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これからの中国ビジネスを考える

私は1980年に大手銀行を退職して経営コンサルタントとなり、バブル経済崩壊後は企業再生の支援にずっと力を入れてきた。その私が2008年に一般財団法人アジアビジネス再生支援機構を設立したのは、日本企業の中国からの撤退が増え始め、そのサポートをする必要性を強く感じたからだ。
 メディアはいまだに日本企業の中国進出ばかりを取り上げるが、実は撤退する企業もかなりの数に上る。中国人の賃金や法人税は以前の倍となり、進出後2年間の免税と3年間の減税措置は撤廃された。そのうえ一部の地域で10%の都市税等が課されるようになり、10年前、15年前に進出した工場は、採算が合わなくなってきているのである。
 ところが撤退をしようにも、事は簡単には運ばない。その原因の一つは、多くの企業が設立当時の書類作成を弁護士ではなく個人に任せていること。日本で受け入れていた中国人の研修生、紹介された知人に書類作成などを任せて中国に設立された会社も少なくなく、そういう場合は徹退時の手続きが特に厄介だ。設立や会計に関する書類に不備があると、設立時まで遡って再調査をする必要があり、膨大な手間がかかることになる。
 税務署など官公庁の役人は自分の都合でしか動かないこともあり、きちんとしたかたちで設立されて書類も整っている企業でも、撤退までに1年はかかるのが普通だ。設立時の事業計画で経営期間を10年として申請し、実際には8年で撤退するような場合には、解雇する従業員の賃金の問題なども複雑化する。
 こうした問題が頻出するだろうと予測して3年前に設立したのが、アジアビジネス再生支援機構である。中国の資本市場の一種である産権交易所の特別会員資格を日本で初めて取得したので、他ではなかなか得られない貴重な情報源となれるのが我々の強みだ。
 日本企業の撤退が目立ってきたとはいえ、中国にはまだまだ多くのビジネスチャンスがある。そのことを理解するためには、2011年に採択された第12次5カ年計画の3つのポイントをしっかりと把握しておくことが必要だろう。
 第1のポイントは、経済の成長方式の転換。計画性に欠ける過剰投資を抑制するとともに、輸入を重視して輸出偏重を改めることが明記された。
 第2は、産業構造の改革。新しい成長産業を生み出すべく、省エネ・環境保護、新世代情報技術、バイオ、最先端の製造業、新エネルギー、新素材、新エネルギー自動車が戦略的新興産業7業種として指定された。これは非常に重要なことで、その実現のためには、大量生産でやってきたこれまでの経済体制が、知的経済体制に移行されなければならない。胡錦濤の後継者と目される習近平は、おそらくここに大きな力を注ぐことになるだろう。
 第3が、都市化の推進による地域振興。格差是正の観点から「調和の取れた発展」を引き続き提起しつつ、大都市と中小都市から構成される都市圏を各地に複数構築する構想が打ち出されている。
 
私たちが注目すべきは、中国は各国の経済政策を熱心に研究した結果、日本方式の政策やマネジメントが最良と判断したという事実。そのため、中国の経済発展のプロセスは、日本がかつて辿った経済発展のそれに重ね合わせるとイメージしやすい。第12次5カ年計画からは、そのことが如実に見て取れる。
 もっとも分かりやすいのは、輸出偏重から輸入重視への政策転換だ。日本経済も輸出によって成長を遂げたが、それが限度を迎えてからは内需拡大に転換した。戦略的新興産業7業種は、いずれも日本のお家芸である。公害の問題に悩む中国は本格的な省エネ・環境対策に乗り出そうとしているが、これも日本が高度経済成長期に多くの公害や環境汚染を引き起こし、その対策に追われたのと同じ構造である。
 日本の高度経済成長期がバブル崩壊まで続いたと思っている人が多いがそれは誤りで、実は高度成長は第1次オイルショックのころに終わっている。当時の日本は重厚長大産業が構造不況に陥り、経済成長がマイナスに転落することこそなかったが、人件費の高騰、原材料高で輸出力を失った。これも今の中国の姿そのものだ。最近の中国企業はブラジルなどに進出して製品をつくるようになったが、中国でも産業の空洞化が始まろうとしている。中国が地方都市への投資を重視しようとしているのは、「日本列島改造論」と重ね合わせられる。このように第12次5カ年計画が示すビジョンは、何から何まで高度経済成長期の日本とそっくりだ。
高度経済成長期後の日本経済の成長の原動力は、労働生産性の向上やエネルギー生産性の向上に加え、商品の付加価値をも向上させたことにあった。メンテナンスなどのアフターサービスも充実した顧客本位のビジネスを展開できるようになるがどうかは、中国にとっても今後の発展のための重要な課題となる。
そして日本企業がどのようか形で取り組むかが日本企業の再成長における課題である。
NPO関西事業再生支援センター理事 川村忠隆
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