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人的保証の代わりとなる法人の素養

NPO西日本事業支援機構の青木智平です。
金融機関ネタのテレビドラマが視聴率を稼いでいる。イジメられる弱者が策を講じ「倍返し」する痛快感が支持されているようです。しかし、金融機関は飽きも恐れもせず、未だに新しいドラマネタを提供しています。
とある田舎町、2011年7月某日。
事業を営む本家に親戚縁者一同が会していた。その中には、社長や役員は無論のこと、従業員として勤めている娘婿や社外で働く孫娘等も同席していた。金融機関の担当者は「形だけですから!」と事業債務に関する連帯保証人の自書押印を全員に求めた。
その地区では「働きだしたら家業の保証人になる!それは大人になった証し」という信じ難い習わしが続いていた。金融機関は、それを承知で「保証人になってくださる方のハンコを・・・」と曖昧な言葉で一族を集合させ押印させたのである。一族を前にして「私は押印出来ない!」と言い出せる人は居なかった。
同年同月に出された金融庁の第三者保証に関する指針では「連帯保証人は経営に関与している代表者に限る」とあったが「経営に関与していない家族、親族、先代経営者、仕事上の関係者らは、積極的な申し出があれば連帯保証人になれる」とも記されていた。指針を逆手に取った悪行である。
指針には「その場合(代表者以外が連帯保証人になる場合)は自ら積極的に申し出て押印した事を書面により確認を徹底するとあったが、その確認書類も存在しなかった。
しかも、連帯保証人が押印した日付は、指針が出された僅か1週間前となっていた。保証人の一人が日付に関しての記憶を呼び起こし抗議をした。「孫娘は海外旅行に出ていて、署名は帰国後だった。だから全員の署名が揃ったのはその日付の2週間位後だぞ!」
更に、自書の筆跡まで怪しいと言うことになり、①確認書類の不備、②真の日付が指針通達後、③疑わしい筆跡、などを指摘し保証を外すよう求めたが、のらりくらりと言い逃れを繰り返す状態が続いたため、「金融庁に相談する」と最後通告をしたところ、代表夫妻と役員を勤める後継者以外の連帯保証は即座に外れた。
代表者の奥さんと後継者に関しては曖昧な返答を続けていたが、今年2月の経営者保証に関するガイドラインが出された頃に「代表者以外の保証が全て外れた」と連絡があった。(尚、この件では金融庁に連絡はしていないようである)
勿論、物的保証はそのままであるが、人的保証が成されなくなる中、中小企業が融資を受ける要件として具備されるべきは、法人と経営者一族の資産・負債を明確に分離させ、C/Fによる返済能力を向上させ、粉飾や誤魔化しの無い信頼性の高い情報開示を心掛けることとなる。
日本では欧米と比較し、起業する人が減り続けている。一度失敗した者が再起できる土壌がないため、起業に尻込みしてしまうのである。人には其々得手不得手がある。決められた事を着々とこなしていける人もいれば、新しい事業展開に才能を発揮する人もいる。経営者も然り。起業し、事業展開し、盛業を維持できる才能は限られる。その限られる貴重な才能を発揮させなければ、新しい事業や会社が生れず、社会全体が衰退していくことになる。
この秋、金融行政は「先延ばしからカットへ」舵を切ろうとしている。今まで金融機関は隣の親分(中小企業庁)から「中小企業を潰さないように頼むよ~!(景気が良くなるまで誤魔化しといてね!)」と言われるだけだったが、秋からは直系親分(金融庁)が「カットしろ!(不良債権への積極的対応と廃業への取組)」。
支援先とそうでない先の分別が更に容赦なく・・・
はてさて、賢明な金融機関のブレイン達は、今度はどんな手管を編み出すのか? 金融庁の動きも含め、また新しい金融機関ネタのドラマを観ることになるのでしょうか?
執筆者
青木 智平
NPO法人 西日本事業支援機構 理事長
有限会社 A・カンパニー 代表取締役  http://www.npo-shien.org/

1961年生まれ。京都市出身。企業再生プロジェクトLLPを設立し本格的に事業再生支援コンサルティングを開始。2006年、NPO法人西日本事業支援機構を設立し理事長、翌年にはNPO法人東日本事業支援機構の設立にも関わる。主に中小企業の過剰債務解消の指導にあたっている。

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