連載・コラム

仮想通貨(ブロックチェーン技術)と金融機関は、これからどうなるのか?

マイナス金利、AI(人工知能)、IT(情報技術)、地方銀行の再編、ビットコイン、FinTech(フィンテック)等のキーワードは、頻繫に取り上げられ、銀行を取り巻く環境が激変していることは、多くの方が気付いていることだと思う。しかしながら、断片的な情報が氾濫しているため、全体像や方向性が見えてこないのではないでしょうか?

金融審議会(金融相の諮問機関)においても、世界が後押ししている中で、日本もFinTechは、推進すべきであると認識しているところです。しかしながら、現在の金融法制は、銀行であれば銀行法、保険なら保険業法、電子マネー業なら資金決済法と業態別に規制をかけているため、業態別の規制のままでは、適正な競争を阻み、企業間の提携が進まないことになる。そうなると、既存の法律を改正するか、新たな法律を作りしかないことになる。

3メガバンクの2017年~9月の実質業務純益は、すべて対前年度比減少している。地方銀行についても同様である。3メガバンクは、合計3万人超の人員削減と再配置を決め、全国展開の店舗も集約・閉鎖・小型化を、すでに日々進めている。今回のこの動きは、不況によるものではなく、急速に進む金融のデジタル化への対応である。これまで、手作業で行ってきた事務作業や住宅ローンの業務は、機械やAIによって削減できる。仮想通貨の起原となった「ブロックチェーン」を活用することで、数千億円単位で投入してきたシステム投資を大幅削減することができる。

また、改正銀行法により金融業界へもIT業界が参入できるようになり、クラウドファンディングにより、銀行の収益業務である融資業務も脅かされようとしている。銀行が消滅することはないが、銀行業務の変革や再編は、既に起きようとしており、私の仕事柄、現場の銀行員の生の声を聴くことも多く、今水面下で起きている金融革命は、より現実的なものとなっていることは、間違いない。さらにこの変化に、中小企業はどう対処していくべきか判断していく時期が来ている。金融革命など、中小企業には関係ないとは言えない時代が来ていると思う。

長引く低金利とマイナス金利政策、仮想通貨を中心とした金融界のAI、ブロックチェーン技術の世界的な広がりは、日本の銀行を変えようとしている。なかでも、「ブロックチェーン技術」の恩恵と影響を受けるのは、間違いなく銀行である。先日、三菱東京UFJは2023年までに基幹店舗を半数までに減少させることを検討していることを発表した。国のいう働き方革命は、本来、IT化を進め効率化を図り、その従業員は、空き時間を利用して他の業務をすることによって、さらに生産性を上げることを目指している。しかし、銀行業界では、激変するAIを想定して、人員削減計画を推し進めているではないか。「ブロックチェーン技術」の誕生で、既存の銀行システムは、非効率な技術へと成り下がってしまったことになる。

ブロックチェーンを導入するだけで、システムに係る費用を数十分の一に削減できるのであれば、世界中の潮流のなかで、この技術を導入しようとする考えは、当然の流れとして理解すべきでしょう。日本の銀行も仮想通貨導入で、決済時間・送金時間の短縮、送金手数料の少額化は、個人資産の流動化をさらに加速させるものと考える。

仮想通貨におけるビットコインの取引量は、現在、アメリカを抜いて世界1位の市場を維持している。日本が、仮想通貨先進国となるかは、今後の各省庁の判断にもよるが、金融庁は「各取引所と検討しながら法整備を進めていく」としているので、今後の行方を注視していきたい。


執筆者

小林 進 氏
NPO関西事業支援機構 理事長
小林経営事務所 代表
http://www.npo-kansai.org/