事務所担当者とのそれぞれの考え方、温度差に驚かされました。この企業に限らずIT導入補助金の申請のように「新しいもの」や「新しいこと」を始めるにあたって、このような現場での意見の不一致は、業種や規模を問わず起こりえます。意見や考え方をまとめていくには、効率化のその先に企業と社員、お客様の満足度アップがあることをわかりやすく伝えることで解決の糸口が見つかるような気がします。

そういえば先に挙げたドラマの副題は「あなたは何のために働いていますか?」だったと記憶しています。

「働き方改革」と「生産性の向上」は企業経営の必須課題です。しかし、一方で容易ならざる意識改革と経営革新でもあります。そんな中小零細企業の改善や成長支援にも、私どもNPO東日本事業支援機構はお付き合いいたしますので!

執筆者

高巣 忠好氏
認定経営革新等支援機関NPO東日本事業支援機構 理事長

1971年生まれ。愛知県豊田市出身。
時計・輸入雑貨量販店・ベンチャー系卸売会社・輸入卸売会社に勤務。チーフマネージャーを務め、コンサルティングファームに転職後独立。
「過去を否定せず、時流に合った方針・計画に書き直す」=アットリライトを理念として中小企業の経営改革支援や事業承継、事業再生の指導を実践している。
認定経営革新等支援機関NPO東日本事業支援機構[関財金1 第145 号] 事務局長

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