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地域金融機関の存亡と森ドクトリン

現在、日本の置かれている社会環境は、超高齢化社会で社会保障費が膨張していくなかで、働く世代の負担感ばかりが目立つ状況である。日本人の平均年齢は47歳となり、2016年の出生数は100万人を割り込んでいる。満65歳以上の割合は、34.6%となり、全国規模でみると65歳以上人口も3300万人を越えている。このままでは産業も成り立たないと思えるほどだ。

そこに、日銀のマイナス金利政策が、追い打ちをかける。金融機関には、収益圧迫の材料となっている。
特に地域金融機関は、融資先も融資ロットもメガバンクに比べ限定的だ。急激な社会の変化には容易に対応できない。無謀な融資量を増やすだけの営業スタイルでは、不良債権を作ることになり、金融機関の破綻原因となる。

とはいえ、マイナス金利政策のままでは、地域金融機関の業務純益を確保することが困難になってきている。
状況を鑑み金融庁は、従来の方針を転換し、積極的な融資を評価する方向に転換したが、シナリオ通りに進んでいない状況だ。
私も金融庁の方向転換は、金融界にとっては画期的であり、期待を寄せていた。

金融庁の「森ドクトリン」とは、それまでの不良債権を作らせないことに力点をおいた金融機関の検査・監督姿勢の考え方自体を大幅に転換したもの。
事業者のビジネスモデルを理解し、リスクを取った融資など顧客本位の業務を促すものだ。

「金融庁の地銀のベンチマーク」では、地元中小企業向け融資のうち無担保、無保証融資をどれだけ増やしたか。全取引先数と地元取引先数の推移はどうなのか。創業支援先数は増えているか。創業から期間別の取引先数と融資額はどうなのか。主要取引先数のうち経営改善策案をしている先にはどういう取り組みをしているか。こういったところが主なところのベンチマークである。

そもそも、地域金融機関に無担保での融資を増やせといっても、実際は融資するネタが不足している状態である。
金融機関にとって不動産融資の方がロットも大きく、融資量を確保するためには、手っ取り早く保全もある。
地方の銀行も大阪などの都心部に進出して、融資先を増やす戦略は、今に始まったことではなく、何年も前から推進しており、都心部の支店を開設している。
地元では、預金はいくらでも集まるが貸出先がないから、そうせざるを得ないのだろう。

現在の地方銀行は、勘定系システムの連携、地域も超えた統合、東南アジアを中心にした海外進出などを進めている。
コスト削減の一方で、国内の手数料収入が減少しており、融資量を増やして業務純益を増やすだけでは、追いつかない。こういった状況は今後も当面続くものと考えていいだろう。

しかしながら、地域貢献を標榜する地域金融機関であるならば、リスケ先(条件変更先)の出口戦略を進めるべきだ。
リスケ先の現状は、上位2割は卒業していき、下位2割は、残念ながら消滅している。残り6割が今なお、条件変更を続けている。
こういった融資先は、支店での対応が重荷になることから、本店管轄の専門部署に管理させるケースがある。
。このケースでは経営指導をすることなく、回収一点張りの姿勢が多い。しかもその部署の担当者は、頻繫に担当が変わることが多い。
半不良債権化した要管理債権を正常化させるのは、容易なことではない。

中小企業側も出口をどうすればいいのかわからないまま、リスケを何年も継続していることが多い。
地域金融機関は、担当者任せにせず、地域経済に貢献する金融機関として、管理職が要管理先にも目を向けるべきである。
金融庁のベンチマーク項目に今一度目を通して欲しい。

執筆者


NPO関西事業支援機構 理事長
小林経営事務所 代表 小林 進
http://www.npo-kansai.org/

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