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①事業承継を望まない子息の受け皿必要

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杉田利雄

■ 三人とも継者と目されていた。

佐久間(仮名・36才)、石川(同)、後藤(同)の三人はかつて大手地方銀行の同期だった。
現在、佐久間は結婚を機に銀行を退職し、義父の経営する会社(A社)の常務取締役(後継者)として活躍中だ。A社は、佐久間が銀行員時代自ら新規開拓したお客様でもある。
同社は義父が30年前に創業し、年商50億・従業員100人を超すまでになっていた。佐久間は二人姉妹の長女と結婚して6年、来期には同社の代表取締役となる予定だ。

石川は現在も銀行員である。
しかし、母方の伯父が経営する会社(B社)の事業引継ぎを打診されていた。盆暮れの親類の集まりでは「B社を誰が引き継ぐのか、それとも・・」と目下の関心事となっている。
B社は祖父(故・母の父)が創業した食品加工会社。当然愛着もあるが、外孫である石川にとって簡単には決断できるものでない。銀行員生活は、やりがい・安定的収入・完全週休二日制等と恵まれた環境にある。この話は年末までには伯父に正式に断るつもりだ。

後藤の実家は専門商社(C社)だった。長男である後藤は、銀行には5,6年程勤めて家業を継ぐことを想定していた。そもそも同行がC社のメインバンクであった関係で縁故入行していた。しかし、C社はバブル崩壊の煽りを受けあっけなく破綻した。後藤は縁故で入った銀行には居辛くなり、大学時の友人と共にベンチャー企業を起こし、再出発した。

■ 事業承継ポートフォーリオ

中小企業の事業承継は、「資産(自社株)の承継」や「経営の承継」等、親(上)の資産所有権や経営権をいかに円滑に子孫(子、血縁者)へバトンタッチするかという点に課題をフォーカスして論じられることが多い。しかし、現実には検討すべき課題は多用だ。後継と目される者の置かれている経済環境や経営能力、事業意欲などがある。また、引継ぐ会社の財務状況や将来性等も大きな関心事となる。以下に、中小企業における事業の承継パターンを「後継者の事業意欲の強弱」と「企業の事業価値の高低」の視点を用いて4つの分類とした。<図参照>

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①後継意欲強・事業価値高{世代交代型}
このパターンは資産(自社株)の移転等を手法と時期を検討しながら対策を講ずれば良く、言わばテクニカルな問題である。 

②後継意欲強・事業価値低{事業再建型}
このパターンは企業存続が後継者に委ねられる事になる。選択と集中により、不採算事業の切り離し・借金対策等の断行を要する。事業再生型と言える。 

③後継意欲弱・事情価値高{M&A型}
このパターンは今後急増すると予想され、日本経済における重要課題でもある。雇用の確保・技術等の伝承を考慮する必要があり、中小企業のM&A市場のより一層の活性化や法整備・税制等の後押しが欠かせない。 

④後継意欲弱・事業価値低{廃業型}
このパターンは創業経営者の強い決断と実務専門家のサポートを要する。債務過多の企業も多く、単純な自主廃業とはなりにくい。保証債務や第三者保証人の問題を解決するには、実務専門家と連携し債権者との交渉を
要する。

中小企業の事業承継を円滑に進めるには、物理的な後継者の有無だけではなく、その後継者の事業意欲や資質・能力が大きく影響を及ぼすこととなる。経営者は後継者の見極めを短期的ではなく、中長期的視点に立って行うことを要する。時に廃業や事業売却(M&A)など大きな英断を必要とする。息子の将来を奪う権利は21世紀の日本にはないと思うべきだろう。。

杉田利雄(すぎたとしお)

JSK事業再生アドバイザー。 NPO法人、東海事業再生支援センター・理事
株式会社 エム・エム・プラン代表取締役
株式会社BFL経営財務研究所代表取締役
NPO決算公告推進協議会理事
会計参与推進機構理事

著書に電卓で金利計算(オーエス出版)、社長の決断(明日香出版、企画・監修)、ターンアラウンド・マネジメントの基礎と実務(九天出版)、透明会計と決算公告など多数

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