経革広場は、地域や組織の変革に取り組む人たちがつながる場です。変革に取り組む人の日々の活動やノウハウを発信し、地域や業種や世代にとらわれない連携を促進します。

IT導入補助金と実際のIT導入について

今年から、IT導入補助金が実施されていますのでご存知の方も多いかと思います。この補助金については、今年が初めての試みという事も手伝って、ベンダー側にも混乱が見受けられます。これまで一貫してIT業界に身を投じてきた私には、今回の補助金が少し唐突に思えてなりません。これだけIT関係の機器に囲まれていても、世の中にはIT弱者という方も多く、スマホもなかなか使いこなせないと言う声を耳にします。IT導入については成功談と失敗談がありますので、分かり難いのかも知れません。そこで、中小企業がIT導入をする方法についてお話したいと思います。

IT補助金は、生産性の向上を目的としてますが、あまりにも対象が抽象的なためにこれを具体化しておく必要がありそうです。ITコーディネータ協会からIT経営推進プロセスガイドラインが出ていますので、経営上の課題はそちらにまかせ、ここでは少し具体的なお話をさせていただきます。

1) IT導入の目的を明確にしておくこと  
最も重要な「目的の明確化」を忘れている会社が多いように思えます。私が勤めていた会社では、目的と投資対効果が明確になっていなければ、システムの導入が許可されませんでした。特に売上げが増えるのか、経費削減が可能なのかについての審査が大変厳しく、定量的な数値でコミットする必要があったので、なかなか稟議にかけることですらできないような状況でした。
2) 身の丈に合わせて導入を考える 
中小企業がITシステムを導入する場合には「身の丈に合わせた導入」が大切です。他社が良いシステムを使っているからと言ってそれが自分の会社に合っているのかどうかは何ともお答えのしようがありません。今、ご自分の会社で最も困っていることや必要なことに絞ってシステム導入を始めることが良いのではないかと考えます。
3) 必要なものは必要(かかるコストはかかる) 
最近は、情報の漏洩が新聞紙上をにぎわすようになってきました。自分ではきちんと対策をしているつもりでもマルウェア(いわゆるコンピュータウィルス)によって知らない間に情報が漏れていたり、盗み取られたりしている場合も多いことを忘れるわけには行きません。最近は、マイナンバーを含めて個人情報が氾濫しています。
会社でも個人でもこの
対策を忘れることはできません。特にお客様からお預かりしている図面や単価情報などが漏れてしまうと大変なことになってしまいます。実際に、私の周りでも情報が漏洩してその対策費に何百万円もかかってしまったケースがあります。転ばぬ先の杖としてこの対策はお金に代えることはできないのです。その最たるものがセキュリティです。今年の5月から改正個人情報保護法が全面施行され個人情報の取り扱いが厳しくなります。個人事業主であっても対応が必要になっていますので、ご注意ください。
4) 運用・保守を考える 
最近はネットでの購入が安いこともあり、パソコンなどのIT機器についてもネットでの購入が増えているようです。ただ、システムなどの購入に関連して社内のLANやWANまたシステムソフトなどが必要となる場合があります。これらの運用・保守を自社内でできるところは少ないと思います。ITシステムは、トータルな運用・保守が求められます。パソコンやネットワークを含めてどこかのベンダーから同時に購入されることをお勧めします。それぞれをネット購入するよりは当然高くなりますが、何かトラブルが発生した際の対応を考えるとどちらが高いかはハッキリしているかと考えます。
 
 5) 効果検証を実施する
中小企業で実施されていないのがこの「効果検証」です。システムの購入時には一生懸命に検討するのに対し、その後の効果検証が実施されているところはほとんどありません。いわゆるモニタリングですが、これが大変重要なのです。導入後についても、課題がないのか、プロセスに問題が発生していないのかなどを精査する仕組みを考えておくことがITシステム導入の鍵ともいえます。
今回のIT導入補助金では、ツールとしてのシステム導入を前提としていることや申請そのものについては、ベンダー側が記載することになっているため、あまり検討の必要がないのですが、効果の検証についてはベンダーに任せるわけには行きません。導入に失敗して困るのは、導入する側なのですから。きちんと検討してから導入されることをお勧めします。しっかり検討して成功されることを祈ります。

執筆者:

橋本 幸信氏

株式会社 ウィズクライアント 代表取締役
NPO関西事業支援機構 理事

大学卒業後、IT畑一筋、外資系HWベンダー、外資系SWベンダー
国内Slerにて大手企業の基幹系システムを手がける。
大手メーカーのITS部門を統括していました
定年後、現在の会社設立。
SNSでフォローする