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金融検査マニュアル廃止と 今後の金融機関への影響

2018年度終了後(2019年4月1日以降)金融検査マニュアル並びに別表(別冊・中小企業融資編)を廃止することにより、各金融機関へどのような影響が生じるのでしょうか。金融機関の現状を踏まえて考えてみたいと思います。

まず、日本の地域金融機関の現状はどうなのか。地域銀行(地銀及び第二地銀)は、足元では役務取引等利益の増加によって本業利益率は、下げ止まっているものの、過半数の54行で本業利益(貸出・手数料ビジネス)が赤字(うち52行が2期以上連続赤字)。連続赤字の地域銀行が年々増加しているという(金融庁調べ)。さらに、経営戦略等を着実に実施できる体制の構築、リスクテイク領域・上限の設定やガバナンスの発揮などが不十分な銀行が存在していると指摘している。

一方で、企業アンケート調査では、地域金融機関は顧客である企業と向き合う姿勢に、一定の改善の兆しがみられる調査結果が得られているようです。

金融検査マニュアルとは、バブル崩壊後、不良債権処理問題を解決するために生まれた金融庁の検査官が銀行を検査する際の手引書といえるものです。バブル崩壊後の銀行員は、マニュアル好きで思考能力を失い、最低限の態勢整備と方針策定、ひいては信用格付けも形式主義で、実質を検証するものではなくなっていたと思われます。

(私自身も当時は銀行員でした)

金融検査マニュアルは、金融危機時において、自己査定、不良債権の償却・引当金の計上、リスク管理態勢等を確立させるのに役立ち、金融機関の多額の不良債権を処理できたことは間違いないです。

しかしながら、マニュアル化が形式主義を蔓延させ、融資先企業の将来性や生産性よりも、過去の決算結果を重視するあまり、当該企業の問題発生の根本原因の究明や改善策、施策をアドバイスする本来の金融仲介機能を軽視するようになったのではないでしょうか。

前述の地域金融機関の本来の役割は、預金を集めて貸出をし、その利ザヤで収益を上げることであったが、目先の役

務収益(投資信託、保険等)で最終利益を確保するようになっていきました。

金融庁行政方針が変わり、担保、保証に依存せず、事業性評価による中小企業との取引を求めたため、地域銀行では、「担保・保証外し」「事業性評価件数」のみを達成しようとする動きもみられたようです。これが、形式主義、マニュアル主義の怖いところでもあります。形骸化し、弱体化した金融機能が、地域金融機関の本業利益の低下をもたらしたといえます。

今回は特に、金融検査マニュアルの中小企業融資に係る別表1、別冊(中小企業融資編)の廃止が、中小企業の資金調達に大きな影響を受けるものと考えております。

特に、自己査定による信用格付け(債務者区分)が、各金融機関の独自性や裁量判断で、基準を改定できるようになることです。

金融検査マニュアルの判断基準によるものではなく、競争力のある判断基準へ変更できることになります。これは、債務者の事業内容や将来性をより反映させることができるようになるものの、各金融機関の独自性を発揮するには、現状よりその運用が適切で、論理的な基準であることが求められることになります。

現在の金融機関は、政府系金融機関、保証協会も含め、スコアリングで決算分析を行い、「定量分析」(過去決算分析)と「人的定性分析」で、融資判断を行っています。当面はこのシステムが続くことになると思われます。コンピューター依存プラス現地確認で正当な融資判断することを忘れないでいてほしいと思います。

ただし、昨今の、フィンテック等の新しい技術を活用して、高精度な信用力評価(信用格付け)を、「定性分析」と「定量分析」を同時に可能とする仕組みができるようになるのも、そう遠くない時期にくると思われます。

執筆者

小林 進 氏
NPO関西事業支援機構 理事長
小林経営事務所 代表
http://www.npo-kansai.org/

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