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事業承継者に必要な「ありかた」とは?

私の所属するNPO東日本事業支援機構ではおかげさまで認定経営革新等支援機関となって1年4ヶ月がたちました。
最近、事業承継支援・アドバイスの案件が増えつつあり、私どもNPOにも数多くの事業承継に関する相談が寄せられます。
今回は、多くの二代目社長はもとより、新たに事業を承継する経営者様の抱える課題としてかならずといっていいほど挙げられる『事業承継者(次期社長)のありかた』について考えてみたいと思います。
相談のあった製造業(以下A社)を営む社長は、数年前に一度長男に事業承継を考えたものの断念し、長女を次期社長にと考えています。
私とA社は、私が独立する前のコンサルティングファーム時代からのお付き合いです。現社長から来期には事業承継を考えているとご相談いただいてから、A社の事業承継の過程を間近で見せていただく幸運に恵まれました。
まず、次期社長の現場への改善の取り組む姿勢や社員とのやりとりを見せていただき、現社長と次期社長の価値観の違いを認識しました。現社長の経営スタンスはいわゆるトップダウン経営、一方で、次期社長は経営スタンスとしていわゆるアメーバ経営をめざしています。
上記のような現社長と次期社長の価値観の違いによる、「現社長と次期社長の衝突」「その衝突による社長交代時期前後の社員の迷い」は、事業承継を行おうとする会社の大半で大なり小なり起こりうる課題といえます。しかし、A社では、次期社長決定後数ヶ月で、事業の承継を円滑に進めているのです。
成功要因として考えられるのは、実は、現社長と承継を断念した長男、次期社長として事業を承継しようとしている長女との「価値観の違い」がもたらした「摩擦」でした。
現社長は創業者ゆえに責任感が強く、「何でも自分がしなければ、決めなければ」といういわゆるワンマン経営者です。「指示を徹底」することこそ「自分の価値観を社員に共有」させていると考えて、トップダウン経営を徹底してきました。
この現社長のトップダウン経営の下で数年間、長男は専務として過ごしてきました。そのためか、「社長からの指示を部下に・・・」という傾向が強く、社長に主張・発言することもあまりありませんでした。現経営者が長男への承継を断念したのは、この姿勢を良しとしなかったためです。
一方で、次期社長である長女は、これまでA社に関わることなく、突然次期社長として入社しました。「意見・主張が違って当たり前」と、現社長や社員との摩擦を恐れません。加えて、主張・発言するからには一貫性を持ってやり遂げる責任感を備えており、試行錯誤しながら、最終的には社員も発言できる環境を作り上げたのです。
このような過程を間近に見てきて分かったことは、「意見・主張は違って当然」という長女の価値観を現社長が認識したことが、現社長のワンマン体質を次第に解きほぐし、創業者が抱え込みがちな事業を次期社長へ承継させやすくなったということでず。また、A社にこれまでなかった「社員が主張・発言しやすい環境」の構築も社員のモチベーションアップとなり、円滑な事業承継に貢献しました。
先日、現社長と次期社長が下記のようにおっしゃいました。
「価値観というものは、共有ではなく共作すればいいと思うんです。そうしたら高巣さんの言う少数精鋭の組織ができるのかなと」
今回、A社の事業承継に携わったことで、上記の「価値観を共作」するスタンスこそが事業承継を円滑に進める必要な「ありかた」だと改めて実感しました。当NPOでは、この経験を心に留め、引き続き事業承継のお手伝いを進めていきたいと考えております。
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執筆者

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高巣忠好
NPO 東日本事業支援機構 事務局長
株式会社アットリライト(http://www.at-rewrite.com) 代表取締役
1971年生まれ。愛知県豊田市出身。時計・輸入雑貨量販店・ベンチャー系卸売会社・輸入卸売会社に勤務。チーフマネージャーを務め、コンサルティングファームに転職後独立。「過去を否定せず、時流に合った方針・計画に書き直す」=アットリライトを理念として中小企業の経営改革支援や事業承継、事業再生の指導を実践している。
認定経営革新等支援機関NPO東日本事業支援機構[関財金1 第145 号] 事務局長。
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