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医療法人のM&A(第1回)

 

みなさん、こんにちは!

 
出産以降、日々子育てが楽しく、そんなことにかまけてご無沙汰ばかりで失礼しております
、大阪の弁護士の清水です。
が、子どもとドッツカードばかりやっているわけではなく、ちゃんと仕事もしております(笑)。 
 
今回は、次回と2度にわたり、当事務所が専門分野の一とする医療法人、特に医療法人のM&Aについてお話したいと思い
ます。
 
医療法人の世界はM&Aが非常に盛んな業界の一つです。
当事
務所のクライアントの中にも、直接的にご相談があって顧問先となった法人もありますが、M&Aで買収した結果、顧問先となった法人も複数あります。
 
医療法人の場合、一般の事業会社のM&Aとは異なり、新規設立には都道府県の認可等で手続きに非常な手間と時間を要するという事情があるので、新規設立ではなく、M&Aで取
得する場合が多い、それが医療法人の世界でM&Aが盛んな理由の一つなのかと思います。 
 
この医療法人のM&Aについて、先日関西のプロセミで講義をさせていただきましたので、その総復習編として、今月、来月と2回にわたりその内容を概略寄稿させていただきたいと思います。 
なお、医療法人には、色々と種類がありますが、ここでは
、私たちが日常生活でも触れる機会の最も多い(?)社団医療法人を前提とします。 
 
医療法人のM&Aの手法は、
①出資持分の譲渡
②事業譲渡 
③合併
④分割
の4つの手法があります。
 
このうち最も多く活用されるのは、①の出資持分の譲渡です。
なお、④の分割は持分の定めのない法人のみが対象となり、持分の定めのある法人は適用対象外です。 ここで、出資持分であるとか、持分の定めのある/なしと言いましたが、「持分」については重要な概念ですので、少し紙面を割いてお話したいと思います。 
 
持分とは、株式会社における株式と同様の概念です。
医療法人は株式会社ではないのでその持分は株式とは呼ばず、出資者たる地位は単純に持分と呼びます。但し、株式会社は「出資者たる地位=社員たる地位」ですが、医療法人の場合は、出資者と社員の概念が分断されています。
 
つまり、社員となって法人運営に参画するかどうかは出資額いかんに関わりなく、出資をしても社員とならない場合もありますし、他方で、1円も出資していない者が社員となる場合もあり、その場合、全く出資していない社員と1億円出資した社員とは、法人運営に関してまったく同等に意思決定に参画する権利を有するわけです
(1人1議決権の原則(⇔株式会社におけ
る1株1議決権の原則))。 
 
ところで、平成19年施行の第5次医療法改正により、現在、持分のない医療法人しか新規設立することはできません。 
 
これは、医療法人は配当が禁止されているため、経営が好調で自己資本分が大きくなると、出資持分の評価額が高く
なり、相続人が多額の相続税の支払いに窮し、ひいては相続税支払いのために無闇に医療法人を解散するなどといった事例もあったため、そういった事態に対処し、医療法人の安定的経営を確保すべく行われた法改正です。 
 
では、上記改正までに設立された持分の定めのある医療法人は、どうなるのか。世の中の社団医療法人の9割以上が持分の定めのある医療法人です。
 
これらの法人に関しては、持分の定めをなくすことはないとの経過措置が採られています(おそらくこの経過措置は半永久的なものでしょう
)。
また、これらの法人については、持分のない医療法人への移行に関する促進策が設けられています。これは、移行計画の認定を受けて持分のない医療法人に移行(すべての出資者が出資持分を放棄)すれば出資持分に対する相続税・みなし贈与税の納税を猶予、免除しますよ、という制度です。
 
従前は、認定を受けたとしても法人に対する贈与税課税は免れ得ないといった問題があり、認定制度の活用が進まない最大の原因になっていましたが、今般の医療法の改正により、認定を受けると法人に対する贈与税課税も含め課税されないこととなりました
(平成29年10月1日施行)。
 
法人の贈与税負担という障壁がなくなったことから、今後、認定制度活用による持分のない医療法人への移行が進むのではないかと予想されます。なお、認定期限は平成32年9月30日とされています。
 
以上、出資持分の概念について、概略お話させていただきました。
次回は、本題の医療法人のM&Aについて、出資持分の譲渡スキームを中心に具体的事例を交えてお伝えしたいと思います。

清水有希子氏

清水 有希子氏

オーヴ綜合法律事務所
弁護士
農業経営アドバイザー

NPO関西事業支援機構 理事
2006年10月 弁護士登録(第二東京弁護士会)
国内外の大企業から中小企業まで、種々の分野にわたる幅広い企業法務の経験を活かし、多様な企業形態・ニーズに応じた的確なアドバイスを心掛け、案件に臨んでいる。

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