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中小企業のデリバティブ対策

メガバンクなど銀行が中小企業に勧めた為替デリバティブ(金融派生商品)取引の損失対策が問題になっている。平成 23 年 3 月 11 日、東日本大震災の日に金融庁より「中小企業向け為替デリバティブ取引状況(米ドル/円)に関する調査結果」が報告された。平成 16 年から 22 年 9 月にかけて 63,700 件の契約が結ばれた。当時の売り文句は「リスクヘッジ」だった。

7 年前、平成 16 年 9 月末のドル円レートがどのくらいであったか。TTM:111.05 円。それから約 4 年間は
じわじわとドル高・円安が進んでいた。悲劇はリーマンショックにより、あっさり 100 円を突破。ご存知の通りのドル安・円高が今もなお進行中。日本経済、中小企業の経営者を為替地獄に落とし込んだ。

そもそもデリバティブ取引とは、何なのか。言葉から危険な臭いがしているかもしれない。デリバティブとは伝統的な金融取引(借入、預金、債券売買、外国為替、株式売買等)や実物商品・債権取引の相場変動によるリスクを<回避するために>開発された金融商品の総称である。デリバティブ(英;derivative)の原義は「派生したもの」で、金融派生商品ともいう。

売り文句は「リスクヘッジ」。将来の為替相場の変動によるリスク(不確実性)を回避するために、メガバンクのうまい話に中小企業経営者は乗った。契約当時はじわじわとドル高に振れていた為、その瞬間だけ多くの経営者が儲かった。自慢話として聞いたこともしばしば。しかし、うまい話には罠がある。想定外の円高らしい。本当に想定外なのか。
メガバンクが中小企業に取引を勧めたのは、為替デリバティブの一種である「通貨オプション」取引。通貨オプションは、あらかじめ決めた価格(行使価格)で外貨を売買する権利のことで、この権利を売買する。中小企業は、「ドルを買う権利」(ドルコールオプション)と「ドルを売る権利」(ドルプットオプション)の売買をメガバンクとの間で行う。
取引例として、1ドル=100円の行使価格で「ドルを買う権利」と「ドルを売る権利」の売買契約を結ぶとする。仮に1ドル=80円のドル安・円高になると、中小企業は「ドルを売る権利」(ドルプットオプションの売り取引)によって、不利なレートでドルを調達しなければならず、企業側に損失が発生する。そしてドル安・円高が進むほど、その損失は拡大する。

いったい中小企業がメガバンクと交わしたデリバティブ取引の何が問題だったのか。本来デリバティブは不確実性リスクをヘッジする手段として有用な策だ。では問題は何か。私見では3点に集約されると考える。

① 経営者(側近ブレーン含む)サイドに金融商品を選別する視点の欠落にある。4+1の視点「流動性・安全性・収益性・分割可能性+TAX」。為替取引を5年も超える長期契約を結ぶ・・・。それを想定外で片付けるのはいかがなものか。

② 金融機関が「金融円滑化」を謳い文句にフィービジネスに踊ったことも一因である。金融庁から外資系金融機関より収益性の見劣りを指摘され、またデフレ経済のもと本業である融資取引の拡大が見込みにくい状況もメガバンクを無謀な契約に走らせた。

③ 中小企業経営者の銀行過信とメガバンクの圧力販売。今に始まったことではないが、バブル期より「変額保険、不動産融資、ゴルフ会員権、投資信託、・・・」。

これからも様々な提案<売り込み>があると思われる。

最後にドル円相場が80円割れで落ち着き感もあり、近々にドル高・円安に進むと予測する専門家も皆無の状況を勘案すると、為替デリバティブを契約している中小企業経営者は一刻も早く対処すべきである。実際、メガバンクも金融ADR制度の一層の活用等により、迅速な問題解決に努めていくと宣言している。中小企業を取り巻く実務家も早々に支援の手を差し伸べてもらいたい。

NPO東海事業支援機構;会員 石川 徹

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