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「目利き融資」によって変化してきた、 個人事業主様向けの創業融資審査の傾向

この原稿を書いている最中、中小企業庁では、新たに起業・創業や事業承継を行う者の創業事業費等に要する経費の一部を補助する事業、平成29年度予算「創業支援事業者補助金」を実施するそれぞれの事務局を相次いで公募しておりました。

いま事務局を公募しているということは、2ケ月後・・・つまり新年度には起業・創業・事業承継に係る補助金がほぼほぼ実施されることが予想されます。このように、いま中小企業庁は起業率を10%にしようとさまざまな施策を展開し創業の後押しをしていることがうかがえます。

一方で、各金融機関でも創業融資のハードルも低くしているとも噂されておりますし、先般、金融庁も「金融機関は担保や保証に依存するのではなく事業の将来性に着目する」といった方針へと変わりつつあり、「企業の将来性、技術力を的確に評価できる」能力を「目利き」能力と定義し、「融資の審査において、顧客の技術力や販売力等の定性面の勘案を含め、顧客の事業価値を適切に見極めるための能力」を金融機関において高めていくように、との考え方を示しています。

この金融庁の方針変更を受け、金融機関は顧客の定量面の要素(損益計算書や貸借対照表などの財務状況)のみならず、定性面の要素(技術力や販売力等)について積極的な工夫・取り組みを行っている場合にプラス要素として勘案し、両要素を総合的に勘案した上で融資を実行することを「目利き融資」とよび、最近の融資審査の傾向にも変化がみられるようになりました。今回は、この「目利き融資」によって変化してきた、個人事業主様向けの創業融資審査の傾向について考えていきたいと思います。

まず定量面の要素としては、『自己資金とその調達方法』に着目する傾向があります。自己資金については各金融機関でばらつきはありますが政策金融公庫の無担保無保証で創業融資を申込みする場合、必要資金全体の10%の自己資金はほぼ必須で、その自己資金の調達方法についての詳細な説明と根拠をヒアリングで提示することが求められます。例えば「自己資金はタンス預金です」と答えた場合、そのタンス預金が捻出可能かどうかを証明するための生活面で使用している預金通帳等が必要になってきます。

また定量面の要素として『事業の継続性』に着目する傾向があり、事業の継続性を証明できる販売先や仕入先がすでに確保されている前提と無理のない想定での計画書も必須です。例えば「飲食店」であれば実際の来店客や回転率と比べて乖離していない計画になっていることに着目する傾向があります。

次に定性面の要素としては、事業主の『経営力』に着目する傾向があります。特に略歴、つまり経験値について昨今では「起業・創業しようとする事業」と同事業の経験を6年以上積んでいることが求められる傾向があります。例えば「リフォーム業の経験が2年弱であるものの、地方でそれなりの規模の工務店からの信頼も厚く仕事も請け負っていて売上は右肩上がり・・・」という創業者でさえ、経験6年以上という条件を満たしていないことを理由に融資を断られたというケースもあるほどです。また、飲食店等の起業・創業者様の融資申込みで多くみられるのですが「実家の飲食店での手伝い3年・・・」という略歴があったとしても、実家での手伝いは経験として換算されないこともあるので注意が必要です。

また定性面の要素として事業を行う地域においての人脈や情報発信能力から読み取れる『密着度』、起業・創業しようとする事業が社会的に貢献できるかどうかの『社会性』、利用者を増やせる発信能力や、提供する商品(またはサービス)の付加価値等から読み取れる『事業競争力』についても着目される傾向がありますので、これらの要素をわかりやすく計画書にまとめることをお勧めします。もちろん市場規模が見込めるか?提供する商品(またはサービス)のニーズがあるか?計画の実現性は?等の従来の計画書でも必要不可欠な要素は盛り込む必要があります。

つまり金融機関が先に挙げた様々な要素に着目して判断しているのは、事業を起業・創業した後の『継続力』を総合的に想定しているといえます。金融機関への融資申込にあたって事業計画を作成される事業者様にアドバイスされる際にはぜひ『継続力』を想定させることができるような計画書の内容に仕上げて、ヒアリングに臨むようお伝えください。当NPOも金融機関の今後の傾向をとらえつつ引き続き起業・創業事業者様へ支援を続けていく所存です。 

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 執筆者:
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高巣 忠好氏
アットリライト

1971年生まれ。愛知県豊田市出身。時計・輸入雑貨量販店・ベンチャー系卸売会社・輸入卸売会社に勤務。チーフマネージャーを務め、コンサルティングファームに転職後独立。「過去を否定せず、時流に合った方針・計画に書き直す」=アットリライトを理念として中小企業の経営改革支援や事業承継、事業再生の指導を実践している。認定経営革新等支援機関NPO東日本事業支援機構[関財金1 第145 号] 事務局長。

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