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◆事業再生(出口戦略)と資本的劣後ローンの活用

平成16年2月の金融検査マニュアル別冊の改定によって、一定の要件を満たすDDSが「資本的劣後ローン」として導入された。導入当時は、金融機関の経営課題として不良債権処理が優先されており、私的整理ガイドライン等において債権放棄やDESを伴う抜本的な外科手術が適用される手法は、上場企業や大口取引先に限定されており、中小企業にその手法が適用されることはなかったといってよかった。営業地域の限られた地域金融機関自信も、財務的な体力の問題が制約となることから、消極的な姿勢とならざるをえなかった。

平成15年以降リレーションシップバンキングが、推進される中で、デフレにより資産価値が減少し、中小企業の過剰債務が問題となる状況において、「自己資本比率が低く借入依存度が高い」という中小企業に特徴的な財務課題が指摘されるようになった。これらの課題に対して、金融庁の諮問機関が、DDSやDESの手法を公表した。その後金融機関マニュアル別冊で、「資本的劣後ローン」として金融機関の自己査定上、資本のみなすことが認められることとなった。

このような導入背景の中、政府系金融機関などが積極的に活用したこともあり、平成16年以降に「資本的劣後ローン」が急速に浸透することとなる。当時は、中小企業の早期再生に向けた有力な金融支援手法として活用されていたようである。しかしながら、債務者区分をランクアップするには、金融検当局を納得させるだけのDDSの疎明資料や信用リスクに応じた金利設定を適用することができず、金利水準の高い負担を支援対象企業に強いる結果となってしまった。民間銀行による中小企業の劣後ローンの取組は、極めて困難な状況となる。中小企業の事業再生においては、潤沢なキャッシュフローを保有しているケースは少なく、困窮していることがほとんどであり、このような場合はDDSを活用できるケースは極めて低く、資本的ローンの活用が徐々に少なくなっていったように思われる。

さらにリーマンショック以降、中小企業金融が大きく変容することとなる。中小企業金融の円滑化を図るため、貸出条件緩和債権にかかる要件緩和や、十分な資本的性質が認められる借入金の新設などが措置されることにより、平成20年10月の金融検査マニュアル別冊の改訂で、「資本的劣後ローン」は、早期経営改善特例型DDSとして、准資本的特色が強まることになる。

償還条件としては、他のすべての債権及び計画に新たに発生することが予定されている貸出債権に劣後するとされており、弁済にかかる劣後性を確保されることが要件とされた。
また、期限前弁済については、経営改善計画が達成され、債務者の業況が良好となり、かつ、資本劣後ローンを資本としてみなさなくても財務内容にとくに問題がない場合には、早期返還することができる旨の条項を設けることは差し支えないと定められており、劣後ローンから通常借入金への転換は可能とされている。

さらに、金融機関マニュアル別冊では、コベナンツ条項で「債務者が金融機関に対して財務状況の開示を約していること及び、金融機関が債務者のキャッシュフローに対して一定の関与ができる権利を有していること」と定めており、これが劣後化された債権をみなし資本として認定しうる要件としている。つまり、債権者である金融機関の立場から債務者の経営や財務状況、キャッシュフローなどの監視やコントロールが確保できる契約条項を定めることができ、資本性を認定する要件となっている。コベナンツ融資が、多くなったのもこの時期である。

このような資本的劣後ローンの導入背景には、DDSやDESといった金融手法の公開適用があったものの、中小企業金融の現場に近い地域金融機関のプロパー融資劣後ローンは、ほとんどなく、現在では日本政策金融公庫が、「資本性劣後ローン」の商品名で活用されているのがほとんどである。しかしながら、貸出条件変更した中小企業の復活は2割程度で、残念ながら倒産していく中小企業も2割程度と言われており、その間の6割に中小企業が今なお暗中模索しているのが現状といえる。公庫の「資本性ローン」も事業再生資金の取扱いから、新事業、新商品の開発資金にも適用幅を広げ、本来の再生資金の意味合いが、薄くなりつつある。出口戦略には、やはり資金が必要となることから、決算書のスコアリング分析だけで終わることなく、本来の事業再生を伴う出口戦略を金融機関にもできるようになってほしいものである。

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小林進氏.jpg
小林 進
NPO関西事業再生支援センター 理事長
立命館大学経済学部出身。2011年11月4日開業。大阪の地方銀行に22年勤務後、外資系保険会社を経て金融、財務コンサルタントへ。財務管理、資金調達、事業再生を中心にとした経営全般のアドバイザー。

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