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「破綻懸念先」から「正常先」に評価を変えたある企業のお話し

法人借入金の支払条件の変更(いわゆるリスケジュール、またはリスケという)をここ数年続けてきたある企業の話し。そのリスケ企業にたいする貸出金融機関の評価に変化が出てきたようです。そんなシーンに立ち会いました。

一般にリスケジュールを行っている企業に対する金融機関の格付や貸出評価は低くなります。通常であれば金融機関からの新規借り入れは困難と考えるべきです。それどころか金融機関は融資が焦げ付く場合に備え、融資額に対して一定割合の貸倒引当金を積まなければならない取引先と判定されています。そんなリスケ企業が、金融機関と折衝を繰り返していくうちに当該の金融機関の評価を上げ信用度を飛躍的に回復させた事例です。

今回のケースは、これまで多種多様な企業を支援(再建・再生)してきた我々(NPO東日本事業支援機構)としても極めてまれな事案でした。稀なケースと思いながらも、今後金融機関の変化の予兆も感じました。このケースを読者の皆様と共有したいと思い、あえて寄稿させていただきました。

今回の事案は、創業者から2代目への事業承継のタイミングでの新規借り入れ提案でありました。従って、すべてのリスケ企業に通じる事例ではないことをあらかじめご了承いただきたく付記します。

次の話は、読者の皆様方にはいまさらながらのおさらいになります。」金融機関は、貸付先企業の評価や格付けに基づいて、融資の有無や、貸付金利率を設定します。

金融機関は、まず融資先を10~12段階に分けて信用格付けします。この信用格付けに基づき、債務者区分が決定されます。その債務者区分は、6つに分かれていて「正常先」「要注意先」「要管理先」「破綻懸念先」「実質破綻先」「破綻先」で格付けと債務者区分は直結しています。

たとえば、格付けが1~6なら「正常先」、7-1なら「要注意先」、7-2なら「要管理先」、8なら「破綻懸念先」、9なら「実質破綻先」、10なら「破綻先」というふうな対応関係にあります。

言わずもがな、下の区分(大きな数値)ほど、貸倒のリスクが高く、従って貸倒引当率も高くなります。

さて今回のケースでは、金融機関とリスケ企業の折衝において我々NPO東日本事業支援機構メンバーは、アドバイザーとして機能しました。何度か折衝する中で金融機関は、当該企業の評価を「破綻懸念先」から「正常先」へと格付けを上げてくれました。

最初は、リスケ状況の現状認識です。その弁済額が今後5年間の経営計画において負担でないこと確認しました。次に、借り換え」を提案しました。現状の弁済計画よりもやや長期の弁済ですので、月次の返済額は少なくなります。具体的には「毎年のようにリスケを繰り返し信用保証協会への保証料を支払うくらいであるならば貴行に金利としてお支払いしつつ長いお付き合いができ、かつリスケ状態からの脱却ができる」と申し上げました。金融機関にとってもメリットのある提案を促したつもりです。

幸い直近3カ年の業績もわずかながら好転していたことから、こちらの提案を次第に受け入れていただくことができました。当初は躊躇していた金融機関も、今後20年にわたる「長いお付き合い」という提案に賛同いただいたようです。さらには事業承継のタイミングであることから代表者の連帯保証を外しての条件にて借り換え融資の契約を締結できました。

今回のような支払条件の変更提案がすべての企業に通用すると思いません。しかし、「わずかながら(直近3カ年の)業績好転」「事業承継のタイミング」という条件と、(これは借り換え融資契約後にわかったことですが)「年末における中小企業・小規模事業者に対する金融の円滑化について」年末年始の支払条件の変更(いわゆるリスケジュール)の要望へ柔軟な対応を、という金融庁より金融機関への要請があったように変化の兆しが見えます。

いずれにせよ、今回のケースのように外的要因をふくめさまざまな要因を以って金融機関交渉に臨みたいものです。チャンスを最大限に生かしつつ、我々NPO東日本事業支援機構は今後も中小企業・小規模事業者への支援内容を切磋琢磨していきたいと考えております。

執筆者

高巣 忠好氏
認定経営革新等支援機関NPO東日本事業支援機構 理事長

1971年生まれ。愛知県豊田市出身。
時計・輸入雑貨量販店・ベンチャー系卸売会社・輸入卸売会社に勤務。チーフマネージャーを務め、コンサルティングファームに転職後独立。
「過去を否定せず、時流に合った方針・計画に書き直す」=アットリライトを理念として中小企業の経営改革支援や事業承継、事業再生の指導を実践している。
認定経営革新等支援機関NPO東日本事業支援機構[関財金1 第145 号] 事務局長

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