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②自社株の第三者移転は注意を

コラム・連載

■事業承継について

創業経営者は、事業を興し、事業を発展させた後、誰かに会社を委ねることになる。誰もが避けて通れない現実、それが事業承継である。事業承継は多くの経営者が体験することだが、簡単なことではない。これまでの私の経営指導で感じた事業承継の検討ポイントは次のとおりだ。

(1)経営権の承継経営者の承継とは、代表取締役の交代に他ならない。一般的に現経営者は、会長職や相談役に就いてサポート役を果たしながら、経営権を委譲していく。対象者は、さまざまで親族への承継や、親族以外の経営陣への承継、もしくは外部へ経営権を委譲(事業売却)することもある。どのケースでも、経営権を後継者へ引き渡すことになる。

(2)財産権の承継財産権の承継とは、現経営者の所有する「株式」の承継である。後継者が社長の座を承継しても、株式という議決権を保有しなければ経営の安定は図れないことから株式譲渡が必須条件となる。この株式譲渡において注すべき事項がある。
◆事業承継に伴う株式譲渡の注意事項
非上場会社の株式は、評価額が高額であっても換金するのが難しいため多額の相続税の納税のための資金確保に苦しむケースが多い。そのための対応策として予め次の点を把握し、検討しなくてはならない。

①現状のままで相続が発生した場合にいくらの相続税が発生するのか(所有している自社株式の評価額はいくらか?)を把握する。
②相続税の納税資金を確保する。相続が生じた場合の相続税額はいくらか、納税資金の工面はできているかを把握する。
③会社経営の阻害とならないような、株式の評価額の引き下げ方法にはどのような方法があるかを検討する。
④株式を「いつ」「誰に」「何株」「どのような方法で」移転するか、自社の状況にあったタイミング、手法(税制の特例)を検討する。

(3)事業承継のための自社株の承継計画
親族への事業承継を成功させる最大のポイントは経営者保有株(非上場株式)の譲渡対策である。自社株式(非上場株式)は、市場性がなく換金性に乏しい反面、相続時には評価額が比較的高額に算出されるため、結果として多額の相続税を負担しなければならないケースが多く、細心の注意を要する。また、経営支配の安定性確保の観点からは、保有株式を事業承継者に集中させる方が良い。資金繰りや税金対策の菅家から第三者に移転させる場合には、十分な注意を必要とする。

■後継者不在の場合の対応策
事業承継(経営権の承継)で、再確認しなければならないことがある。それは事業に将来性があることが大前提であり、そもそも承継させたい『事業』に将来性がなければ、無意味である。一方で、息子がいるにもかかわらず事業を継がせたくないというようなケースでは「いっそのこと廃業してしまえ!」と結論付けることがあるがこれも勿体無い話だ。身内に後継者がいなければ、次の手段は社内の幹部や従業員を後継者として育てるか、外部から雇い入れることである。それでも後継者が見つからない場合でも検討すべき事項がある。

① 会社をまるごと売却できるような状況ならばM&Aを行う
② 一部の事業を売却できるようならば会社分割や営業譲渡を選択する
③ 最後に残された手段は廃業である。

運よく後継候補者が見つかった場合でも課題は残る。むしろここからが事業承継の本題といっても良い。例えば、人的環境整備と本人の経営者としての実力に問題は無いのか。仮に本人の経営資質が条件をクリアしたとしても、株式譲受資金や税金、スタッフや取引先といった利害関係者の賛同や同意の問題が残る。中小企業の幹部社員や従業員が、会社を支配するための株式を取得するだけの資金を持ち合わせていることは考え難い。この資金手当てができないために、事業承継がうまくいかないことも多い。資金準備が問題で結果、所有と経営が分離してしまうこともある。事業承継は、プロのアドバイザーを交えたかなり前倒しの事前の準備と対応策が必要だ。


清水康市(しみずこういち)
株式会社 ビッグベン総合研究所代表取締役
NPO東海事業再生支援センター・理事長。JSK事業再生研究会・正会員。
著書「借金に負けるな!」、「実録!借金に負けるな!」読者からの相談も含め、事業再生指導に日夜奮闘している。

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