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事業承継は「先代」と 「後継者」だけでは、叶わない

平成元号の最後となる今年5月、中小企業庁から「平成30年度版中小企業施策利用ガイドブック」が発表されました。今年もものづくりや創業、経営改善のためのさまざま施策が予算案の可決とともに執行される予定です(ものづくりについては4月下旬の時点で平成29年度補正予算分は公募を締め切っております)。そんな中、この施策発表に先駆けて今年2018年4月に「事業承継税制」の改正が行われております。

 

今回の改正でよりいっそう中小企業経営者の次世代経営者への引継ぎを支援する税制措置の創設・拡充が図られました。例えば事業承継に係る負担の軽減を目的として、納税猶予の対象になる株式数に2/3の上限がありましたが撤廃され、相続税の猶予割合は80%であったものが100%に拡大されました。

また、承継後の将来の不安を軽減し制度を利用しやすくする目的で、承継時の株価を基に贈与・相続税が課税されていたものを、売却額や廃業時の評価額を基に納税額を計算するようになりました。また、税制適用後5年間で8割以上の雇用を維持できなければ猶予打ち切りであったのに対し維持未達成でも猶予のうち切りはせず継続可能になりました。

こうして事業承継で後継者に引き継ぐ「ヒト」「モノ」「カネ」の3つの要素のうち「モノ」と「カネ」においては課題解決の糸口として施策を活用して見出すことができるようになりつつあります。

しかしながら、経営コンサルタントとして事業承継の現場に立ち会っていると「ヒト」の要素については様々なケースがあり、一筋縄ではいかない場面を多々見てきました。「承継する先代」と「承継される後継者」の強い思いは理解できるのですが、これまで見てきたケースのうちうまくいった事例とそうでない事例を鑑みても、先代と後継者の強い思いだけは「事業承継」を成しえないことが多いような気がしてならないのです。そこで、これまで支援してきた事業承継の事例を今一度見直してみることにしました。すると事業承継の成功した企業に共通した要素があることに気づきました。

先に記した「先代」と「後継者」のそれぞれの強い思いは“言わずもがな”必要不可欠なのですが、その「先代」と「後継者」を支えるそれぞれのNO.2のポジションにあたる「ヒト」の存在が欠かせないことをさまざまな事業承継の事例により気づかされました。(もちろん「先代」を支えるNo.2は「後継者」との意思の疎通ができることを条件としますし、「後継者」を支えるNo.2は「先代」との意思の疎通ができることを条件とします。)

つまり、その「ヒト」を介して周囲の支えや協力を募ることができ組織としての体制がとれていたという点は企業の大小にかかわらず、創業からの年月の多少にかかわらず共通して必要な要素であるのでは、と考えております。あくまでも私感ですが経営スタイルや先代が担ってきた仕事の役割や内容を客観的に「見える化」し情報の共有化を図るべく後継者を含む次世代の経営陣と検討することが求められることと、それを事業計画という形で「具現化」「体系化」することこそが事業承継の成功の秘訣であると思うのです。そしてその「先代」と「後継者」の2名と彼らを直接支えるそれぞれのNO.2の2名の計4名を中心として事業計画を立てるに際し、有効に活用できる方法として「経営力向上計画策定」という施策が本年度も引き続き継続しております。

 

自社の経営力を分析したうえで人材育成、コスト管理等のマネジメントの向上や設備投資など自社の経営力を向上させるための計画策定を行い、認定された企業は税制や金融支援等を受けられるという施策です。

経営力向上計画の認定には3年から5年の間で労働生産性の一定以上の上昇が条件となっておりますが、同時に事業承継も叶えられる計画を策定することで中小企業の課題解決の有効なアイテムとして活用できますので、士業の皆様もぜひお試しいただければと存じます。

執筆者


高巣 忠好氏
認定経営革新等支援機関NPO東日本事業支援機構 理事長

1971年生まれ。愛知県豊田市出身。
時計・輸入雑貨量販店・ベンチャー系卸売会社・輸入卸売会社に勤務。チーフマネージャーを務め、コンサルティングファームに転職後独立。
「過去を否定せず、時流に合った方針・計画に書き直す」=アットリライトを理念として中小企業の経営改革支援や事業承継、事業再生の指導を実践している。
認定経営革新等支援機関NPO東日本事業支援機構[関財金1 第145 号] 事務局長

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