経革広場は、地域や組織の変革に取り組む人たちがつながる場です。変革に取り組む人の日々の活動やノウハウを発信し、地域や業種や世代にとらわれない連携を促進します。

金融行政運営の基本方針

金融庁は、 

①金融システムの安定/金融仲介機能の発揮、 
②利用者保護/利用者利便、 
③市場の公正性・透明性/市場の活力を確保する 
ことにより、企業・経済の持続 的成長と安定的な資産形成等による国民の厚生の増大を目指すとしている。
金融を取り巻く環境が急激に変化している中で、市場メカニズムを適切に発揮させつつ、基本方針を実現するためには、金融行政の変革が必要であるとして、今までにない改革を行おうとしている。

■金融当局・金融行政運営の変革 

<検査・監督のあり方の見直し>
金融庁(金融監督庁)は、その発足当初において、不良債権問題の解決など、当時の 緊急の課題に対応するため、「ルール重視の事後チェック型行政」の方針を打ち出し、厳格な個別資産査定や法令遵守状況の確認を中心とする検査・監督手法を確立した。これにより、当時の課題であった金融行政への信頼の回復や、不良債権問題の克服及び利用者保護のための最低基準(ミニマム・スタンダード)の徹底が確保された。
 しかしながら、こうした手法は、そのまま機械的に継続すると副作用が生じるおそれがある。例えば、銀行融資において、借り手の事業内容ではなく、担保・保証有無といった形式を必要以上に重視する傾向(「形式への集中」の問題)や、将来の経営の持続可能性よりも、過去の経営の結果であるバランスシートの健全性ばかり議論するといった傾向(「過去への集中」の問題)、さらには、金融機関の経営全体の中で真に重要なリスクを議論するのではなく、個別の資産査定にもっぱらリソースを投入するといった傾向(「部分への集中」の問題)といった副作用が生じるおそれがある。 
 
<金融機関を巡るリスクの変化への対応> 
金融機関を巡るリスクの形態の変化は年々加速しており、従来型のリスクのチェックだけではなく、新しいリスクを把握し機動的に対応できる能力が一層重要となっている。
 
こうした環境変化や課題への対応は、金融当局が画一的な解決策を示すことによって 可能となるものではなく、金融機関自身による主体的で多様な創意工夫によるところが大きい。それを促す金融行政の手法についても、全ての金融機関が最低限満たすべき 基準の遵守状況をチェックすることを目的とした従来のルールベースの手法より、最低基準の遵守だけでは確保できない部分を補うための、個々の金融機関の状況に応じて行う 動的な監督や、金融機関の創意工夫を促す対話といった手法を活用していく必要があると考えられる。
 
<金融仲介機能のベンチマーク>
金融庁はこれまでも、「個別資産査定は、金融機関の判断を極力尊重する」ことや「担保・保証に過度に依存しない事業をみた融資への転換促進」 、「金融機関の優れた取組み(ベスト・プラクティス)の掘り起こしと情報提供」等、検査・監督の見直しに取り組んできた。しかし、現場の金融業界との温度差があり、取組みは必ずしも十分に浸透していない。
 
今回、2016年9月に公表した「金融仲介機能のベンチマーク」等(55項目)を活用しつつ、金融機関の自己評価を促すとしている。とはいえ金融機関特有のマニュアル好きの性質から脱却できるか、中小企業の本当の事業力を判断できるか、リスク回避体質から将来への投資としての柔軟な思考を持てるかにかかっていると思う。
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執筆者:

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小林 進 氏
NPO関西事業支援機構 理事長 
小林経営事務所 代表 
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