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共創に必要な対話力

ちょうど10年ほど前のリーマンショックに端を発した経済危機が世界を覆い、欧米はもとより世界中の株価が急落しました。さらにその10年以上前の1997年にはタイの通貨下落をきっかけとして始まったアジア通貨危機が起こり、影響はインドネシア、マレーシア、韓国などに波及しました。

リーマンショックから10年、現在のトランプ政権は中国との経済戦争を勃発させ、その影響から新たな経済危機が懸念されています。世界で最も有名なファンドマネージャーの一人であるジムロジャース氏も「私の生涯で最大となる」深刻な経済危機が起こるだろうと警告しています。

経済状況がどうなろうとも事業者はサバイバルしなければなりません。しかし、複雑化、オープン化した今の経済下において、中小企業も大企業も今や1社でサバイバルを勝ち抜くことが困難になっています。あらゆるビジネスモデルはすぐにコピーされ、大資本があれば市場を早々に席巻してしまいます。近づいている経済危機という外的要因を控えている状況下において、事業の継続はどうすればよいのでしょうか。その答えの一つが共創と対話です。

先日、電車の中吊り広告を見ていると、JR東日本がベンチャー企業や優れた事業アイディアを有する方々との協業によるビジネス創造活動「JR東日本スタートアッププログラム2019」を開催するとの記事を見つけました。他にも、JALがスタートアップ企業に投資するコーポレート・ベンチャーキャピタルファンド(CVC)「Japan Airlines Innovation Fund」を設立したとのニュースがありました。移動が減る時代において、航空業界もどう生き残っていくか、試行錯誤をしていることが伺えます。この2社だけでなく、数多くの大手企業とベンチャー・中小企業が連携する事例があります。

さらに連携による価値創造を政府側も後押ししています。すでに公募は終わりましたが、“新連携”が注目を浴びています。複数の中小企業が経営資源(知識、ノウハウ、販売力、資金力等)を持ち寄り、新たな商品開発をする場合に補助金を出してくれる制度です。

2019年5月現在、中小企業連携組織対策推進事業「中小企業組合等課題対応支援事業」の公募も行われています。

一方でこうした「連携」の取り組みは社風・社内文化の違いや適材人材の不足などから断念してしまう事業も数多くあります。また最初は大きな期待で始めても、いざ事業化するとなると社内外に多くの壁が立ちはだかります。特に課題となるのが“人材不足”です。新規事業の立ち上げに必要なスキルは既存事業のそれとは異なります。筆者はその能力の醸成や発揮は“対話”が鍵になると感じています。論理で相手を打ち負かすディベート型ではなく、対話の中から皆で課題を見つけ出し計画を立案実行できる人材が求められています。

これ対話型を昔から実践し、有名な手法にホンダのワイガヤがあります。人が集まって一つの物事に対して自由にざっくばらんに話し合う中から新しい価値や解決策を生み出す、まさに対話を続ける会議手法です。部門を超えた協力者が増えることで社内外に新しいムーブメント=イノベーションを起こしてきました。こうした取り組みはもちろん大手企業だけではなく、中小企業でも有効です。

今すぐに起きてもおかしくない経済危機を乗り越えるためにも、企業の規模を問わず連携することが必要です。国や行政もそれを推進する仕組み、仕掛けを用意しています。うまくこうした取り組みを使うことで、できるだけキャッシュアウトを避けつつ危機対策を進めることができます。弊社のような支援団体も増えているので、活用しない手はありません。さらに、連携を推進するためにも互いの考えの違いを認識し、お互いに価値観を共有した上で事業を前に進める対話できる人材をどれだけ抱えることができるか、育てることができるかに掛かっています。読者の対話力向上が企業の価値創造に繋がることになります。

執筆者

山本 広高 氏
BFCA経営財務支援協会
NPO首都圏事業支援機構 理事

国立大学大学院終了後、フロリダ・インターナショナル大学にてMBA取得。
アクセンチュア㈱ビジネス統合部門にてコンサルティング業務に従事。
経営コンサルタントとして独立。
2014年、BFCA経営財務支援協会の取締役に就任。
NPO首都圏事業支援機構 理事。

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