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粉飾決算を理由に詐欺罪に問われた中小企業

コラム・連載

粉飾決算を理由に詐欺罪に問われた中小企業、またその粉飾に加担したとして経営コンサルタントも罪に問われ、平成24年11月7日に控訴審判決公判が東京地裁で開かれました。

事の顛末は、経営コンサルタントが取引先の社長らに、金融機関から融資を受けやすくするため粉飾決算を指南し、大震災の被災企業を支援する国の緊急融資制度から総額一億円を超える融資を引き出したことをうけ、彼らを詐欺の疑いで逮捕した、というものでした。当時(逮捕は2011年)の新聞には「震災融資 詐欺の疑い」(朝日新聞)などの見出しで報じられていました。

粉飾したのだから逮捕は致し方なしか、との印象を当時は受けておりましたが、よくよく考えてみると、総額1億以上の融資を受けたことでこれを「特捜」が手がけたというところに理不尽さといいますか違和感を持たずにいられなかったのを覚えています。
そんな事件をいまさらながら思い出したのは、書店で見かけた「400万企業が哭いている ドキュメント検察が会社を踏み潰した日(石塚健司著)」という一冊の本がきっかけでした。
特捜とは政治や巨大企業の組織犯罪など、通常の捜査では明るみに出ない「巨悪」を追究するための機関ですし、それが中小企業に手をだし、それも当初の「見立て」と異なると気づきながらも、追い込んでいくその姿は悪辣です。また、事件化したことで得をしたのは特捜だけという点も違和感を覚えます。

なぜなら特捜により、結果として続けていた返済を中小企業はとめざるをえなくなったわけですし、そのため詐欺を働かれたいわば被害者とされる銀行まで損をしているからです。

設備投資や営業展開の失敗により、何年か赤字になったとしても、原材料を仕入れ製品化し、それが黒字ベースで売れているなら、リストラや拡販による十分改善することができます。しかし、運転資金のストップは、そのチャンスを奪います。そこで数字を嵩上げし、もろもろを水増しした決算書、いわゆる「粉飾」に手を染める中小企業は少ないと著者は指摘しています。

また、著者はこの逮捕劇は「多くの中小企業が粉飾決算を余儀なくされ、良心的なコンサルタントや税理士、会計士たちはそれをサポートせざるを得なくなっているという現代社会の構造的問題を見落としている」と指摘したうえで、「弱い者いじめしかできなくなった特捜部」を批判し、「この捜査はいったい誰のための正義だったのか、と考えざるを得ない。特捜部のための正義でしかなかったのではないか」とも厳しく指摘しています。

本書に登場する経営コンサルタント佐藤真言さんの言葉を要約する形になりますが 「悪い粉飾と、仕方のない粉飾があるのではないか」と小職は思うのです。

昨今の金融機関、保証協会の仕組みはいわば行政のいいなりといっても過言ではありません。おそらく中小企業金融円滑化法終了後には赤字企業への融資やリスケはさら厳しく制限されることが予想されております。

また円滑化法終了後の金融機関の出口戦略として最近耳にする実抜計画の策定ができず債務者区分の格付けを変えられないためにリスケできなくなり、運転資金に詰まってしまい倒産してしまう企業の増加も予想されます。

検察の見込み捜査や歪んだ金融システムに翻弄される中小企業の実態を知るにつけ、この問題提起は重要だと思うのです。

事業再生に取り組む一経営コンサルタントの小職にとっても他人事ではありませんが、世の中にあるグレーゾーンのうち、この事件は「クロに近いグレー」なのか、「シロに近いグレー」なのか・・・考えさせられました。

せめて「負」の環境に陥った中小零細企業に対して「捉え方をかえると、できることが見えてくる(陥ったという実態の認識を変えるお手伝いを再生に関わる我々が行うことで、経営者の方々の打つ手がみえてくる)ことに気づいてもらう」のは決してグレーではないと信じ、事業再生に関わることを続けていきたいと考えております。
NPO東日本事業支援機構 高巣忠好
 
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