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「コロナ禍で背を丸める中小企業」に捧げる諺「風が吹けば桶屋が儲かる」の本意

「風が吹けば桶屋が儲かる」という諺があります。

おなじみですが不思議な諺であります。今般、改めて内容を確認すると、風が吹くと土ぼこりがたって目に入り盲人が増える。盲人は三味線で生計を立てようとするから、三味線の胴を張る猫の皮の需要が増える。猫が減る。

江戸時代の町人文学の「浮世草子」や「世間学者気質(かたぎ)」に出てくる、意外なところに影響が出ること、また、あてにならない期待をすることの例え話といわれています。

コロナ禍が続き疲弊する中小企業からNPO東日本事業支援機構に数々の相談が寄せられます。事案対応に当たりこのことわざのように目の前で起きている事象にだけ心を奪われるだけでなく、3つ4つ先の出来事やその展開にも心配りをしたいと考えています。

そんな中、新たな政権ともに就任した梶山経産大臣からいくつか提言がありました。

「中小企業の再編促進など中小企業の生産性を向上させ、足腰を強くする仕組みを検討する」

「いまコロナ禍で落ち込んだ業績、業況というものをいかに引き上げていくか、生産性を上げていくために、それぞれの会社のスキルというか全体の能力を上げていくことも重要だ」

「最低賃金の引き上げありきというわけではなくて、賃金が毎年あげられるような状況づくりが必要。効率性というのはまず個社で上げていただくもの」

この大臣発言もあり、新たな中小企業政策によって、経営基盤の弱い中小零細企業が淘汰されるのではないか、という不安を持った中小企業経営者も少なくありません。資金繰りが厳しい中「最低賃金の引き上げ政策遂行」では持ちこたえられない、という旨の相談が寄せられます。

一方で、社員の雇い方を従来の日本型終身雇用から職務を明確にして採用する欧米流の「ジョブ(職務)型」雇用の切り替えや検討する企業が急増しているようです。ジョブ型は、テレワークでも業務管理しやすく、また専門人材を採用しやすくするといわれています。

しかし、ジョブ型雇用のノウハウを持たない中小企業経営者から、「社員は解雇しやすくなると考えていいのか」、「ジョブ型をどうやって導入したらいいのか」、「人事評価制度をどのように見直したらよいのか」など資金繰りとは別な角度の相談が寄せられるようになってきました。

これらの相談を受けたとき、まずはいったん落ち着いていただこう・・・と前述の「風が吹けば桶屋が儲かる」ということわざの蘊蓄をその都度することにしています。

私感ではありますが、相談の火元となっている「最低賃金の引上げ」も「ジョブ雇用への切り替え」も、実は全く別もののように思えたり見えたりします。しかし、この事象は2つとも、先のことわざのように「コロナが流行ったら・・・」の後に続く新たな展開の一つに過ぎないと考えられます。さらにそのあとの展開があると考えてみませんか。何を想定できますか?と投げかけることにしています。

というのも、この事象は2つとも、少なくとも政策案であって立法・施行されていません。仮に強く行政指導されたとしても、これらの政策は中小零細企業の淘汰という側面よりも、むしろ労働生産性の低い従業員のあぶり出し効果を期待できます。

この点を見抜いてこそ、次の展開を有利にできるのです。

つまり「最低賃金の引上げ」と「ジョブ雇用への切り替え」という大きな経営革新を成し遂げた中小企業には成長の可能性が高まります。それは、GDPが落ち込む昨今、大企業や中堅企業から人材の大量流出が予想されます。これらの人材を活かせる環境(テレワーク対応やマニュアル整備、人事評価制度などの仕組み)を作ったうえで採用することが必要です。人手不足の解消と能力アップや人脈の拡大などが考えれます。もちろんこの中途採用による相乗効果として既存の従業員の処遇改善や生産性向上も織り込みます。 コロナ禍においても「風が吹けば桶屋が儲かる」ごとく環境対応型の発想で経営改善を実現できる支援をひきつづき、筆者もNPO東日本の活動としても継続していきたいと考えております。

執筆者

高巣 忠好氏
認定経営革新等支援機関NPO東日本事業支援機構 理事長

1971年生まれ。愛知県豊田市出身。
時計・輸入雑貨量販店・ベンチャー系卸売会社・輸入卸売会社に勤務。チーフマネージャーを務め、コンサルティングファームに転職後独立。
「過去を否定せず、時流に合った方針・計画に書き直す」=アットリライトを理念として中小企業の経営改革支援や事業承継、事業再生の指導を実践している。
認定経営革新等支援機関NPO東日本事業支援機構[関財金1 第145 号] 事務局長

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